第3話:課題と交渉

 後ろから声をかけてきたのは、エルフのような美女そっくりの美しい男だった。

 絶対に身内だと分かるくらいによく似ていた。

 美女の父親なのか祖父なのか判断に困る微妙な年齢だ。

 

「父上、重大な尋問をしているのですが……」


「だからここに来たのだ、いいかげん自分が馬鹿だと理解しろ。

 お前は突撃隊長をやらせれば国一番の勇士だが、統治の才能や軍略の才能は欠片もないのだ、その辺は私やリーゼに任せておけ」


 これでだいたいの人間関係が分かった。

 俺が捕まった家の当主はイケメン親父で、信じられないが筋肉達磨のゴリラ親父がその息子で、エルフのような美女がゴリラ親父の娘でリーゼと言うのだと思う。

 本当に父親に似なくてよかった、隔世遺伝万歳だな。

 だが、どう考えても最悪の状況だと思う。

 イケメン親父の目がとても怖い、何を考えていて、俺をどうする心算だ?


「さて、別の世界から来たという話を信用してもらいたいのなら、それを証明しろと言ったが、それはこちらの出す課題をこなしてもらう事になる。 

 やる気はあるかね、異世界人君」


「ああ、ある、が、条件もある」


 俺はイケメン親父の目を見ながら返事した。

 

「ほう、自分が捕虜だという立場が分かっているのか?」


「分かっているからこそ、課題を達成した時に生命と安全と身分を保証してもらいたいと交渉している」


 イケメン親父が満面の笑みを浮かべた。

 どうやら強気の交渉は吉と出たようだ。


「くっくっくっくっ、いい度胸だ、気に入った。

 生命と安全と身分の保証だな、よかろう、こちらの出す課題を達成してくれたら、殺さないし傷つけない、身分は我がバイロン男爵家の騎士に取立ててやる。

 欲しいなら領地もくれてやろう」


「父上!」

「御爺様!」

 

 やっぱり息子と孫娘だったな、信じられないが事実は事実だ。

 まず間違いなく筋肉達磨のゴリラ親父は婿養子だろう。

 二人の反応を見れば、イケメン親父の出した条件は破格の功条件だと分かる。

 だが、その分出される課題は恐ろしく難しいのも予測できる。

 果たして俺の知識で解決できる課題なのだろうか……


「有難い条件だ、基本それでいいが、それを保証するちょっとした条件を加えてもらいたい、本当にチョッとした事だ」


 イケメン親父が少し驚いている。

 これほどの好条件に飛びつかず、更に条件をつけようとしているのに驚いたのだろうが、直ぐに補足を言わないと、悪感情を産んでしまうだろう。

 現にゴリラとエルフのような美女が睨んでいる。


「三人の名前を教えてもらいたい、そうでないと親近感がわかない。

 親近感がわかなくては、信頼感も生まれないから。

 俺の名前は長岡光司という」

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