第6話 幼なじみの存在


ある日のデートの日。



「榴介君」

「何?裕唯ちゃん」

「榴介君は幼なじみは幼なじみでしかない?」

「えっ?」

「あ…ほら、幼なじみってさ、どちらかが想い寄せてたりするじゃん?」


「あー…まあ」

「やっぱり何かあった時、いつも傍にいてくれたりとか何でも曝け出せるってやつ?」

「アイツに何か言われた?」

「えっ?アイツって?あ、まさか幼なじみの子の事かな?私、顔知らないよ。向こうも知らないはずだし」



≪ごめん……榴介君≫



「そうだよな?ごめん」

「ううん。幼なじみ…良いよね? 私、ひとりっ子だし、そういう相手もいないから、羨ましいなぁ~って思って」

「そうか…」




そしてある日の休日。


榴介君と街に出掛けた、その日の午後。




「メール……? 夕子…?」



榴介君が携帯を見て表情が曇る。



「榴介君、どうかしたの?」

「いや………」



≪夕子って言ったよね?幼なじみの子だよね≫




「榴介君、良いよ」

「えっ?」

「行ってあげなよ」

「でも……」


「幼なじみの子が心配なんでしょう?」

「それは……」


「私は良いから。理由はどうであれ、幼なじみだからこそ傍にいてあげて。榴介君に連絡するって事は頼りにしてるって事だし。余程の事なんでしょう?」


「裕唯ちゃん……ごめんっ! いつか埋め合わせするから!」




そう言うと、帰って行った。



「……埋め合わせか……」




私に埋め合わせとかっておかしいよ……


だって……


榴介君にとってのデートなのに……




私は…………




何も…………




応えてあげれていない気がする……




――― それなのに ―――





~ 榴介 side ~


夕子から、おばさんが倒れたとメールが来ていた。


俺は慌てて裕唯ちゃんと別れ急いだ。



「夕子っ!おばさんは?」





そこへ ――――




「あら? 榴介君」

「……えっ? あれ……? おばさん……?」

「何? どうしたの?」

「……いや…えっと…体調大丈夫なの?」


「体調?アハハ……やーねー。私はこの通りピンピンしてるわよー」

「そうか……それなら良かった」

「ゆっくりしていってねー」

「…はい…」


「………………」


「…お前…どういうつもりだよ! おばさんピンピンして……」



幼なじみの夕子は俺にキスをした。


押しのける俺。



「何すんだよ!」

「……ごめん……」

「おばさん元気みたいだし用がないなら、俺、帰るから」

「……待って! ……帰らないで!」


「………………」


「……お願い……」


「……悪いけど、無理! 応えられない。俺、デートの途中で抜け出して来たんだよね?」

「えっ!? 嘘……ごめん……」


「………………」



俺は、夕子の前から去り始める。



「榴介っ!」



夕子は、俺の腕を掴み引き止めた。



「離せよ!」

「離さないっ! ……どうして…? 何で彼女が良いの? 榴介、付き合えても凄く寂しそうだよ!」


「例えそうだとしても好きな人と一緒にいられるならそれで良いんだよ!」

「…そっか…榴介には…私の想いは届かないんだね……」

「…お前の事…幼なじみ以上は見れない…」

「そっか…」



俺は、夕子の部屋を出て行き始める。





その時、裕唯ちゃんからメールが入ってきた。


♪♪~


『幼なじみの子、大丈夫だった?』

『事情は良く分からないけど幼なじみの絆って良いよね?』




「…裕唯ちゃん…」



俺は、窓側に立っている夕子を見つめる。


裕唯ちゃんに連絡して、今からデートを再開した所で、どうなのだろう?と思った。


また、夕子に呼び出されたらかなわないとも思っていた。


やりかねないと思ったからだ。




俺は、裕唯ちゃんに……



『大丈夫みたいだけど、心配だから傍にいてあげようと思う』



そういうメールを送った。





俺は、夕子の傍に歩み寄る。




「榴介?彼女から連絡来ているんでしょう?行って良いよ」

「ああ、メール来てるよ。幼なじみの子、大丈夫だったってな」

「…えっ!?……それなのに……私…榴介…私は大丈夫だから今から彼女の所に行って良いよ。……デートの邪魔して……ごめん……」



「……おばさん出掛けるんだ」

「うん…買い物じゃないかな?」

「そっか」

「ほら、早く行きなよ。彼女……」



俺は、夕子にキスをした。



「榴……えっ? きゃあっ!」



俺は、夕子の手を掴み、夕子に股がりベッドに押えつけた。



「ちょっと! 榴介……!」

「また、呼び出されたらかなわないし」

「えっ!?」

「何言って……もう呼び出したりしないから、だから彼女の所に行って!」


「嘘迄つかれてデート中に騙されて、すっげー腹立ってんのに、お前にあんな顔されて放っておけるわけないじゃん!」


「榴介、もう本当に……」



俺は、夕子にキスをした。



「榴介っ!だ、駄目だよ!彼女……」



押しのけようとする夕子だけど、男の俺のにかなう訳がなく、俺は、幼なじみでありながらも男として夕子に態度を示した。


夕子が俺に気がある事は正直、気付いていたし、余りしたくはないが、俺は夕子に幼なじみだからって甘くみんな!という事と


俺に好きな人がいたとしても、男としての怖さを知ってほしかったからだ。


夕子は、幼なじみだからという事で、俺の想いを知っておきながら、嘘ついて連絡してきた。


俺が彼女と会っている事は知らなかったから、尚更、俺がマジで裕唯ちゃんに対してマジだというのに邪魔されたのが悔しかったし腹立だしかったのだ。


それなのに裕唯ちゃんは、夕子の事を気にして帰るように促してくれたというのに……



「彼女に悪いって思うなら何で嘘ついたんだよ!例え会ってるって知らなかったとしても、俺がデート中でも来てくれるって思ってたんだろ!?」


「……だから……謝って……」




俺は、夕子から離れ、帰り始める。




「帰る!」

「榴介っ!」



夕子は引き止めた。




「……ごめん……デートの邪魔してごめんっ!」


「………………」


「だけど……私…榴介が好きなの!」



そう言うと、夕子は俺の背中に抱きついた。



「お前さ、幼なじみとはいえ俺が男だって事、分かってんの?」


「分かってるよ!」



グイッと夕子の手を掴み、夕子に股がり再びベッドに押えつけた。



「だったら、それに応えてやるよ!邪魔されたんだし、そんぐらいの覚悟あんだろ?」


「えっ? 榴……」



俺は、夕子にキスをし、更に進めていく。


夕子は、抵抗していたものの、かなわないと思ったのか抵抗するのを辞めた。


勿論、俺への想いもあったのだろう?


幼なじみだけど、邪魔して悪いと思う中、それでもいいと……一線を越える覚悟を夕子はしたのだろうと……
































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