妹のいる世界
霜花 桔梗
第1話 男装女子の僕に『お兄ちゃん』と呼ぶ妹ができた
今から三年前に妹が事故で居なくなった。それをきっかけして、両親は喧嘩がたえなくなり。結果、離婚、経済的な理由で父親に引き取られるが夜帰るのが遅いことが多かった。
母親は直ぐに再婚して音信不通となった。わたしも妹が居なくなって髪を切った。短髪にして男物の服を着るようになった。
別に意識して男装している訳ではないがその姿は男子そのものであった。そして、父親の失踪により、児童相談所たらい回しにされて。遠い親戚の家に転がり込む事になるのであった。
地図を頼りにしてお世話になる家を探していると。住宅街に大きな門がある道場風の民家にたどりつく。
そう、ここの主は有名な書道家である。門を叩くと女子高生風の少女が出てくる。
「初めまして『河瀬 歌論」です』
緊張しながら挨拶をすると……。
「お兄ちゃん?」
首を傾げているのはこの家の一人娘の『三度宮 静美』である。詳しく話を聞くと一つ下の年齢らしい。わたしの見た目は男子なので『お兄ちゃん』と呼ばれても抵抗は無かった。
「決定、お兄ちゃんと呼ばせて」
一瞬、死んだ妹の事を思い出す。あの頃は楽しかった。それは普通の幸せであった。
「お兄ちゃん、何をぼっーとしているの?」
「ゴ、ゴメン」
そうだった。これから新しい生活が待っているのだ。大きなお屋敷の中を進むと壁に巨大な『無』の文字が飾ってある。書道家の家らしい飾りであった。
そして、机と椅子のある部屋にたどり着く。広い中庭が見渡せる場所であった。
「ここで皆、書道の練習をするのよ」
「僕には書道は分からないな」
「後で門下生を紹介するね」
ここで人生をやり直す気分になれた。わたしは竹刀を取り出して。中庭で稽古を始める。静美は驚いた様子だが。わたしの真剣な面持ちに『凄い、お兄ちゃん』と声をかけてくる。
そう、わたしの特技は剣道である。
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