「調整、あるいは規制」
……………‼
———結論から言うと、結局俺はおまわりさんの熱意に負け、『不可思議事象』のことを打ち明けてしまった。・・・だが、聞かれた事そのままを話すだけ話してほったらかしにするほど、無責任な俺ではない。
「…これは?」
「不可思議を消滅させる特殊な金属で出来た札です。もしも奴らに出くわしてしまった場合、すぐさまにこれを投げるなり叩きつけるなりして触れさせてください。そうすれば、ひとまず助かることが出来る」
「……はあ——。…なぜ君は、こんな危険な事をしているんだい? たしかに、この街の人々を化け物から守っているんだね。それは褒められるべき事だ。だけど、なぜ高校生の君がこんなことをしなくてはいけないんだ…? 脇坂警視は何を…?」
「……」
「そうせざるを得なかったんです。あなたのように自分の意志でやりたくなってしまう事も俺には有り得ましたけど、俺の場合、俺にしか出来ないことがある。だから、俺はこんなことをしている。…ということです」
「…納得して頂けたかな。巡査」
俺は席を立った。痺れた脚に感覚が戻っていくのを悦ばしく感じる。
***
「うあー、久しぶりのシャバの空気は美味いぜ」
これは言いたかっただけだ。
何はともあれ、もう日が昇っている。学校に行く準備をしなければいけない。
「すまなかったね、もう少し早く出してやることも出来たかもしれないんだが、用事が立て込んでてね。君が捕まっていることに気付かなかった」
「え、いえいえ! 元々俺が馬鹿な動きしたせいでこんなことになったんですから! 脇坂さんが誤る事じゃないです。むしろ、助けて頂いてありがとうございました」
「そう言ってもらえると助かるよ。…斥納君にも、よろしく伝えといてくれ」
「わかりました」
「それじゃ」
「あ、はい。お疲れ様です」
脇坂さんは右手を挙げると、警察署へ戻っていった。
相変わらず格好良い。俺もあんな風に生きられたらいいのだが。
「さて……いちおう、師匠の所にも寄っていくか。…腰痛ってぇ・・・」
おまわりさんも同じ事だろうが、徹夜で取り調べを受けていたので疲れがひどい。正直学校にも行かずにぐっすり休みたいところだが、心配こそされてはいないだろうが、昨晩の出来事を報告しなければまた叱られかねない。
«オイ»
「……なんだ?」
頭の中で声がする。
«あいつ…レギュレーターを持っているぞ»
「ああ。そりゃあ、おまわりさんには、渡さなきゃあ死んじまいかねないだろ」
«そっちじゃねえ。あの三つ編み男のほうだ。新しいぞ»
「…えっ!?」
…レギュレーター。言葉の意味をそのまま取ると、調整するもの。同じ名前の、宇宙飛行士の装備やエアコンについている機械とは、調整するものが違う。
何を調整するのかといったら、それは人間の、つまり俺達の感情だ。
«かなり…力が強いようだったぞ。驚くと思ったからその時には言わなかったが»
「そりゃあどうも…」
この「声」は、同じ。『レギュレーター』のものだ。
いつからだろうか。…俺の頭の中に住み着いた、「空間把握」のための、お荷物。
«よかったな。オマエが憧れているあの男が、戦力として戦ってくれるかもしれないぜ・・・と言いたいところだが、そうは問屋が卸さない。「どこで手に入れたのか」っつー疑問はよォ、もって悪かねぇモンだよなァ??»
「ああ…そうだな。ちなみに、どういうやつなんだ? その、リなんちゃらーとか」
«『リシーダー』。…オマエに教えてやれることは少ないが、かなり力は強いぞ»
素直に知らないって言えば良いのに。
「何はともあれ、承知したぜ。それも師匠に伝えておくか…ありがとう。キャンノ」
«エヌ・ピーだぜ»
うむ。・・・
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