第40話
真祖エルフの3人が身に着けている服装は、この世に生まれ出た時と、ほとんど変化していない。変わった所は、指輪や腕輪などの装飾品が増えたことくらいである。
実は彼女たちが身に着けている服と靴には、大半の者が羨ましいと思うほどの素晴らしい機能が備わっている。
機能の1つに、所有者のレベルに応じて性能が上昇するというものがある。つまり、所有者のレベルが上がれば上がるほど、勝手に服の防御力が上昇するし、元々備わっているステータスアップの補正効果も上昇する。
他にも、モンスターの素材や鉱物、鎧や服などの防具を吸収させることで、基礎値の最大2倍まで強化することが可能となっている。
また、魔石を嵌め込むことで魔石の魔力による攻撃力または防御力強化と、属性による攻撃力または防御力強化が可能である。
魔石を嵌め込む箇所は、レベルが上昇することで勝手に増える上に、魔石の着脱も容易であるのだ。
一般的な装備品であれば、作成時や後から魔石を取り付けても容易に取り換えなど出来ない。
これだけでもアインスたちの服と靴が優れているのがわかる。
現在は最大5箇所使用することが可能で、全て同じ属性の魔石を嵌め込むと、服の見た目が若干変化することが分かっている。勿論、魔石のランクにより上昇する能力は上下する。
さらに、所有者の魔力を使って自動修復する機能も付いている。場合によっては所有者が危険に陥ることも考えられるが、回復薬が潤沢に使用できる状況にある現在は杞憂である。
真祖エルフの3人は、階層主である黄玉蟹王を前にして未だに戦闘を開始していない。黄玉蟹王用にきっちりと装備を整えているからだ。
ツヴァイは、土の属性魔石(強)2個と風の属性魔石(強)2個、それと無の属性魔石(強)1個を嵌め込んだ。土と風は防御力に、無は攻撃力に割り振るツヴァイ。
それからドライ謹製の指輪を装備して、薫から貰った[身代わりのペンダント]を確認する。指輪の効果は、ステータス+10%上昇、与被害+10%、全被害軽減30%と高性能だ。ドライは何度も作成したのだが、薫にあげた品質以上のものは作れていない。
それが終わると、自身の背丈の2倍以上もある巨大なハンマーを取り出した。これで、ツヴァイの準備は整った。
因みに、魔石には数種類の属性がそんざいしており、同じ属性であってもその効果には差異がある。
ダンジョン探索サポートセンターが公開している情報だと、属性魔石は(弱)と(中)がある。
(弱)は、レベル40以下のモンスターの魔石に等しく付いている。例外はレベル39と40のボスモンスターで、稀に(中)が付いている事がある。
(中)はレベル41以上のモンスターの魔石に等しく付いている。
しかし、薫とその従魔はレベル80台のモンスターを狩っているので、レベル81以上のモンスターの魔石には(強)が付いているのを知っているし沢山保有している。
この情報は、如月家の者なら知っている事である。また、魔石には装備の価値により装着の可否が決まる。低レベルの装備品には、低レベルの魔石しか装着できないのだ。
それ故に、魔石の情報を公開しても大した意味はないのでしていない。
アインスは普段使っている火・水・風・土・無の属性魔石から、全て火の属性魔石(強)へと交換した。炎系の魔法で戦うことにしたので、5つの効果全てを攻撃力に注ぎ込んでいる。
その為、アインスの服の色は鮮やかな桃色へと変化し、血管を思わせる幾筋もの真っ赤な線が浮かび上がった。
活性化した火属性の魔力が線上を明滅しながら循環しているため、今のアインスは少し妖しい雰囲気を纏って見える。
ドライはと言えば、ドライ換算で3人分を庇えるくらいの浮遊する大きな盾を複数取り出した。
この盾はドライ謹製で、戦闘があまり得意ではないドライの欠点を補うために創り出された、攻防どちらも可能な半自立動作する盾である。
ドライは薫の元で沢山の斬新で新しい知識を色々な書物? から入手した事で、AIを活用をすることにした。
AIの活用と言っても、単に電子機械を使うのではない。ドライ自身が作り上げたAI(エニアシリーズ)を、魔石にデータごと刻み込み創り出した代物である。レベルの高い魔石であればあるほど、データを刻み込む余地がある為に、レベル86以上のモンスターから入手できる魔石を使用している。
因みに、レベル81~85から入手できる魔石は35万SP、レベル86~90から入手できる魔石は40万SPの価値がある。
35万や40万SPといっても、売買システムに魔石を売った場合の値段である為、実際に入手するには該当するレベルのモンスターを狩る必要がある。
だからもし、自分たちで対象のモンスターを斃せない者が(強)の魔石を欲する場合は、所有者との値段交渉が必要となり入手するために必要なSPは35万や40万では難しいだろう。
薫は魔石を他人に売る事はしていないので、(強)の魔石を購入できる者は存在しない。
ドライの大盾は、コアとなるAI魔石とその動力源である魔石を20個も搭載しており、外装には
その様な贅沢品を消耗品として活用するドライ。まさに作成者の特権とも言える。
この階層を突破するだけであれば、アインスとドライの従魔であるハイエルフだけで事足りる。
従魔となったハイエルフは、元のステータスとは比べ物にならない戦闘力を有し、従魔強化スキルの効果もあって2体いれば40階層でも問題なく突破できる。
しかしながら、出来る限り自分たちで攻略したいというツヴァイの強い希望により、真祖エルフの3人でバビロンタワーを踏破している最中である。
おまけの小八島は、戦闘に何ら寄与していないので問題ない。
「ようやく来たか、鈍足だな」
「そう言うな、ツヴァイ。奴らは全力で追ってきた挙句に此処で倒れるんだ」
「見届け人は八島様だけで十分ですからね」
ドライの言葉が終わると同時に、真祖エルフの3人を追いかけて来たモンスターたちは、圧倒的な暴力によって殲滅されたのであった。
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