妹の友達

第8話 僕が殺した 

 死んだ妹からのメッセージ事件から三ヶ月後のことでした。冬となり、妹の静美と一緒に校内のベンチで肉まんを食べていると。


「人殺し!親友の涼香を殺しておいて、ぬくぬくと生きていろのね!」


 見慣れない顔だ……イヤ、確か死んだ妹の友達の優紀である。


「わたしは許さない、この学校に転校してきたのも。歌論、あなたに復習する為だ」


 おいおい、まるで妹を殺したのは僕みたいなことになっているぞ。


 死んだ妹は一時停止を無視した車にひかれたのに……。そんな優紀は携帯を取り出して。メッセージを僕に見せるのであった。


『早く帰って二人でフルーツゼリーを食べるの』

「これが証拠だ、涼香はお前とフルーツゼリーを食べる為に急いでいたのだ」


 うぅぅ、複雑な気分になってきた。だが、僕が殺したと言うには問題がある。


「お兄ちゃんは悪くないよ、誰よりも妹の死を苦しんでいたのよ」


 静美が割ってはいる。


「おやおや、新しい妹ですか。わたしの親友の代わりは居ませんのに」

「違う!わたしは死んだ妹の代わりなんかじゃない。それはわたしが一番感じているわ」

「ま、いいでしょう。今日は挨拶だけです。わたしの復讐は始まったばかりです」


 身長が低めのストレートヘアーの優紀は去っていく。


「お兄ちゃん、肉まんが冷めてしまうわ……」

「あ、あう」


 あの優紀なる女子は死んだ妹の唯一の友達のはず。僕はとても複雑な気分であった。



 僕は友達がいない。


 それは妹の涼香が生きていた頃からだ。涼香はその人格から多くの友達がいた。

なかでも親友のリターナ・優紀である。


 ぱっと見はアジア系だがドイツ人とのクオーターである。幼い頃のドイツと行ったり来たりの生活の為に友達を作るのが苦手らしく涼香に張り付いていた。


「お兄ちゃん、優紀って女子が呪いのわら人形ショーをやってるよ」


 校内の中庭にある杉の木にわら人形を釘で打ち付けていた。数人の人だかりができて、完全に呪縛ショーである。


「来たか」


 僕の顔を見るなりニヤリと笑い。更に釘を打ち付ける。非科学的だが心なしか胸が痛い。


 確か……妹の静美から揚げパンを貰ったからだ。油っぽいので胸焼けであった。


「見たぞ、見たぞ、妹の静美から揚げパンを貰うところを……」


 はぁ?


「この呪いのわら人形で胸焼けにしてやる」


 大分、間違った使い方だが呪う気持ちは伝わってくるな。


「よし、箱を広げてアナログな投げ銭を始めよう」


 優紀はダンボールの箱に小銭を入れて。


「呪いのわら人形ショーはまだまだ続くよ」


 しかし、空箱を置かず、小銭を最初から入れるあたりが慣れている。


 このリターナ・優紀は侮れんな。

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