閑話その10
元中学校教師の田中時生は、婚約者となった田上美奈子と一緒にお店を再開し始めた商店街で買い物をしていた。2人は共に、如月春人の通っていた中学校の元担任と元副担任である。
ひょんなことから孔老人と知り合い、新人族として生まれ変わってから、福福貿易の一員としてダンジョン活動を行うようになった。現在はダンジョン活動専門部門の福福団と改名され、部下10人を束ねる福福団7番隊隊長を任されていたりする。
福福団は、孔家内に設置された魔道具[寛ぎの温泉宿・小島]で暮らしている者が多い。田中と田上も小島で暮らしている。
その理由は、魔道具は共用なので、遠慮など不要で気軽に使用できること。また、優れた安全性に加え食費や水道光熱費も掛からないからだ。タワー系も水道光熱費は掛からないが、快適に暮らすためには魔石が必要となる。しかし、魔道具たる小島には魔石も不要であるのだ。
小島内では、ハイキングにキャンプ、山菜採りに潮干狩りに海水浴など色々と楽しめる。中でも数種類の温泉が楽しめるのだから、住まないわけがない。中には、食事と温泉だけ利用して貧民タワーDXで暮らす者もいたりする。
改装タワーが設置され中学校が新設されたことで、再び教諭として働けるようになったが、田中は元より田上も復職する気持ちは
教育者を謳いながらその内実は、教育者として誇れる思想や実践とは大きくかけ離れた上司や先輩教諭たちに愛想が尽きたことに加え、自分たちがその一員になろうとしていたことに気が付いたからだ。
ダンジョン活動を行うことで、地域への貢献が出来ている充足感と、自分の担当していた生徒のほとんどが新人族として活動している事が大きい。中学教諭という職に未練など1nもなくなった今、教育はモンスターと戦えない者に任せる事にした。福福団には信頼できる上司や仲間たちがいるのだから。
元新生琉球王国King金城雄輔と、元吉備領主の雨宮ゆかりは、降伏したのち東京で総理らと面会した。金城は自分と同じ職業の総理に驚いていた。
2人の能力は地域の安定に寄与するものなので、騒乱罪適応を特別に見送る措置がなされた。当時は政府の力が及ばなかった事は事実であり、配下や仲間となっていた者たちも、悪行を行っていたわけではなかったことも判断される材料となった。
金城と雨宮は2度と反乱を起こさない事を誓い、書面にもサインした。サインしたのは魔道具である[魂の契約書]である。
2人はそれぞれの地元に戻り、ダンジョン探索サポートセンター所長として勤務する事になった。
職員は国から派遣されることになっている。だが慢性的な人手不足であるためその人数は少なく十分とは言えない。そのため所長権限で職員を採用しても構わないことになっている。
2人には仲間であり部下である存在が多数いるので、職員不足を補うことなど造作もない事であった。
探索者として活動を始めた五十嵐真守は、今では芋煮会のクランマスターである。また芋煮会味噌豚のパーティーメンバーである長岡美鈴(ナガオカ ミスズ)と結婚をした。
ダンジョンという非日常が常態化した現在、やれる事は出来る時にすると考えを変えた結果である。何時かやまた今度や○○になったらとか避けていた事を止めただけである。
芋煮会牛肉醤油味のリーダーであり芋煮会のサブマスである奥山裕二は、OGでもあり同パーティーの未亡人である立花夏穂に、一周忌が終わったら結婚してほしいと告白した。こちらは、一周忌が終わってからの返事待ちである。
現在の芋煮会は、探索者としては100名を超える大手クランとしてそれなりに名声を獲得している。構成員は主に同県出身者がその多くを占めているけれど、安全第一の方針と人情に篤いことで他県からも加入申請しにやって来る者たちが多く、メンバーは増え続けている。
芋煮会が行っている安全第一とは、ダンジョン活動中の動画を元にしたモンスターのデータベース化、立ち回り方や罠の見分け方と解除といった研究、パーティーだけでなく戦闘・補助・生産職ごとのディスカッションを通してクランメンバーの交流を促進し、パーティー間の連携強化等だ。
これにより、ダンジョン内での事故が大幅に減少しパーティーが壊滅する事例はゼロとなっている。また、地域の草刈りなどの景観整備といった奉仕活動を行っている。
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