「気付き、一転」
……………@
先輩の質問を聞いた時。突然だった。
わたしの意識は先輩を外れ、ここあたり全体に広げられる。…他の人もいるカフェだ。先輩のもの以外の声ぐらいいくらでも聞こえてくるだろう。しかしなんとなく、声が、特別わたしに向けられた、厳しい声が、聞こえた気がした。
『あんたが探す意味あんのかしら』
聞き間違うはずもない、陸酉華眉ちゃんの声が、聞こえた気がしたのだった。
しかし、振り返ったところで、そこには誰もいない。
「…どうか、したか?」
「ナミちゃんが…。」
「…ナミちゃんってつまり、陸酉華眉のことだよな? …それが今、どうした?」
「あ、いや、ナミちゃんの声が聞こえた気がして…。すいません、気のせいでした」
「気がした…か、そうか、わかった、気にしなくていい。質問の続きに答えてくれ」
「はい…」
さっきの様な流れで行くと、『気のせいだった』で済ませてしまうと軽快にツッコまれてしまうかと思ったが…、しかしそれよりも、どういう事なのだろうか…?
聞き間違いや、そもそもわたしに向けて言われていないかもしれない事を考慮したとしても、どうも成り立たない。偶然? 空耳? わからない。どうしてナミちゃんの声が聞こえたんだろうか…。
「…なんか目泳いでるけど、何かあったか?」
「あ、いえ、気にしないでください」
「………? そうか」
「はい、なんでもないです、すいません。…なんでしたっけ?」
「ああ、陸酉さんをどう思ってるのか…っていう質問だったんだが」
「あ、そうでした。陸酉さん。えーーっと…」
『どう思ってるのか』って、突然聞かれてもいまいち何て答えたらいいのか分かんないんだよね。この場合良いも悪いもないんだろうけど、どうって聞かれると、わたしが思っている答えを正しくひり出すのにちょっとばかし時間がかかる…。
「優等生なクラスメイトで、名誉風紀委員の図書委員、冷たいように見えて実は優しい子、…ですかね?」
「なるほど」
いったんうなずく先輩。しかし質問が続く。
「そんな陸酉さんを、君はどう思ってる?どんな風に感じてる?彼女が居なくなってしまって、君はどんなふうに考えているんだ?」
なるほど、そういうことですか。どうやら質問の本意に気付けていなかったらしい。
「…そりゃあ、…居心地が悪いですよ、ナミちゃんが居ないと。一年間皆勤賞だったのに、いきなり来なくなって。その次の日も休んで。もう来ないんじゃないかって、不安でしょうがないです。変な噂も立ち始めて…、わたしは、華眉ちゃんを捜すための何か手掛かりの交換が出来るんじゃないかと思って、話をさせてもらったつもりなんですけど」
「なるほど、手前からもそれ相応の情報をよこせ、ってことか」
「…はい、わたしにも、先輩の知っている事を教えて頂けるとありがたいですね」
「ふむ」
今の陸酉華眉ちゃんについて、何か知っていることはありますか。と。話題は逸れることになるが、先輩が逸らしたのだ。文句は言われまい。一転攻勢、先ほどまで質問をされる側だったわたしが、先輩に向かって質問する。
「怪和崎先輩。陸酉華眉ちゃんについて、あなたが知っていることの全てを教えてください。華眉ちゃんがどうして行方不明になってしまったのか、先輩はどうして華眉ちゃんを捜しているのか、彼女がそもそも何者なのか…教えてください」
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