最終話「コンフィクト・アゲインスト・ミー」

「最後の言葉」

……………@


 陸酉華眉りくとりはなみちゃんとの出会いは、本当は険悪なものだった。


だって当然でしょ? 

あんな性格なんだから、最初から心を開いてくれるわけがない。

わたしだってこんなほわわんとした性格だ。気を抜けば口呼吸でぽっかり空けているような人間だ。他の人達と同じように扱われることが不自然なわけがなかった。


そんなナミちゃんを、わたしは普通に怖がったり、陰口を言ったりもしていた。


 …しかし、やはりわたしが心を開くことが肝心だった。「気が付けばそこにいる関係性」とはよく言ったものだろうか、…そんな暇があればどこかの男の子に気が付くたびに現れていればまた違ったのかもしれないが、わたしは華眉ちゃんと仲良くなれたことが、こうなった今でも全く後悔しないほどには喜ばしかった。

あの子からすれば、わたしは敵。それならあの子はわたしの敵。

 そういえば、秋姫あきひめちゃんとあんな約束をした次の日に学校を休んでしまって、きっと心配してるだろうなあ。…でも、約束は守ろう。これから守ろう。生きて帰ろう。


…わたしが。


「いちいち一人で考えすぎないで、もっと外の世界と関わりを持ちなさい」


そう言うと、教室の奥へ消えていく。

窓には大きな夕日が沈む。

わたしの世界が暗んでゆく。

日差しが終わる前に、彼女はきっと微笑んでいたように思う。


言葉の終わり方、その時からわたしは気付いていた。

悟っていたと言ったほうが正しいかもしれない。


ノティスではなく、リアライズ。


 それこそ直感で、その時から彼女の意図が伝わるようだった。


『存在の違いから、わたしへの嘘偽りの無い敵意。

ただ、それは変化だった。…虚無から激情への。

生きる意味の無かった華眉ちゃんに、火が付いたかのように変わる。

緋色スカーレットの炎。生命エモーションの炎。』


 わたしはそれに、置いて行かれた。

その喪失感を抱えたまま元の生活に戻ることが耐えられなかった。

まるで、群れからはぐれた小鳥のように。

秋姫ちゃんや、他の話してくれる友達はいるというのに、

彼女を失うとぽっかりと胸に穴が開いたように、欠けてしまう。

しかし、

一匹になった小鳥は、どうなるか。————


———次の群れを探すのだ。

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