第5話 彼の幼なじみ

「可愛いー、その制服って○○女子高校でしょう?」


「あ、あの……」



学校の正門前に、他校生の一人の女子生徒が男子生徒に話し掛けられている。



「君も可愛いし、可愛い子が揃ってるって話だもんなぁ~」

「すみません!失礼します!」



女子生徒は走り去る。




「あの!」



私の前に来ては他校生の女子生徒が道を塞ぐように呼び止めた。



「少し…お時間貰えますか?」

「えっ?私?」

「はい」

「えっと…女の子…」

「あの誤解しないで下さい!」


「えっ?」

「私、女の子好きとかじゃないので。何か誤解されてる感じだったので……」

「えっ? あ…いや余り可愛いから…ごめん……正直マジ驚いたかも」


「一先ず、何処か店に入ってゆっくり、お話がしたいです。時間の都合があるならそこで詳しくお話をします」


「別に問題はないけど…」

「ありがとうございます!」




私達は、とある店に移動した。





「それで話って何?」

「あの……私、榴介の幼なじみの、草賀辺 夕子(くさかべ ゆうこ)と言います」

「幼なじみ?」



≪そう言えば…言ってたっけ?≫



「それで……幼なじみがあなたが、どう言ったご用件で?」

「榴介の事、きちんと考えてあげて下さい!」

「えっ?」

「お願いします!榴介あなたの事、本気だし遊び感覚で付き合って貰うと困るんです!」


「いや…えっと…」


「ゆっくりで良いし、少しでも榴介の事をお願いします! ……榴介……あなたと付き合えた事は嬉しいみたいだけど……何処か……寂しそう……」




ズキン

申し訳なさから胸の奥が痛んだ。




「ごめんなさい。こんな事したくないし言いたくないけど……あんな榴介見たくないので……」

「……そう……だよね…幼なじみだし心配だよね……大丈夫!キチンと考えてるから!」

「良かったぁ~。それじゃ、榴介の事お願いします!」



笑顔を見せて彼女は言った。



「う、うん…でも……」

「でも……? 何ですか?」




表情が曇っていく。





「何かあったら……あなたが傍にいてあげて」

「えっ?」

「何もないとは思うけど、もしも彼に何かあったら……いつでも飛んで行けるあなたでいて」


「…裕唯さん…」

「お願い」

「分かりました。それでは失礼します」



彼女は帰って行った。




「幼なじみか……はあぁぁ~~」



大きい溜め息を吐く私。



「でっけー溜め息」




ビクッ

背後から声がし、振り返るとそこには見覚えのある顔。



「なっ!」



ガチャガチャン

席を立ち後ずさりをする私。



「一生分の溜め息吐いたんじゃねーの?」



イタズラっぽく笑う瑠惟。



「一生分って……そんな訳ないでしょう! つーか、どうしているの?」

「何、何? 男利用してんの?」

「利用って……人聞きの悪い!」



だけど似たような事をしてるかもしれない。

今、目の前にいるコイツのせいで……


でも、コイツは何も悪くはない。


私自身がコイツに好意をよせてしまった事で今を至っているのだから。



「じゃあ何? そう言えば前に言ってたよな~。お前の事だったんだ。変な質問するなぁ~って思っていたけど」


「そんな事、別に…正直に私がって言える訳ないじゃん!」

「完璧認めた!」

「う、うるさいなっ!」



「瑠惟?」


女の子が瑠惟の名前を呼んだ。



「あっ! 亜季」



ズキン

胸が痛む。



≪えっ!? 彼女?≫



「どうかした?」と彼女。


「店のお客さんがいたから」


「そうなんだ」



≪店のお客?私?≫



「あ、ど、どうも初めまして!」と、私。


「初めまして」と、彼女。



取り合えず、瑠惟の言った、お客として対応する。


間近でこうして見ると彼女は可愛い。




「俺の彼女の絋部 亜季(わたべ あき)さん。彼女が、お店のお客様で、藍葉 裕唯さん」

「お一人ですか?」

「あ、はい。一応さっき迄連れがいて、今から帰る所なんです」

「そうなんですね。一緒にお茶でもと思ったんだけど……」


「すみません。ありがとうございます。だけど私今から用事あって、ご一緒出来なくてすみません。それじゃ質問します」



私は足早にそこから去った。




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