第8話 関係
「瑠惟」と、俺の姉貴。
「何?」と、俺。
「あんた彼女とはいつから?」
「彼女?誰の事?」
「派手に言い合っていた女の子」
「あー、裕唯ね」
「すっごい喧嘩してたよなぁ~。面白かったけど」
と、俺の兄貴。
「俺達は見せ物じゃねーし!」
俺は裕唯の事を話した。
「で?恋愛には進展しないのか?」と、兄貴
「ないな!顔は良いけど性格は俺と五分五分じゃねーの?」
「そんな事言って実は好きになってたりするのよねぇ~」
「断じてないっ!」
「ふーん」
「何だよ!その疑いの眼差しは!」
「別にー。そんなつもりはないけど?」
ある日の事。
「瑠惟、これ誰か誘って行っておいで」
「えっ?これ、映画のペアチケットじゃん!相手もいねーのに当たっちゃったんだ!」
「うるさいわねっ!」
「兄貴は?」
「仕事の都合で出張らしいから」
「出張?」
「そう。私も、お店休む訳にはいかないし」
「分かった。じゃあ、誰か誘う」
そして ―――
「ねえねえ、あの子前にもいた男の子じゃない?」
「あっ! 本当だ! 目立ってたしね」
そんな声がする中、私は見向きもせずに正門を出る。
「ねえ、裕唯。今日ちょっと付き合って!」
と、希誉花が言ってきた。
「うん良いよ」
その時だ。
「あっ! 裕唯」
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
何となく相手が分かったからだ。
振り返る視線の先には瑠惟だ!
「何?先約あったの?」
希誉花が尋ねた。
「えっ!?ち、違う違う!」
「ちょっと……マジヤバイ!超イケメンじゃん!」
希誉花は耳元で囁く。
「えっ!?」
「先に行ってる!」
「あっ!ちょっと!希誉花、待っ……」
「あっ!お友達の方、すぐ終わるからいて大丈夫」
「……そう…ですか……?」
「で? ご用件は何? 瑠惟」
「これ、行かないかなぁ~と思って」
「…映画の…チケット…」
「あっ!これ!完売寸前の映画のチケット!」
希誉花が食い付いた。
私の入る隙はなく、返事を言う所か話すタイミングなど一切なかった。
「裕唯、行って来なよ!」
「えっ?あ……いや…私は…」
希誉花が私に言ってくれるも遠慮してしまった。
「映画が嫌いなの?」と、瑠惟。
「嫌いじゃないけど……レンタルで吹き替え版の方が……」
「あー、そういう事?映画のスクリーンの字幕読むの面倒ってやつだ!」
「そ、そうなんだ!」
「じゃあ、君、俺とデートする?」
ズキン
デートという言葉に胸が何故か痛む。
「えっ?良いんですか?私、この映画観たかったんです!」
「それは良かった!映画を制作した人も君みたいな子に観て貰った方が嬉しいと思うよ。誰かさんみたいな人よりも」
ムカッ
いちいち、腹立つ一言を言う瑠惟。
「あー、そうでしょうね!ふんっ!!」
「可愛くねー!」
「うるさいっ!」
私は顔を反らす。
瑠惟と出掛ける事なんて滅多にない。
目立ってるし認めたくないけど確かにイケメンだ。
だけど私達は喧嘩が絶えないだろうし楽しいはずのお出掛けも多分…楽しめない気がする。
でも正直行きたかった部分もあったりした。
「あの!ありがとうございます!」
「ちなみに希誉花、コイツうちらとタメ(同級生)だから敬語いらないよ!」
「えっ!?そうなの?」
「そう!」と私。
「うん、そう!」と、瑠惟。
二人は番号を交換しあい出掛ける事になったみたいだけど……
その日の夜。
♪~
『何してる?』
瑠惟からメールだ。
ドキン
胸が高鳴る。
♪~♪~
『別に何もしてない』
♪~
『お前、マジで良かったの?映画』
『友達、希誉花ちゃんだっけ?お前より先に食い付いたから、お前希誉花ちゃんと観に行く?』
♪~♪~
『別に良いよ。瑠惟、行きなよ。希誉花と』
♪~
『入るタイミングっつーか、希誉花ちゃんが一足早かったから、お前の返事聞く事なかったけど……』
♪~♪~
『大丈夫だよ。あの時言ったまんまだし、希誉花と楽しんで来なよ!本当に大丈夫だから』
♪~
『そうか?分かった』
気にかけてくれたのか、正直ちょっと嬉しかった
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