転生者はスライム研究に没頭して辺境伯家を廃嫡追放されそうです。
克全
第1話:転生前
俺はコインロッカーベイビーだった。
孤児院で育ったが、集団生活になじめず虐められていた。
どうしても孤児院を出て独りで暮らしたかったが、生活費がなかった。
高校も大学も行きたかったが、学費がなかった。
どうしても勉強したかったので、怖気る心を鞭打ってなりふり構わず相談した。
そんな時、ある人が裏技を教えてくれた。
ある宗教に所属する事で、生活保護と奨学金を受給できることになった。
その宗教組織は外郭団体に政党を持っていて、役所に出す書類の書き方を市会議員が懇切丁寧に教えてくれて、役所に提出する時も市会議員が見守ってくれた。
最低限の学力は必要だったし、布教活動もしなければいけなかったし、生活保護費から寄付もしなければいけなかったが、俺だけでは絶対に受理してもらえない申請がすんなりと通ったから、当然の代償だった。
生活保護と奨学金をもらいながら、高校大学大学院と進学した。
「特に優れた業績による返還免除制度」を利用するために必死で勉強した。
大学長から推薦が必要なので、苦手な人間付き合いも頑張った。
だがその頑張りが、心に負担をかけてしまったのだろう。
精神的に参ってしまって、引きこもりの状態になってしまった。
奨学金の返済は免除されたものの、それは学力が優秀だからではなく「精神若しくは身体の障害によって労働能力を喪失した場合」が適応されてだった。
いや、死を目前にして嘘偽りは止めよう。
俺は苦手な人間づきあいを頑張ったから精神を病んだのではない。
宗教組織と政治団体を利用して、正々堂々と頑張っている人を押しのけて、生活保護と奨学金を受給した事を苦にして心を病んだのだ。
平気で不正ができるような人間ならば全く痛痒を感じない事でも、中途半端な良心を持つ心の弱い人間は、良心の呵責に苦しみ病んでしまうのだ。
俺のような心の弱い人間は、絶対に悪事を働いてはいけないのだ。
一時的に得をして楽ができても、心を病んでしまって自滅するだけなのだ。
貧しく苦しい暮らしをしていても、正しく生きれば自滅だけは避けられる。
眠れば悪夢にうなされ、起きていれば幻覚に苦しむ、そんな自分で自分を責め苛む生活だけはしなくてすむ。
もしこの世に本当の神様がいるのなら、自分を神だと公言する恥知らずな人間ではない、真実の神様がいるのなら、俺にもう一度人生をやり直させて欲しい。
今度こそ悔いのない人生をおくりたのです。
誰かを騙して利益を得るような事は二度としません。
ただの人間を神だと言って信心させるような恥知らずな真似はしません。
ただひたすら人のためになる研究に邁進します。
だから、お願いです、もう一度人生をやり直させてください。
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