「顔馴染みの来訪者」

……………σ(^_^)


ピンポーン……


 と。…それは、私が下校し終えてすぐの事だった。私は部活に所属していないが、生徒会に入っており、少々の勤めを済ませてから校舎を出たのだが、まだ通学鞄を置いた直後、制服も着替えていないような時に、突然インターホンが鳴る。誰かと思えば、同じ高校、後輩の女の子だった。


 …寄垣よりがき琴梨ことりちゃん。親しくなるきっかけは、去年の体育祭だった。私達は同じチームで、わずかな接点から互いの名前を覚え、機会がある度によく話していたので、自然と数少ない後輩のお友達となっている。なんでも、高校に入る時にこの街に引っ越してきたらしく、私でも顔を見知っていなかったのだ。自然と興味を惹かれた。そのうちに、親しい仲になっていた。


「…琴梨ちゃん。どうしたの?」


「先輩…あの、相談、乗ってくれるって、言ってくれましたよね」


「うん、確かに言ったね。……何か話したい事があるのね?」


「……。」


わずかの間黙り込み、


「…はい」


琴梨ちゃんは決意するように頭を縦に振った。…それでおおかた把握出来た。


「理解したわ。長い話になりそうだから、上がっていってもいいよ」


「…ありがとうございます!」


 ひとまず笑顔確認。なんであれ、後輩の元気がないとそれだけで先輩も気が気でない。私がもてなして差し上げようか。

しかし、客間に通すには親しすぎる相手だ。リビングへ連れっていってお茶の一杯でもだしてあげよう。たしか、わりと有名な茶葉があったはずだ。喜んでくれるといいな。


―――――――――――――――――――――――――――—



「——…………陸酉さんの噂が、本当かもしれない?」


「まだ、信じたくはないけど…そうわたしでも思うくらいのことが、あったんです」


 捜しつづけた結果、ただならぬ気配を放つ陸酉さんに行きあったこと。腰を落ち着けたところで、彼女は打ち明けた。……貴女の親しかった人間を挑発するということは、陸酉さん…。もう、元の生活に戻るつもりはないのね。そのお気合いはうかがえる。ただ、迷惑なことをしてくれたわね。


 どこの誰が広めたのかは知らないが、現状の進行、不可思議事象の事柄が、無縁の人間に知られてしまうのは何があっても避けなければならない事柄だ。それだけでも、あれらに遭遇する確率は跳ね上がる。不特定多数の人間に仕組みや形やルールが知られ、興味でも持たれ、対処法を知らない人間が怨点を向けられれば命はない。もちろん、この子、寄垣琴梨ちゃんであっても例外ではない。

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