第8話:無残な者達
影龍の予想通り、騎士団は正面から戦わずに女子供を襲おうとした。
だが影龍達が護る女子供に近づく事もできなかった。
歩兵軍団を迂回して女子供の方に行こうとしたとたん、全員が一斉に力を失って落馬してしまった。
中には運悪く頸椎を損傷して死んでしまう者いたが、自業自得だった。
主を失った大型軍馬は、影達に誘導されて大行列に加わった。
移動しながら歩兵軍団は乗馬訓練をはじめた。
「聖女ルイーズ様、やはり女子供を襲おうとしました。
それを諫める者は誰一人いませんでした」
「そう、それでは仕方ありませんね、それ相応の罰は受けてもらいましょう。
念のために王都に取り残されている人がいないか調べてください」
聖女ルイーズは逃げ損ねた者がいないかとても心配だった。
自分のやった事が原因で、民が苦しむことが嫌だった。
エチェバル辺境伯と歩兵軍団が行列に加わった事で、影に隠れるのを止めた影龍達を十分に活用して、一人の犠牲者も出さない覚悟を固めていた。
影龍達が表に出る事で、本来は善良なエチェバル辺境伯や歩兵軍団の将兵が、聖女ルイーズに隙があると思って、出来心で悪事を働かないようにしていることを、聖女ルイーズは気がついていた。
「承りました、影の半数を王都に向かわせます」
「すごいですなぁあ、聖女ルイーズは竜すら従魔にしているのですな!」
影龍の存在を知ったエチェバル辺境伯は、影龍を恐れることなく、竜すら従魔にできる聖女ルイーズを手放しで褒め称えた。
ここでエチェバル辺境伯は大きな誤解をしていた。
エチェバル辺境伯の中で最強の存在は竜なのだが、それは無知な人間が龍の存在を知らないために起こった誤解だった。
そして影龍は竜ではなく龍なのだが、その程度の誤解に腹を立てる影龍ではないし、抑止力になれるのなら竜だと思われても気にしなかった。
★★★★★★
「また領主軍が接近しています、今まで通りでよろしいですか?」
聖女ルイーズの大行列を狙って、盗賊や領主軍が襲いかかっていた。
特に領主軍は、王家の命令もあって度々攻撃を仕掛けていた。
だが影達の護る大行列に近づく事もできないでいた。
襲撃の意思を持って近づいただけで、生命力を奪われて老人になっていた。
だが相手の兵士が強制徴兵された領民なので、貴族で編制された騎士団とは違う対応も取られていた。
「相手の心を読んで、過去に悪事を働いている者には、それ相応の罰を与えて構いませんが、無理矢理徴兵された善良な人間は、無傷で帰してあげなさい。
もし私達と一緒に逃げたいという兵士がいるのなら、エチェバル辺境伯に預けて一人前の兵士にしてください」
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