「唸る」
……………。
ひとまずの目的地は、草薙高校だった。依然変わりなく後を付けてくる御咲と供に、柵を越えて踏み入ると、早足で校舎周りを確認して回った。その中、やっと耳に入るほどの声量の、中年男性かと思われる叫び声が聞こえた。…寄垣ではない。しかし、おそらく何事か起こっているのであろうということはおおよそ察しがつくようだった。さらに脚を早くする。
「遅かったか」
「…藤岡くん⁉ なんでここに…」
校舎裏の倉庫かと思われる小さな建物の入り口で、寄垣琴梨が立ち尽くしていた。
「質疑応答は後だ。今のはなんの悲鳴だ?」
「それが…そこに……」
単純な話である。悲鳴の主の男が胴体を強く打って倒れていた、という。…しかし、それだけではなかった。黒を基調としたファッション。ワイシャツに黒のボレロ、そしてやはり黒を基調とした格子模様のスカートに、夏だというのに厚手のタイツ。おそらく寄垣は考えも無しにすぐさま扉を開けたのだろう、すぐさま犯行現場に駆けつければ、犯人が逃走する暇もない。早くも連続殺人事件の首謀者を見つけてしまったらしい。
「つ…」
……ウウウゥン‼
さて暴力に訴えるべきかと御咲を呼ぼうとするや否や、唸る様な音を立て、殺人鬼はグロテスクに染まった大きな武器を振り向けてきた。先手を取られたことに後悔しつつも咄嗟に
「!……。」
衝動的に振り向けば、そこには徒花御咲しか残されていなかった。
「……連れていかれてしまったようね」
目的を果たしそこなった。…さて、これからどうしたものだろうか。
本作品にはモデルとなった実際の人物や地名が存在しますが、
この作品はフィクションであり、実際の人物、団体、事件等には一切の関係もございません。
【第六話 おわり 第八話へつづく】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます