第2話 スクールライフ

 翌朝、僕は中庭で剣道の稽古を始める。僕の行っている稽古は競技剣道ではなく。


 『斬木葉』と呼ばれる武術である。


「お兄ちゃん、朝ご飯だよ」


 昨日知り合ったばかりなのにすっかりなつかれてしまった。


「わかった、今行く」


 親父どのと母上と四人で朝食を食べる。


「高校の編入の手続きをしておきました」


 母上から渡されたのはブレザーにズボンである。女子だからスカートと言う校則もなくあっさりと僕の要求が通った。


 僕は性的少数者ではないが妹を事故で失ってからはスカートを穿くことは無かった。


「えへへへ、お兄ちゃんと同じ高校だよ」


 静美は姉妹ができて素直に嬉しそうである。そして、高校に着くと先ずは色々説明された。部活に入らないといけないらしくて書道か剣道かに迷っていると。


 妹の静美が現れて新体操を進めてきた。競技剣道にも書道にも興味が無かったので新体操部に入る事にした。どうせ、所属だけである。


 放課後にタンクトップにスパッツ姿で体育館に入ると。華麗に舞う静美がいた。

なるほど、それで新体操を進めてきたのか。


 静美はインターハイを狙えるほど凄く目が点になるのであった。ふ、僕の妹には丁度いい才能の持ち主であった。


「お兄ちゃんもやる?」


 僕はリボンを持つと剣の様に振りかざしてみる。残念にもリボンは空を切って空回りする。僕には新体操の才能は無いらしい。更衣室に戻ると制服のズボンを着る。所属だけとは言え難儀な時間であった。


 わたしの高校での姿はブレザーにズボンである。付け加えると短髪に竹刀を背中に背負っていた。案の定、頭の固そうな女性教師に絡まれる。


「女の子らしい格好はできないの?」


 疑問形で話しかけてくるが、ヒステリーに近い。


「僕は僕だ」


 他に表現の仕方を知らず最小の言葉で押し通すのであった。しかし、解決にはいたらず上から目線の説教が続くのであった。


 場所が一階の渡り廊下だった為に僕たちの前を蛾が横切る。恐れてビクビクする女性教師に僕は提案する。


「この蛾を切り裂く為の竹刀です。見事に退治したら認めてくれますか?」

「ええ、いいわ、その剣の腕を見せてもらいましょう」


 僕は袋から竹刀を取り出して呼吸を整える。


 『斬木葉』流、奥義。『ジグザグ切り』


 上から左右に振れる竹刀は蛾を切り裂くのであった。女性教師は僕の剣裁きに見とれている。これなら問題ない。


「どうです?」

「ふん!」


 女性教師は悔しそうに去って行く。僕はバラバラになった蛾に感謝していると。妹の静美が近づいてくる。


「や、や、敵は去った後であったか」


 どうやら、騒ぎを聞きつけてやって来たのであった。女性教師はこの学校では有名なヒステリーらしい。気がつくと、やじうまの生徒達から歓声があがっていた。僕は高鳴った気持ちを近くの水道で顔を洗い、落ち着かせる。


「ふー」

「お兄ちゃん、凄いよ。妹として鼻高々だよ」


 静美は新体操の要領でくるりと一回転するとパンツが見えそうになり。慌てて隠す妹であった。やれやれ、可愛いところがあるなと感心するのであった。


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