第9話 友達の想いと私の心

あれから二人は日程などを決め、その後も出かけてるとの事を聞いたけど、詳しい事は聞かなかった。


と、言うよりも聞けなかった。




「ねえ、裕唯。瑠惟君ってマジカッコイイよね?」


「えっ?そうかな?でも、性格悪くない?アイツ」


「全然。すっごい優しいし、明るいし一緒にいて楽しいよ」


「えっ!? そうなんだ」



≪いや…絶対あり得ない!ネコ被ってる!≫

≪私とはいつも言い合ってるのに!≫



「じゃあ付き合ったら?」

「ねえ、それマジでとっていい?」

「えっ?」



意外な返事が返ってきた。



≪つまりそれって…瑠惟の事…≫



「私、彼と付き合おうかな?瑠惟君と」

「良いんじゃない?付き合っちゃいなよ」

「本当に良いんだね?裕唯」

「私は別には、ただの友達だし」





希誉花は、告白する事にした。


そして、その結果ゆっくりと付き合う事になったという話を聞いた。






そんな私の心は凄く複雑だった。


再会しメールのやりとりをしていた為、気付かないうちに私もアイツには密かに想いを寄せていた事に気付いた。




意地張ったり


強気な事ばかり言ってるけど


真実(ほんとう)は


私の心に


瑠惟への想いが


強く心に


存在していたのだから ――――







それから数か月が過ぎ ――――



ガチャ



「すみません! 髪切って下さい!」




突拍子もない突然の思い


私はふと髪を切りたくなり瑠惟のいる美容院に迷う事なく訪れた。




「裕唯?」




ドキン

胸が大きく跳ねる。



「えっ!?瑠惟いたの!?」

「いたら悪いか!ここは俺の家でもある」

「…そう…だよね…ごめん…」

「…いや…良いけど…」

「ごめん…帰る…」

「えっ?あっ!おいっ!裕唯?」




一瞬、希誉花の顔が過った。



二人はどうなっているんだろう?


続いているのかな?


なんて――――




親友だけど希誉花には聞けなくて何も聞かされていない。


というより聞きたくないのが私の本音だった。




「裕唯っ!」




グイッと腕を掴まれる。


ドキッ

振り返る視線の先には瑠惟がいた。


ドキン




「えっ!?瑠惟っ!?」

「髪、俺で良いなら切ってあげても良いけど?」

「えっ?」

「兄貴いねーし。姉貴は他のお客さんの対応してるし」


「えっ!?…いや…あんたに切られる位なら辞めとく。バリカンで丸坊主されそうだから」

「おっ!良いねー。是非、そうさせてもらおうじゃん!」


「辞めてよ!尚更切りたくなくなるし帰りたくなるからっ!」

「嘘だよ! マジにとんなよ!」




私のおでこを人さし指でツンと突っついた。



ドキン

胸が高鳴る。



「いきなり入って来て、すっげー切りたそうにしたかと思ったら拍子抜けた顔するし」


「………………」




ポンと頭を押さえた。



ドキン




「で?どうする?腕には自信ねーけど見よう見真似で切って、仕上げは姉貴にしてもらえば良い訳だし。時間の都合つくならだけど」


「……お願いして…良いかな? 瑠惟に……」

「分かった。じゃあ来な!」



私達は店に戻る。



≪初めてあがる瑠惟の家≫



私は一気に緊張して動けないでいた。



「裕唯?」

「あ、ごめん…えっと…」



≪異性の家…しかも…好きな人の…≫



「もしかして緊張してんの?」

「し、してないからっ!だけど、男の子の部屋に上がった事ないの!」


「………………」



クスクス笑う瑠惟。



「わ、笑わないでよ!」

「それって緊張してんのと一緒じゃねーの?」

「うるさいなっ!」

「ほら、そこ座れよ」



私を全身の映る鏡の前に座らせた。



「どれぐらい切るの?」

「えっ?」

「髪」

「決まってない」

「まあ、無理もねーよな?店に入って来て早々、髪、切って下さい!だもんな?」

「だって……」



クスクス笑う瑠惟。

瑠惟とは数か月ぶりの再会。


久しぶりの会話。

何処か嬉しかった。



後ろに立ち、背後から抱きしめられてるような感覚になり、ドキドキ胸が加速する。



「ね、ねぇ」

「何?」

「希誉花とは……続いてる?」

「えっ!?そういう話とかするんじゃねーの?」



首を左右に振る。




「えっ?親友なんだろ?」

「うん、親友だよ。でも、してない」

「希誉花ちゃんに聞けば良いじゃん」

「出来ないよ」

「どうして?」

「それは……」





あなたが好きだから……



辛くて聞ける訳がない


そう言いたかった




「裕唯?」

「聞けない理由があるの」

「聞けない理由?」

「そう!」

「ふーん」



「それで、どうなってるの?」

「別れたよ。友達だったけど……好きとカッコイイは違う。だから別れた。一ヶ月前に」


「一ヶ月前……」


「ああ。彼女の想いが伝わって来なかったから、こっちから別れを告げた。それに……友達以上はならない気がしたから……」


「そっか……ねぇ…瑠惟が望む恋人関係って……?」

「えっ?」

「やっぱり…顔なの?それとも性格?前の彼女は可愛かったし……ごめん…関係ないか…」



頭をポンとする瑠惟。


ドキッ



「はい、修了!」

「うわっ!短くない?」

「お前が任せたんじゃん!」

「そうだけど……」


「瑠惟ー、裕唯ちゃん連れてきて良いわよー」

「今、行くーー。じゃあ後は姉貴に仕上げてもらいな」

「うん……」

「お前、元々可愛いんだし、どんな髪でも似合うって」




ドキッ



「後…今度彼女にするならお前みたいな奴が良いかもな?」




ドキッ

意外な言葉に胸が大きく跳ねた。



「えっ!?」

「以外にありかも?」

「瑠惟…」



「ほら、行きな!」

「うん……」



私は店の方に移動した。


「まあ、随分と短くしてもらったのね?」

「おかしくないですか?」

「大丈夫!後は任せて!うまくしてあげるから」

「はい」





~ 岡元 瑠惟 side ~



今はアイツへの想いはまだ分からなかった


だけど


自分を曝け出せる相手(ひと)は


彼女・藍葉 裕唯しかいなかった

























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