第7話 別々の道


デートの別れ際、榴介君が言ってきた。



「裕唯ちゃん、大事な話があるんだ」

「何?」

「出掛けた日に、俺が途中抜け出した時あっただろう?」

「うん」

「その日、アイツ俺騙して嘘ついてて……」

「うん」


「だけど……そんな俺も裕唯ちゃんを騙すようなメール送ってしまって……結局、その日、アイツのやり方に腹立って……関係を持ってしまったんだ」


「そっか…告白もされたんでしょう?」

「えっ?」

「夕子ちゃん言ってたよ」

「えっ!? 夕子が?」


「うん。私も夕子ちゃんとは面識あった事、榴介君に嘘ついてたし…夕子ちゃんから話は聞いた」


「…アイツ…」


「だけど……夕子ちゃんを責めないであげて」

「裕唯ちゃん…」

「それに…私も、このまま榴介君と付き合っていけないから…」

「関係持ったり裏切ったから?」


「ううん。それ以前の問題かな?私…榴介には何も応えてあげれなかったから。辛い想いさせてるなぁ~っていっつも思ってたから」


「裕唯ちゃん…」


「こんな私でも良いって言ってくれて付き合ってくれて本当にありがとう……凄く嬉しかった」



私は別れを告げた。




その日の帰り ――――



ふと、ショーウィンドーに目をやる。




「髪、切ろうかな?」




すると、近くに美容院があり、迷う事なく店に入る。




「いらっしゃいませー」



店内には他のお客さんの姿があり、私は自分の順番を待っていた。




「次の方、どうぞ」



私の番となり私は席についた。




「今日は、どういう感じにされますか?」



男の人が尋ねる。



「決めて……ないんです。お任せします…」



髪がカットされていく中、涙がこぼれそうになる。



店員さんが異変に気付く。




「あの…」

「はい?」

「髪…カットしても大丈夫ですか?」

「えっ!?」


「何か考え事している様子だし、髪…カットするのに躊躇いがあるみたいですけど…」


「えっ!? あっ…すみません…大丈夫です!ここに来る前に色々あって…気分的に勢いで髪切ろうって思ったので…気にしないでカットしてください!むしろカットして貰った方が私的には……」





その時だ!




「たっだいまぁーっ!」



店内に、元気な声が響き渡る。



「ちょっと! 瑠惟っ! まだ、お客さんいるんだから!」




ドキッ



≪えっ!?今、瑠惟って…≫




女の人が叱る中、ミラー越しから見える男の子。



「あっ…悪い…」




そして―――



「…すみません…」




ドキン

私の方を見て謝る。


「いいえ…」



≪嘘……ここ……って…≫



瑠惟は気付いていないようだ。




「それより、その卵何?」と、女の人。


「特売!」と瑠惟。


「買い過ぎ!」



私も突っ込みたくなる。


だけど、逆に瑠惟に会えた事が偶然とはいえ、何処か嬉しくも感じた。



「卵は栄養あるよ~って事で、今日は玉子料理~何しようかな?」


「俺、オムライス~」



私の髪をカットしている男の人。



「ええーっ! オムレツよ!オムレツ!」


と、女の人。



「いやいや、オムライスだって!お客様は、どちら派ですか?」

「えっ?私…ですか?私は別に…玉子料理なら何でも好きなので…」


「あっ!じゃあ、玉子焼きは?甘党派?塩辛い派?もしくはだし巻きとか?」

「玉子焼きも別に拘らないので…」

「そう?でも甘い玉子焼きってどう?」

「美味しいなら別に…」


「そうか~実は弟の作る玉子焼き甘党でさ」

「そう…なんですね。家庭の味とか地域によって分かれるみたいですけど……でも、凄いですね。弟さん料理されるんですね」


「あー、アイツ料理上手だから。女性よりも女子力あるかも?」

「へぇー…じゃあ彼の将来、未来の奥さんになる人は幸せですね」


「あっ! 君と同じ位だし、この際、結婚前提で付き合ったら?」

「おいっ!兄貴!お客さんにも選ぶ権利あるし」

「えっ!? 弟さん…彼女いらっしゃるんじゃ…」


「それが最近別れたばかりで…ていうか自然消滅ってやつ?」

「ちょっと!兄貴!そういう情報はいら……」

「えっ!? 瑠惟!!あんた別れたの!?」



私は立ち上り振り返る。




「うわっ! びっくりしたっ!」



髪をカットしていた人。




「裕唯っ!?」と、瑠惟。


「えっ!?」と、女の人。


「二人共知り合い?」と、髪をカットしていた人



「誰かと思ったらお前かよ!」

「まさかあれから謝らなかったんじゃ?…いや…違う…一回紹介されし…えっ?あれ?どういう…事…?」

「いや…あの後…また喧嘩して…」


「喧嘩!? で?謝らなかったわけ!?」


「………………」


「図星!? 呆れた!男らしくないっ!どうせまたあんたが悪いんでしょう?」


「し、仕方ねーだろ!?」


「私、絶対あんたと付き合えないっ!大体、お客さんとかって変な嘘つくから罰あたったんじゃないの!」


「違うし。つーか、俺だってお前と付き合うのは絶対無理!あーあ、お前のせいで時間ロスしたし!」


「私は悪くないから!ほらっ!早く料理作りに行きなよ!私は今から可愛くしてもらうから!」



私は椅子に腰をおろす。



「可愛くだぁーーっ!?一層の事丸坊主にしたら?」


「はあぁぁぁっ!?あのねーーっ!」




バリカンにスイッチを入れる瑠惟。



「ちょ、ちょっと!」



私は立ち上がる。




「ほら、ほらっ!髪刈れよ!」



と、瑠惟と私のバトルが始まった。


お客がいないのが幸いだったと言うべきなのだろうか?



「あんた、マジムカつくっ!ただでさえ男にフラれてブルーなんだからねっ!」


「へぇー…フラれたんだーー。だったら尚更、心機一転で丸坊主にしろよ!裕唯!」


「何で私がしなきゃならないわけ!?そういうあんたがしなよ!自分が悪いくせに謝りもしない小っちゃい男なんだからさぁ~、瑠惟が気合い入れ直したら?あんたこそ、尚更、心機一転すべきなんじゃないの!?」


「俺は、する必要ないっ!」

「あるっ!」

「ないっ!」

「あるっ!」



睨み合う私達。



瑠惟は、バリカンのスイッチを切ると、一先ず置いた。



「で?フラれた男ってさ、例の利用していた男なんだろ? 藍葉 裕唯!」



ドキッ


さらりと私のフルネームを言う意外さに胸が跳ねる。


何故、私の胸が跳ねたのかは定かではない。




「利、利用していたなんて、そんな言い方しないでくれるかな?岡元 瑠惟!」


「事実だろ?」


「違いますっ!相手には幼なじみいたし私の入る隙なんてなかったし…多分…第一、相手には私の事…正直に自分の想い話してたし、それでも良いって…でも…ちょっと問題発生して……」



「………………」



「って…どうしてあんたにこんな事…もうっ!とっとと向こうに行って!」


「お前が勝手に話したんだろ!?」

「あー、もうっ!早く行けっ!」



私は瑠惟を追い出すようにすると、私は椅子に戻り始める。



「裕唯」



名前を呼ばれ振り返る。



「何?」


「可愛い丸坊主にしてもらえよ」



イタズラっぽく笑う瑠惟。



「丸坊主はしてもらわないから!」



歩み寄る瑠惟。



ポンと頭をする瑠惟。



ドキッ



「案外、似合うかもしれないぜ?」

「あのねーっ!」



クスクス笑う瑠惟。




「さーて、料理作ろうっと。お前も食べて帰る?」


「帰りません!」

「そっ?」

「そうです!当たり前じゃん!私達はちょっとした顔見知り程度なだけだし」

「別に友達でも良くね?」

「えっ?」

「俺は、全然構わねーけど?じゃあな!裕唯」




そう言うと、奥に入って行く。




「………………」



≪…友達?≫



「瑠惟は、アイツなりに励ましたんだと思うよ」


と、お兄さんと思われる人。



「えっ?」

「アイツ、優しい所あるし。まあ、君と似てる部分はあるかもしれないけど」

「…そう…なんですかね……」

「そうそう。アイツが友達って言うだから良いと思うよ」



そして、アイツからメールが来ていた。





『どんな問題が知らねーけど、元気出せ!裕唯。またメールする』


『ありがとう。瑠惟』



































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