「ランチ・ブレイク・ラン」

……………‼


「重要なのは、対話だ」


「対話…」


 陸酉華眉の目的とは。…俺達がこの夏、ずっと探り続けていた事柄。


この一件について、新メンバー、寄垣琴梨ちゃんの助力によって今にも決着が付きそうなこの一時。師匠により、俺一人に対するお話があった。


「らしくないって、おっさんも思うよ。本当はこんなことは言いたくないぜ。

だが、鋏にだけは伝えておこうと思う」


「……。」


「対立する相手は、見誤るな。我々が相手にするのは不可思議事象だ」


「…そりゃまあ、そうでしょう」


なんだか拍子抜けしてしまう。


「おまえは我々の主戦力だ。おまえが対立する相手はすなわち我々が対立する相手だ…多少なり責任があることを、忘れないでくれたまえ」


「…当たり前です。任せてください。必ず俺が陸酉華眉を落ち着かせます」


和解だって出来るはずだ。琴梨ちゃんがそれを望んでいるように。


「それでいい」


―――――――――――――――――――――――――――—


 買い出しを終えた俺達は、道場へ帰った。


「「ただいまー」」


「おかえりなさーい…」


「……。」


「……。」


買い出しに行っている間の道場内の様子は、上の反応が物語っているようだった。


「なんか、ごめんな、琴梨ちゃん…。」


随分と謎な時間を過ごしてしまっただろうに。


「いや、そんなことな…」


「おい、続きを聞かせろ。殺人鬼は今どこにいる」


…どうやらそんなこともないのかな?


「お、…その話、おっさんも聞きたいなぁ」


 ようするに、暇を持て余した二人は意外にも、今日どういった動向をしていたのか、ぎこちないながらも話していたようだった。


 草薙高校で俺と別れた後のことから、その後齋兜が合流してきたこと。そして、殺人鬼『佳狛木かこまぎ』に攫われ、仮死状態に至るまでの事。


「…えっと、殺人鬼であり、死神でもある彼女は、確かにわたしの知り合いです。

…と言っても、お隣さん付き合いがほとんどで、日常的に話すことはほとんど無かったんですけど、———」


それから琴梨ちゃんは、お昼ご飯でも食べながら、語るべきことを語った。


―――――――――――――――――――――――――――—




「…しっかし、本当にここにいるんだろうな? 琴梨ちゃん」


「はい…本人が言っていたので、そのはずですけど…。」


「ちょっと間違いだった時のリスクが大きすぎないか? …あと、たった今行かなきゃいけない理由も…ってオイオイオイオイ!ちょっと待て齋兜!」


「今でなければ、それ以降奴の行方はわからなくなる。…それに、怪和崎も通っていたことがあるだろう。ためらうことがあるのか?」


「まあ、無いけどさぁ…」


正直なくなくなくないが。


 琴梨ちゃんのお隣さんである『佳狛木』さんの家庭には、現在中学二年生の一人娘がいる。それが死神、佳狛木つなぐだという。…まさか、世帯暮らしだったとは。殺人鬼が中学生だとは、師匠以外にだれが想像しうるだろうか。ともなれば、死神の親御さんには壊滅状態となった玄関口について後ほどお詫びをしなきゃいけないじゃないか。


 そして現在時刻は13時06分。中学校では、丁度給食の時間が終わり、お昼休みの時間。死神は琴梨ちゃんの意識を奪う際、こう言い残したそうだ。


「迅速に終わらせましょう。私は早く学校に戻って、義務教育を全うしなければいけません。お昼休みに屋上でゆるりと過ごすの、好きなんですよねー」


そんなことを言うには不自然な流れだ。つまり、明らかに俺達への挑発である。

しかし…中学校の屋上に忍び込もうとする高校生三人組と、人外一名。


……齋兜はどうも乗り気なようだが、どうしたものだろうか……。

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