「最初の話」
……………@
わたしが華眉ちゃんとの別れを見るか、再会を決行するか。その覚悟を決めるには、今を見つめ、過去を見つめ、そして未来のことを考える必要がある。
わたしの今は何か? なんのために未来へ進むのか?
わたしの過去は何か? なにがために今があるのか?
わたしの未来は何か? 最後に辿り着くのは何色か。
わたしは寄垣琴梨。父の名前は寄垣
…どうも、自分の「強さ」を過大評価していたと思う。
父が居なくても、母が居なくても、周りに頼れる大人がいなくとも、
自分は生きていけるのだと。自分の意志をつき通せるのだと。
わたしの過剰だった自信を指摘し、しかも必要な存在の代わりとなってくれたのは、華眉ちゃんだった。こういった関係に至るまでに何度か、彼女の気難しい性格とぶつかることもあった。
わたしは彼女を惜し気もなく信用している。これは根拠がどうといった事では無く、一年という時間が積み上げた容易には崩れがたい信頼で、あのような噂ひとつで変わるにはあまりにも大きすぎる。
…ただ、今となっては違う。彼女から別れを告げられた時、わたしは既にわかっていた。ただ受け入れるのに時間がかかっただけだ。きっとそうなのだ。
彼女が何者なのか。
彼女にとってわたしは何なのか。
そしてわたしは、彼女のために、何が出来るのか。
彼女がわたしに望むことは何か。
…これは。ここまでは、「最初の話」だ。
随分長ったらしかったと思う。わたしがここまで辿り着くまでに、かなりの時間がかかってしまったことを、わたしは自覚している。
やっと、寄垣琴梨は自分の物語を始めることが出来る。
「もしもし、お父さん」
わたしは携帯電話に向かって話しかける。
『ああ、もしもし。…なんだい、琴梨』
「…わたしはどうすればいいかな? どんな風に生きていけばいいかな?
どんな自分を演じるべきかな? お父さんはわたしにどうなってほしい?』
『……。』
答えは帰らない。
「わたしは…何を思って生きていけばいいの?」
…それは、
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