第5話:貧民流浪

 聖女ルイーズの誘いを受けて、多くの貧民が王都を出ていく決意をした。

 王都に残っても餓死する事が見えている貧民は直ぐに決意した。

 ギリギリ飢え死にしないですんでいる者の多くが、王都を出て行く決意をした。

 貧しいながらも飢えずにすんでいいる者達は、悩みに悩んだが、多くの人が王都から出ていく決意をした。

 貧民街で利権を持っている者達は、王都に残ることにした。


「なんだ、なんだ、なんだ、暴動ならゆる、グッフ!」


 王都の城門を護っていた兵士が、大量の貧民が城門に殺到するのを目撃し、暴動と勘違いして貧民達を攻撃しようとした。

 だがそのような事を許す聖女ルイーズではない。

 影龍の命じて門番兵を沈黙させた。

 勿論殺させたわけではなく、逃亡の邪魔ができないように気絶させた。


「影龍、生命力を奪ってはいけませんよ。

 彼らにも家族がいるのですから、気絶させるだけでにして、生命力は返してあげなさい、いいですね」


(聖女ルイーズのお言葉ですが、従う事はできません。

 彼らの記憶を探ったら、脅迫に暴行、特に婦女暴行を繰り返している。

 そんなモノを放置していたら、また襲われる女が出てくる。

 即死はさせないが、他人を傷つける事のないくらいには生命力を奪う)


 影龍の話を聞いた聖女ルイーズは、疑うことなく信用した。

 影龍の能力ならば、人間の過去の行状を調べる事など容易い。

 清廉潔白な聖女ルイーズに惹かれる影達は、同時に穢れたモノを忌み嫌う。

 普通なら殺してしまう所を、生命力を奪い老化させるだけならしかたがない。

 聖女ルイーズ自身が、穢れた人間が大嫌いだった。


「分かったわ、だけど死ぬ直前まで奪ってはいけませんよ。

 他人に改心する機会を与えるのもとても大切な事なのよ」


(分かった聖女ルイーズ、だがもう二度と女を襲えないくらいには奪う)


 もう聖女ルイーズは何も言わなかったから、それでいいという事だった。

 そんな事よりも、貧民達を無事に目的地まで連れて行く事の方が大切だった。

 餓死寸前の状態からは脱したとはいえ、長く歩ける状態ではない。

 聖女ルイーズが最後尾を歩いて脱落する者がいないようにして、先頭や要所要所には影達が憑依した足腰の弱った者を配して、魔獣や獣や人間の襲撃に備えた。


「さあ、休憩して軽食を食べましょう」


 聖女ルイーズは頻繁に休息を入れて、こまめに塩茹肉を貧民達に与えた。

 喰い力をつける事で体力を回復させる心算だった。

 影達が憑依しなくても自分で歩けるようにまで回復させたかった。

 老人や生命力がつきかけた者には、影龍が王侯貴族や悪人から奪った生命力が分け与えられた。

 王都から長い貧民の行列が生まれていた。

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