第12話 勇気

クリスマスイブ


終業式を迎えた学校帰り ―――



「いらっしゃいませー」

「あの…」



私は瑠惟の所に寄った。



「あら? 確か…裕唯ちゃんって言ったっけ?」

「あ、はい……あの…弟さんは?」


「やだ、良いのよ。瑠惟で。あの子ならまだよ。学校帰りに買い物して帰るはずだから当分は帰らないと思うけど」


「…そう…ですか……」

「急用?」

「いいえ…あの…ま、また来ます」



帰り始める私。



「あ、待って!裕唯ちゃん!」



足を止める私。



「あなたに1つだけ伺いたい事があるの」

「えっ? あ、はい」



私は振り返る。



「あなたにとって彼は…? あの子には言わないって約束するから今のあなたの気持ちを素直に聞かせて欲しいの」



「私は…」


「…………」


「…アイツが…好きで…」



ガチャ

店の出入り口のドアが開く。



「たっだいまーーっ!」



ドキッ

聞き覚えのある声に胸が大きく跳ねた。




「………………」




振り返る私。



「あれ? 裕唯じゃん! どうしたの? 何? 何?また髪切ってって?」


「ち、違……すみません!失礼します!」



私は店を飛び出した。



「あっ!おいっ!裕唯?」

「もうっ!馬鹿っ!」

「ええーーっ!何だよ!馬鹿って!帰って早々意味分かんねーし!」

「早く奥に行きなさいっ!」

「はいはい」



「…裕唯ちゃん…うまくいくと良いんだけど……素直になれないだけなのね……」






もし神様がいるなら


私に勇気を下さい!


もし天使がいるなら


私に奇跡は起きますか?




自分の想いを


彼に伝える事が


出来るなら



例え結果がどうであっても


素直に想いを伝えさせて下さい!




今日の私を変えて下さい!


素直に想いを伝える事


意地張って


強気な事を


絶対に言わない事


そうなれる自分でありたい




――― ううん ―――



あってほしいから




――― そう ―――



たった一言の想い




『あなたが好きです』




たったそれだけ


その台詞(ことば)を


言わせて下さい!




――― お願い ――――

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