初夏の記憶と、1枚の手紙。ー大切な君へー


説明も無く姿を見せなくなって、突然の手紙に驚いただろうか。


本当に、申し訳ないと思っている。


医者の先生の話では、どうやら僕の身体は、もう長くはもたないらしい。


君は僕を恩人だと言ってくれたが、僕にとっても恩人だった。


生きる場所を。


僕が僕らしくいられる居場所が、君の隣だったからだ。


君と僕とでは、時間の流れが違う。


それは大人になるにつれて、君と過ごす時を重ねるにつれて、身を持って感じたよ。


だからこそ、毎日が。何気ない一瞬が、とても美しいと知ることができた。


君と過ごした時間は、人が生きる上でとても大切な事を教えてくれたんだ。


君は人間の文字を読めないようだから、この僕の言葉は伝わらないだろう。


だがいつか、君が僕以外の誰かと出会って、この手紙を読んでもらえたら。


あの木はきっと、僕がこの世からいなくなれば、切られてしまうかもしれない。


だからその時は、君がどこかに大切な居場所を見つけられることを願っている。



もう会えないけれど、ずっと元気でいて欲しい。


とても、とても幸せだった。


ありがとう。



たった1人の大切な友人 ナギへ。

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