「何度目か」
……………@
実際、そんなはずがあるものかとも思ったが、しかし父の指示で失敗したことはなかった。危険だけれど、一切の根拠も無く信用出来てしまっていたのだ。
だから、…従った。
わたしは言われた通り、振り返り、今まで歩いてきた道を戻って、自家焙煎がナントカという喫茶店を通り過ぎ、そのまま鋏先輩に案内されるがままに通ってきた道も逆走を続け、ひとつの大きな坂に差し掛かった。
「ええ。もしもし、ちょっといいですか、そこの先輩ー。ひょっとして、陸酉華眉と仲が良くなかったですかね?」
「ちゃ、茶髪!?」
「……。」
茶髪の男の子。制服のボタンの学年色は黄色、一年生。つまりわたしの後輩にあたるのだろう、女の子のように綺麗な顔で手足は細長く、そして朗らかな表情をした、男の子。
こはいかに。
なにゆえ名前も知らない後輩に声をかけられねばならないのだろう。
お父さんが言っていた事とは噛み合わない上、先ほどの鋏先輩とデジャヴュと言って差し支えないほど似通った事を聞いてくるようだ。
「…きみ、随分オシャレなんだね」
「おや、それは誉めてもらえてるんでしょうか? いえね、この髪色は地毛でして、なんら取り繕うようなことはしていませんよ。不良じゃないですよ? 僕は全くもって善良な模範生ですからね」
ちょちょいと前髪を引っ張りながら既に真偽が分からないようなことを言う。
「それで、陸酉華眉と仲のいい、寄垣琴梨先輩ですよね?」
「うん、まあ、…そうだけど」
「よかったあ。ひょっとすると間違ってなったんですね。もしそうなら、少しお話を伺いたいのですが、いいですか」
「…うん、いいけど…」
先ほどと全く同じような展開が繰り広げられるのだろうかと内心うんざりしていると、
「ヤッタァ。ありがとうございます。前もって言っておきますけど、」
「…あれ!?」
「おや、どうかしましたか? …ふふ」
誤解を恐れないように表現するなら、…鼻に付くというか…、へにゃへにゃした、嘘でもついていそうな話し方をする後輩くんの、その後ろ。
茶髪くんが笑顔を作っている後ろ、つまりわたしの前方、坂の上。すぐにわたしは気が付いた。道路の端、こちらを見つめる女の子が一人いたことを。
よく見てみれば、彼女こそが、わたしが捜していたたった一人のクラスメート、
名誉風紀委員こと、陸酉華眉、略してナミちゃん。
お父さんの予想は、見事に的中したらしかった。
※本作品にはモデルとなった実際の人物や地名が存在しますが、
この作品はフィクションであり、実際の人物、団体、事件等には一切の関係もございません。
【第二話 おわり 第四話へつづく】
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