第2話:連行
話しながらも何ができるのか色々と試した。
心の中でステータスオープンと唱えたり、魔力を練ったりした。
残念ながらステータスオープンには何の反応もなかった。
だが魔力を動かす事は簡単にできた。
これは俺に鍼灸柔道整復師としての知識と経験があったからかもしれない。
経絡に魔力を流し、特に三焦経に魔力を流して魔力袋を拡大した。
しかもオートクレープや紙風船や魔法袋を想像して、無尽蔵に魔力を貯めることができる魔力回路を創り上げた。
「しかたがない、正直に言わないのなら城に連行して拷問だ」
エルフのように美しい女性が苦しそうに顔を歪めて吐き捨てる。
俺は痛いのが苦手なんだ、拷問なんて絶対に嫌だ。
「言います、言います、全部正直に言います。
信じられないかもしれませんが、異世界からここに転移してしまったんです。
異世界で死にそうになって、目が覚めたらここにいたんです」
「ふざけるな、誰がそんな荒唐無稽な話を信じる。
ここまで愚弄されてはもう勘弁できん、城に連行する」
エルフのように美しい女性は、カンカンに怒ってしまった。
短い時間で強くなった魔力で抵抗することができるかもしれないが、それでこの女性を傷つけることになるのは嫌だ。
それにこれが死にかけている俺の夢なら、反撃しようとしても失敗するだろうし、逃げようとしても失敗するだろう。
それよりは成り行きに任せた方がいいと思う。
★★★★★★
成り行きにまかせたのは失敗だった。
エルフのように美しい女性が、俺の手を縄で縛って鞍に括りつけたのだ。
馬を軽く走らせて城に連れてこられたので、俺は必死の全力疾走をしなければいけなくなってしまった。
悪夢だから馬の速さについて行けたのか、魔力を身体中に流して身体強化したおかげでついて行けたのか、どちらかは分からないが、全く疲れなかった。
失敗だと思ったのは、眼の前にエルフのような美女とは似ても似つかない、顔中が傷だらけ筋肉達磨、ゴリラのような顔をした男がいるからだ。
その男がさっきから恐ろしく大きな声で脅かしてくるのだ。
子供なら一発でひきつけを起こして泣き出してしまう恐ろしさだ。
だから俺は正直に真実を話して拷問から逃れる努力をした。
何度もエルフのような美女に言ったのと同じこと繰り返した。
「だからさっきから何度も正直に本当の事を言っているじゃないですか。
信じられないかもしれませんが、異世界からここに転移してしまったんです。
異世界で死にそうになって、目が覚めたらここにいたんです」
「だったら異世界から来たという証明をしてもらおうか」
不意に後ろから話しかけられた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます