「その子が、不可思議事象だからさ」

……………@


 まるでその時だけ、人形にでもなったかのように無表情で、斥納さんはわたしに言い聞かせた。わたしの親友が人間ではない、と。

つまり、わたしの杞憂は見事に的中してしまったのだった。


「不可思議…?」


「然り。彼女は人間ではないんだ。……つまりさ、おっさん達の目的はボランティアの偽善活動じゃなけりゃあましてや人に依頼されてやる相談屋でもないんだよ。

…たしか、最初の質問は、おっさん達が、どうして陸酉さんを捜しているのか、だったねえ。答えるよ。それは、バケモンになっちまった女子高生を見つけ出して退治し、街に一端の平穏をもたらすためだ」


「……。」


鋏先輩が気にかけていた事、気にかけて語らなかった意味がわかった。

…だというのに、あまりにも、あっさりと、斥納罹刻さんは真相を言ったのだった。

 それだけれど、自分で説明がついてしまってはいるものの、率直に言って、この真相はとても受け入れられなかった。


「どうして」


どうしても、受け入れられなくて。考えてもいなかったような質問が口を出る。


「どうして、そんなことを言えるんです?」


「うん?」


「どうしてナミちゃんが不可思議だと…言えるんですか?根拠は何ですか?」


 ナミちゃんのため。と。ナミちゃんに対する彼らの思い込みをなんとか撤回しようと。

 自分でも訳の分からない質問をしていた。それで、その一言で納得してしまっても構わないくらいには、彼女の超常的な姿を目撃してしまった直後だというのに。はなはだ可笑しい話だ。わたしはどうしても、事実を受け入れることができないらしい。我儘にも程があるが、親友を失ったのだ、現実から目をそむけたくもなる気持ちにもなる。もはや皆無と言ってもいい、僅かな理想に縋り付いてしまいたくなるくらいには、ショッキングな出来事だった。…ようだ。


「…うん、証拠、ね」


 案の定、しばらく『え、コイツなに言ってんの…?』みたいな間が流れると、ふと斥納さんが口を開いた。


「ないよ、証拠なんて。寄垣さんの仰る通り。あったら退治も数倍楽になるんだけどさ」


でも残念ながら、そんなもの無いのさ、と潔く言い切った。


「じゃ、じゃあ何でそんな確証の無いことを言っているんですか…。名誉棄損ですよっ」


茶番は続く。


「そんなもん、勘だよ、勘。こうならば誰々どいつがやっているのだろうなと、妥当な所を当たっているだけさね」


「えぇ…」


困惑を隠しきれない…。


「意外かもしれないが…結構ポピュラーな戦法なんだぜ?こ れが。言い替えれば、手掛かりから犯人を推測して、その場所を突き止め、その可能性を潰していくんだ。そんでもって、いちばん疑わしいのが君の友達だった。もっとも、それは大正解だったようだがね」


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