「デスサイドロジカル」
……………‼
「…何やってんだお前ええぇっ!!!」
「……。」
『きょう午後、G県H市神岡町にて、中学校の屋上で女子生徒とみられる少女の遺体が発見されました。遺体の腹部には刃渡り50センチ以上の刃物で刺されたような傷があり、発見当初から既に死亡が確認されていました。要因は他殺とみられ、生徒間のいじめか、暴力団の抗争に巻き込まれた可能性を留意して警察が………』
そんな報道が頭の中で流れていた。
目の前には、真っ赤な血液の水溜まりと、その中央に倒れる女子中学生。
いや、…いやいや。まさか。そんなはずがない。ちょっとまて。
…待ってくれ。たのむから!!!!!
「は、鋏先輩! あんまり大声を上げると人が来ちゃいますよ‼」
「あ…すまない…。」
なんでそんな冷静なんだ琴梨ちゃんは。
「でも…齋兜!お前なにやってだよ、マジで‼
未成年だからといってやって良いことと悪い事があるだろ!?」
かく言う俺も未成年だが。
良くて少年院行き、それでも一生ついて回るレッテルがだな…
まてよ、俺も共犯者ってことになるのか!?
「やって良いことだろう、こいつは人間じゃないんだぞ」
「いや、人間だろ!死神っていうのもちょっと年ごろ故のこじらせってやつで…、
ただ運悪くレギュレーターに出会っちまっただけの…!」
いたいけな中学生っ…!
「んなわけないだろ、怒りますよ…。」
「「えっ!?」」
おもむろに下方から聞こえてくるのは、さっきまでギャーギャーと文句を言っていた声。
「随分落ち着きが無い方なんですねえ、鋏先輩とやら」
心底ダルそうに、むくりと立ち上がる死神中学生。
さっきまでのハイテンションはなんだったのか。
穴が開いてしまった衣服から覗くずぶりと空いたはずの傷穴は、完全に塞がっており、ただ白い肌がちらりと見えるだけだった。
「私は死神ですよ。死を司る者は死にません」
「っ繋ちゃん…!」
自分の隣人が人間でないことが目に見えて実感できたのか、
琴梨ちゃんはそう声を上げた。
「にしても、
「…悪かったよ。ああいうのが俺の刀の戦い方だし、二人で協力して戦うのに慣れてねぇんだ、どっちも」
まあ卑怯だったというのは認める。
「じゃあ、イカサマみたいなもんだったしな…やっぱり協力は…」
「あなた随分私の協力を諦めたがりますけど、ほんとに協力して欲しいとおもってます?」
…言われてみればそうだが、そりゃあもちろん。
「…まあ、いいんですけど。拳で語り合うって言いますしね。拳じゃなかったですが、一度刃を交えれば、その人の性格は分かるもんですよ、あなたの小癪な性格とか」
「勝ちにこだわるヤツだと言ってくれ…」
悪かったって。
…今思えば、最初のああいった態度や呼び出し方というのは初対面が故の照れ隠しというやつで、こうして一度戦って、お互いに打ち解け合いたかっただけなのかもしれない。…見てくれだけじゃない、結構可愛い所もあるじゃないか。
…といっても戦いに対する根性が狂ってることには違いないが。
グッドゲームとは言えないが、熱い戦いではあった。
俺は親指を立てる。
「…それじゃあ、陸酉華眉の件について、協力するんだろうな」
と問う齋兜。
「ええ、いいでしょう。彼女の鎮静化は私達死神の仕事でもあります」
「…どういう意味だ?」
メリットが無いんじゃなかったのかよ…ということはまあ置いておいて。
単純に陸酉が不可思議を増やして被害者を増やしていること以外に、死神なんてのが動く理由があるのか?
「いえいえ、それに至るまでの過程が問題なんですよ。デスバランスの崩壊。…彼女は市民の本来の寿命に反した延命を行っています」
聞き馴れない言葉があっても、なるほど、意味は分かる。
全くもって不可解だったこの一件について、大きく進んだような気がした。
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