「ハウイズイット」

……………@


「ちょっとまって下さい。どうしてそんなに、…その、そのこと、不可思議事象について知ってるんですか? いくら陰陽師で、怪奇現象の専門家だからって、そんな、不可思議自身しか知らなそうなことを…知っているんですか?」


おかしい…よね? また、話が逸れるような気がするが、どうしても気になってしまった。


「…うーん。多くの場合奴らの頭はほとんど空っぽなんだから、知っている事なんて何ひとつとしてないんだぜ、…と、つっこみたい所ではあるが、…しかし、その質問には真面目に答えないと、いよいよおっさんの信用が損なわれてしまいそうだ。鋭いね。いいよ、わかった、答えよう」


「んん?多分それ、俺も聞いたことねー話だわ」


横から鋏先輩が言った。…たとえ説明してもらえるとしても、これは信頼度激下がりかもしれない。


「………オーケー。わかった、教えてしんぜよう。

 うん。端的に言ってね、我々が不可思議事象と呼ぶ正体不明の生き物の発生する原因は、おれの師匠の、その始祖にあたる人物が、ある一本の刀を作った事にあるんだよ。だからおっさんは、不可思議事象を生み出してしまった人物に事象について既に告げられているから、不可思議について詳細まで知っているのさ」


「…端的すぎていまいち意味が分からないんですが」


一本の刀…?不可思議事象を作った人物?まったく話が入ってこない…。


「つまり…師匠の師匠の家の人間が作った刀によって故意に不可思議事象は生み出されており、だから生み出されたそれについては師匠自身も熟知していると…。そういうことですか」


「うーーん…。いや、結構違うところもあるが、まあ指摘するほどじゃないな。いいや。わざわざ補足するのも面倒くさいし。それでいいよ。あってるよ。ま、かようにこうして、不可思議事象についてでも、おっさんは熟知しているのさ。わかったかな?」


子供だから、わかりませーん…。

 いや、なんというか、刀がどうこうのあたりから、一気に理解力が出掛けてしまった。刀が不可思議を作ったのか、斥納さんのお師匠さんが不可思議を作ったのか……?そもそも、どうして「刀が不可思議を作る」のか分からない。


 要するに、斥納さんは斥納さんのお師匠さんの、尻ぬぐいをさせられているということなのだろうか。……しかし、ここまでまくしたてられて説明されてしまっては、先程のようにあいわかったとこちらから納得するしかないらしい。情けないというか、仕方ないというか…。とにかく、師匠は師匠なりに正直に説明したようなので、わたしの疑い自体は晴らしてもいいはずだ。


「そりゃあよかった、不可思議事象についてある程度理解して頂いたということで、おっさんがそれを退治しようとしているのもなんとなくわかっただろう?そういうことさ、だから、捜してる」


 『捜してる』、と。そのワードで、わたしは当初の質問を思い出す。しかし、それでは文脈で成り立たないような気がする。違和感を感じる。


 どうしてナミちゃんを捜している理由を聞いたのに、帰ってくるのは不可思議事象を斃す理由なんだろうか? 



……そういう、皮肉を言われているような気がしてきた。それこそ…やっと、嫌な予感がしてきたように。


「そう、やっぱり勘がいいねぇ、君は。こっちでやっていけるセンスがあるよ。教え甲斐があるってもんだぁね」


「……。」


 さっきから。勘付いてしまってから、全ての言葉に悪意がこもってるような気がしてならない。嫌な予感、というか、この人が何を言いたいのか、というか。それが杞憂なのかなんなのか分かりかねるが、……分かってしまうようで。


 ただわたしには、納得よりも怒りがあった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る