「死神との対話」
……………‼
生徒でもないのに中学校舎の屋上に忍び込む寸法として、まず校舎の内部に入ってはいけないという意識は前提としてある。これは当然である。人目に付かずに侵入するのは常に人に溢れるこの建物では不可能だ。しかし、不可能な侵入方法を除いたところで考えられるのは、
「窓のない外壁を昇る」
「外壁に取り付けられている誰も使わない謎の階段を使う」
「誰もいない部屋の窓のへりからよじ登る」
といったもの。うーむ、現実的ではないな。
そう、現実的ではない。…ただし、普通なら。
ただし…、俺達には、『レギュレーター』がある。
「
こういった時、まさに
「思ったより疲れたな…」
「複数人でやろうとするのが間違ってる気がします…」
「……。」
「…こういうの一回やってみたかった」
色々文句はあるようだが無事踏破に成功!
怪和崎鋏とその仲間たち、参上だぜ。
おそらく初めて屋上へと登って見れば、さて、お目当ての『死神』はそこにいた。
「……んん? 随分大部隊ですねえ」
…なるほど死神とはいったものの、容姿はただの華奢な少女。
真面目そうに制服に袖を通した、たかが中学生。
「寄垣さんと、せいぜい付き添いは一人だと思っていましたが」
「いや、心配するな、戦うつもりは無い。俺達は話を聞きたいだけだ。…死神さん」
「……。」
重要なのは、対話。
幸い齋兜は黙って見てくれている。
「陸酉華眉について…」
『 伏 せ ろ 』
「
「っ!?」
話を始めようとするや否や、…今、何と言った? 『恒河沙刀』だって?
…とにかく、俺達の視界は黒で埋め尽くされる。
殺気に気付いたキャンノに教えられなければ…どうなっていただろう。
「どうもあなた達に協力するメリットを感じないんですよね…
せっかくだから、力で示してくださいよ。協力に値するか」
「は、ずいぶん自信過剰なガキだな…。こっちは二人だぞ、相手に出来るのか」
「今のうちに刀んなっとくわね」
おいおいこいつら血気盛んすぎないか…
「待て、待て!戦うつもりはないって言ってるだろ!? わかった、そこまで言うなら他を当たるから、俺達は…」
「『他』があるのか? こいつは一度剣を交えれば協力すると言っている。そこまでして戦わないつもりか」
「ああそうだ、相手を考えろ! 不可思議じゃないんだぞ!?」
「……はあ、仲間内で揉めてんじゃないですよ…、その気がないならもう一発くれてやってもいいんですよ? お熱いのを」
ああ、クソ! どうしてこうなるんだ…‼
「……ああもう、わかったよ‼
そう来られちゃあ仕方がないなあ…‼ 行くぞ齋兜!」
「俺に命令するな」
「群遊肆刀!」
「…塩焦万刀」
母校の屋上によじ登ることになったと思ったら、まさかこんなことになるとはな…
…よし、出来るだけ、大きな音は立てないようにしよう。
「んふふー…満足させて下さいね」
二対一であるにも関わらず、死神はそう言って不敵に笑ってみせた。
…あくまでも、年頃の女子中学生のように。
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