第3話 メール
次の日。
「あーーっ! 裕唯っ! もう心配したじゃん!」
駆け寄る希誉花。
「おはよう」
「おはようって暢気に言わないの!」
「えっ?」
「メールしても携帯に掛けても全然返事来ないし、連絡つかないから誘拐されたって、すっごい心配したんだからねっ!」
「あっ! ごめんっ! 携帯、何処かに落としたみたいで、今、手元になくて」
「ええぇーーっ!」
「本当、ごめんっ!」
両手を合わせて謝った。
その日の放課後。
「ねえ、ねえ、超カッコイイ人が門の前にいるんだって!」
「マジ!?」
周囲が騒動する中、私は気にしつつも帰り始める。
「うっそ! マジ、イケてるんだけど」
「マジヤバイって!」
「他校生だよ」
そんな声が聞こえる中、門の所に群がる女子生徒を避けるように私は帰って行く。
「あっ! 悪い!」
騒がれていた男子生徒と思われる人が、人混みを掻き分けその場を去る。
「なあなあ」
「………………」
「おーーい」
「………………」
「なあなあ、今時の女子校生の割りには着信音ヤバくね?」
そう言うと曲が流れる。
聞き覚えのある曲に足を止める私。
バッ
振り返る私の前に一人の他校生の男子生徒。
手慣れた手付きで私の携帯であろうと思われる携帯を弄っている。
「あっ! ちょっとっ! それっ! 私の携帯っ!」
私は歩み寄り取り上げようとすると、ひょいっと交わされる。
「………………」
「おもしれーっ!初期設定のまんまじゃん! 最新曲ダウンロードしたら? 趣味悪っ! つーか、マジ同じ高校生とは思えない位、マジヤバなんだけど」
「放っておいてよっ! 人がどんなのしてようが関係ないじゃん! 人の携帯弄る方が、タチ悪いじゃん! 最低っ! 早く携帯返してっ!」
「ほらっ!」
私の携帯を投げる素振りを見せられキャッチしようと構えた。
「なーんて! 投げるか! バーカ」
ムカッ
「ムカつくっ!」
スッと私の手を掴み、携帯を手に平に優しく置いた。
ドキッ
胸が大きく跳ねる。
「じゃあ、返したから」
そう言うとイタズラっぽい笑顔を見せ男の子は帰って行った。
「もうっ! 何なの! マジムカつくんだけど!しかも、あの笑みには何かある気がしてならないんだけど……」
だけど、どうして彼が私の携帯を持っていたのだろう?
初対面のはずだし、そんな疑問を思う中
もし…………
携帯を拾う事があるなら
昨日の男の子?
私は彼の背中を見つめる
「………………」
「まさかね……」
だけど、これは始まりに過ぎず―――
♪~
『着信音、相変わらず?』
≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒
ある日、1通のメールが私の携帯に入ってきた。
「誰? 見慣れないんだけど……間違い?」
≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒
♪~
『初期設定状態?』
≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒
再びメールが入ってきた。
「えっ!? ま、まさか……」
嫌な予感がした。
≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒≒
♪~♪~
『誰ですか? まさか……この前の?』
♪~
『だとしたら? どうする?』
♪~♪~
『どうもこうも……信じらんない! 最低!』
♪~
『落とすあんたが悪いんじゃん!拾ってあげたんだから感謝してもらいたい所だけど』
♪~♪~
『最低、最悪』
♪~
『嫌だったら機種変したら?』
ムカつく中、成り行き任せで私は返信する。
彼も何だかんだ返してきてくれていた。
数週間後 ―――――
♪~
『相変わらずですか~? 機種変しないの?』
奴からメールだ。
♪~♪~
『面倒くさい。あんたの暇潰しになるでしょう?』
♪~
『じゃあ、イタメとイタ電してやるよ』
♪~♪~
『イタ……電? 電話番号も知ってんの?』
♪~
『知ってるけど?』
♪~♪~
『信じらんない! 絶対、変えてやる! イタ電とかイタメとかしたらマジ許さないからっ!』
俺は笑う。
コイツは絶対変えないなと確信していた。
性格的に俺と似てるし、後、面倒くさい事は避けたいタイプだ。
それからというもの、私達なメールのやり取りをするようになり、携帯は変える事はなかった。
だって
彼・岡元 瑠惟(おかもと るい)16歳。
マジムカつく奴だけど、他校生の同級生(彼・カレ)に何処か惹かれている自分がいた。
それから数か月が過ぎたある日の休日の事。
街にいた私は……
「あれ? アイツ…瑠惟じゃん。女といるし。何何? まさかアイツの彼女!?」
♪~♪~
『今、あんた見掛けた』
『隣の子は彼女!? あんた見掛けによらず彼女いたんだね? その性格で? 意外!』
『メール、消去しなよ。携帯見る奴は見るから』
『まあ、あんたじゃないから彼女さん見る事ないか』
その日の夜。
♪~
『ただいま』
♪~♪~
『おかえり』
♪~
『彼女可愛いだろう?』
『亜季っていうんだぜ』
♪~♪~
『のろけは聞きたくないし! 外泊しなかったんだというよりさせなかった? ヤる事ヤっちゃえば良かったじゃん!』
♪~
『既に A済みなんだよ』
♪~♪~
『あっそ!別に関係ないから、いちいち報告するな!』
♪~
『妬くな、妬くな』
♪~♪~
『妬いてないから』
♪~
『メール誤解されたらかなわないから、しばらく中止な』
♪~♪~
『しばらく所か、一生しないから』
『あんたと縁切れて嬉しいかも?』
♪~
『いやぁ~、俺も、お前みたいな性格悪女と、おさらば出来て嬉しいぜ』
♪~♪~
『お互い様だね』
私達は、しばらくメールのやり取りをし、この日を最後にメールをするのを辞めた。
「アイツとメール出来なくなるのも淋しいかも?学校も違うし…アイツん家美容院とか言ってたっけ?」
「………………」
「まあ、行く事はないだろうし一生会えないだろうなぁ~。つーか、何ブルー入ってんだろう?どうでも良いじゃん!別に!」
少しして ――――
♪~
『友達が勝手に撮った写真。特別やるよ』
ドキン
私は画面を見て何故か胸が高鳴る。
「アイツの……写真……」
♪~♪~
『写真ありがとうって……別に頼んでないんだけど!貰う理由が分からないんだけど?』
『ナルシスト?』
♪~
『違うし!』
私は笑う。
♪~
『じゃあな!裕唯。つーか、お前とは名前が、一字違うだけなんだな?』
『"ゆい" と "るい" 』
「本当だ……」
♪~
『何か不思議な感じだな。じゃあな』
クールだけど
何処か憎めない奴
チャラチャラしているようだけど
憎まれ口 叩く奴
私にとって彼の存在が
心の中に
大きく存在していた
メール越しとはいえ
ありのままの自分を
出す事が出来ていた
唯一の
相手だったから…………
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