第11話 喧嘩友達、二人の想い
~ 岡元 瑠惟 side ~
「なあ、瑠惟」
俺の親友の
大宮 タクミが話し掛けてくる。
「何?」
「誰か女の子、紹介して」
「俺が?」
「だって、お前、どう見たってモテ男じゃん!女友達多そうだし。お店のお客とかイイ子いない?」
「いないから」
「じゃあ、今年もシングルベルか…男二人で過ごす?」
「男同士って淋しくね?」
「だよなぁ~」
「なあ、タクミ」
「何?」
「喧嘩友達ってあるじゃん?」
「喧嘩友達?異性の?」
「ああ」
「確かにあるな。あれって結局、どちらかが想い寄せてんだよなぁ~。あれ? でも、お前いたっけ?そういう相手」
「それがさ…他校生にいるんだ。見た目、イケてんのに、俺に似てすっげー、口減らずで…でも…アイツには弱い所とか見せてる自分いたりすんの」
「で?その子の事気になんのか?」
「…どうかな? 正直、全然分かんねーんだ。好きなのか…ただ、気になるだけで恋愛としての想いはない感じなのか?」
「…瑠惟…」
「何つーかハッキリしないみたいな……悪い…やっぱ良いや」
「…なあ、瑠惟」
「何?」
「お前がさ、そういう気持ちになってるなら向こうも同じじゃねーの?」
「えっ?」
「…もしかすると…逆に、お前に好き寄りに近い感じ?」
「何で、そう思うんだ?」
「喧嘩するって事は、お前みたいに恋愛としての想いがない感じのパターンか…本当は好きなんだけど…意地張って素直になれないのどちらかと俺は思うんだ」
「…素直になれない…?」
俺は、裕唯の姿が脳裏に過った。
「この際、クリスマスに告ったら?」
「あのなー、ただでさえ喧嘩の絶えない俺達に無理な話だから!」
「もしそうだとしても、今のままよりも良いと思うけど?ゆっくり付き合う方法もあるし。なあ、フレンドデートしようぜ」
「えっ!?」
「喧嘩友達つー事は連絡先、交換してんだろう?」
「まあ、一応…でも、そんな頻繁に連絡とってる訳じゃねーし」
「良いから!じゃあ、俺が連絡するから携帯貸して!」
「はあぁぁ!?」
「喧嘩友達なら俺の方が彼女も来やすいだろう?素直じゃないなら行かないとか言われて、じゃあ、誘わねーってなりかねねーだろう?お前らの場合」
「いや…それは…」
「ほら、ほら!携帯!瑠惟の性格を知り尽くしてる俺には通用しませんよー。何年以上の付き合いと、お思いですか?瑠惟君!」
確かに、タクミの言ってる事はあると思った。
俺は、タクミに携帯を渡した。
そして、出掛ける事になったんだけど……
出掛ける当日。
裕唯は希誉花ちゃんを連れて、4人で会う事になった。
出掛けたのは遊園地だ。
大体、一通り乗り廻った後だ。
「裕唯ちゃん、ちょっと俺と付き合って」
「えっ?」
「瑠惟、希誉花ちゃん、ちょっと裕唯ちゃんと抜ける」
「あっ!おいっ!」
タクミは、裕唯を連れ、いなくなった。
「何だよ!アイツ」
「妬く?」
「えっ?」
「瑠惟君の気持ちは分からないけど、でも裕唯の事、少しでも考えてもらうとありがたいかも」
「希誉花ちゃん?」
「裕唯、素直じゃないから」
「…そっか…」
一方。
「ごめん、裕唯ちゃん」
「ううん」
「単刀直入に聞くから正直に答えてくれる?」
「うん」
「裕唯ちゃん、瑠惟の事、好きなの?」
「えっ!?」
「瑠惟の喧嘩友達って事だし、アイツには言わないから教えて!」
「それは……」
「素直になれないだけなんだよね? いつもなら、言い合ったりしてるんだろうし」
「………………」
「それとも、希誉花ちゃんも瑠惟の事好きだったりするのかな?遠慮してる?」
「前に一時期、二人付き合ってたから……」
「裕唯ちゃんのアイツへの想いは?」
「…それは…好きだけど……」
「素直になれない。そんな所かな?」
私は頷いた。
「じゃあ、頑張って素直になりなよ。アイツ、あんなしてるけど裕唯ちゃんの事、考えてくれると思うから」
「タクミ君」
「今、喧嘩友達なら、もう一歩踏み出そう!友達以上恋人未満の関係になろう。想いは伝えない限り何も変わらないから。身近過ぎて気付かない事もあるし、アイツに何かのアクションがあれば、想いに気付いて、アイツは裕唯ちゃんを選んでくれるはずだから」
瑠惟が?
だけど…もし、そうだとしたら……?
私はクリスマスに賭けるべきなのかな?と思った
そして、再び合流し私達は園内を廻る。
楽しい時間も過ぎ別れ、夜、俺は兄貴達に尋ねた。
「なあ、折り入って相談なんだけど……」
「何だよ。改まって」と、兄貴
「気持ち悪い」と、姉貴。
「気持ち悪い言うなよ!」
「で?何?」と、兄貴。
「彼女の事?」と、姉貴。
「えっ?」
「名前、裕唯ちゃんって言ったっけ?二人、派手に喧嘩していたものね」
と、姉貴。
「あーあの可愛い子?何?やっぱり気になるのか?」
と、兄貴。
「…それが…分かんねーんだよ……」
「えっ?」
「好きなのか…ただ気になんのか…ただの喧嘩友達に過ぎねーのか…」
「…瑠惟…」
「ただ、アイツには弱い所見せたりしてる部分あって…俺って情けねーとか思う部分あったりした…でも…そん時の俺、友達感覚でアイツに話していたから…」
「瑠惟、好きな人だったら弱い部分を見せるのは恥ずかしいかもしれない。でも、それは相手がどう取るにしろ見せる事が恋愛だと思う」
「…兄貴…」
「プライド捨てて自分の弱い所見せて、自分曝け出せるから成り立つと思うけど?男も女もそれは一緒じゃないのか?」
「………………」
「好きだから意地張って弱い所見せたくないじゃなく、好きだからこそ尚更、もっと素直に見せないと後々、後悔すると思うけど? 確かに喧嘩になる事もあるかもしれないけど、それがないと相手と分かり合えないんじゃないか?」
「だとしたら……彼女……裕唯は?」
「彼女は意地張ってるだけだろう?若いのもあるだろうけど…彼女は性格が悪いんじゃなくて素直に出せないんじゃないかな?ていうか素直になれない?」
「…みんな口揃えて同じ事言うんだよなぁ~…俺には、無理だ…」
俺は自分の部屋に行った。
二人は顔を見合わせる。
「瑠惟、あー言ってるけど、どうすると思う?」
「さあ……どうするかな?」
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