最終章・人生に刻まれし因業

2020年7月8日

俺と上原美月との因業に巻き込まれ、不運にも白血病の再発により、女子高生にもなれずに青春の途中で、上原セレナは享年十五歳で生涯を終えた。

翌日、セレナの葬式が開かれた。

本当は美月に葬式の費用が無く断念しようと思っていたが、あの大島が費用を全額出してくれた。

葬式はいちやなぎ中央斎場で行われ、参列者は俺・永久と桃枝・大島・町田・下田・百瀬・文殊と愛の家の子どもたち・桜道のこどもたちで、合計五十七人になった。

しかもそれに対して親族の参加者は美月だけ。

上原慎吾は刑務所でお勤め中、美月の両親も同じくお勤め中、真吾の両親には葬式の案内状が届いたが、結局黙殺したようだ。

「こんなにセレナを愛していた人がいたなんて・・・、本当にありがとうございます。」

美月は参列者全員に頭を下げた。

「みんなセレナが好きなんです。それに引き換え、どうして真吾といい双方の両親といい、セレナをぞんざいにした理由が理解できません。」

大島が憤然とした顔で言うと、永久と百瀬が頷いて同調した。

ご焼香の時間になった時、俺は長めに焼香を額につけた。

その間、セレナとの思い出を記憶の中に焼きつけていた。

出棺の時、俺と美月と子どもたちでセレナの棺に花を入れた。

その時、すすり泣きながら花を入れる撫子を見た。

同じ境遇の身として、撫子とセレナは打ち解けていたところがあった。

だからもしもセレナの白血病が治っていたら、撫子はセレナと友達になるつもりだったのだろう。

霊柩車には俺と美月が乗り込み、セレナの棺を乗せた火葬場へと向かった。

火葬場に着くとそこで納めの式を行い、セレナの棺は焼却炉の中へと入っていった。

火葬が終わるのは一時間三十分後、俺はその間待合室でお弁当を食べていた。

「竜也。これは私の疑問だが、なぜ最後までセレナを見届ける気になったんだ?」

大島が俺に質問した。

「・・・俺は罪滅ぼしとかそういう気はしなかった、ただ内容は違えど運命を背負わされたセレナを見ていると、なんか心がそっちに向いてしまうように感じたんだ。」

「そうか・・・、もしもセレナの白血病が再発しなかったら、君はこれからもセレナのそばにいようと思った?」

「それは無いだろう、いつか一人で生きていかなくてはならない時が来るから。」

「でも今回、因業に触れて君は人情について一つ学べたんじゃないかな?」

大島の言葉に俺は納得した。

対立しいがみ合い戦うことだけが人情ではない事を学んだ。

『竜也、お前少し優しくなったな。』

ドラゴンに言われて、俺は少し笑った。



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ドラゴンとセレナ 読天文之 @AMAGATA

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