第120話
見た目は巨大なパンダである 混沌に至る可能性を秘めた熊王 を相手にする事になった一同。ハイエルフのヴァージニアからバフをてんこ盛りにしてもらったことと、薫から格安で購入させられた装備品の影響もあって全く勝てない相手ではなくなった。
俊樹以外のメンバーが身に着けている装備は、彼らのレベル帯では売買システムで購入できる最高装備に、ドライが魔石コーティングや魔石の装着など改良を加えた逸品である。
素のステータスでは150倍を優に超える差があるボス相手でも、高性能装備に高性能バフ、しかも多対一なのだ。
春人の場合は、素のステータスだけで対象を上回っているので油断さえしなければ全く問題ない状況である。
ボス戦開始から30分。
HPが残りわずかになった元混沌に至る可能性を秘めた熊王、現在は孤立した猛毒熊王と表示されるだけになったカズたちが戦っているボスモンスターのパンダ。
春人が光の熊王と闇の熊王の2体を斃したことで、なぜかパンダが弱体化してしまい名前も変わってしまった。
そのパンダはカズたちを轢き潰さんと、ゴロゴロではなくゴーゴーと音を立てて狂ったように縦回転しながら縦横無尽に動き回る。しかも、パンダが通ったあとには毒液がシューシューと泡立ち煙を上げている。その煙は消えることなく、地面を多い薄い靄を作り上げている。
カズたちは全員が全状態異常耐性を持っているものの、猛毒の為に継続ダメージ状態となってしまっている。
弱体化したとはいえ、パンダは格上も格上で強敵であることを証明している。それ故に、誰一人油断する者はいない。
しかし、このままでは相手がどんどん有利になっていくことに皆気付いている。
「くそっ、あと少しだってのに。このままじゃ俺たちがやばいぞ。どうするんだよ勇気ぃ」
空間収納にあるHPMP回復薬のストックが残り少なくなってきたジョウが苛立ちを隠さず声を上げる。戦闘中に売買システムで購入できる隙を見逃してくれるような相手ではない為、焦りと苛立ちが徐々にストレスとなってきているのだ。
これはジョウに限ったことではない。レベル40の熊が現れた時点で全員が回復薬のストックを増やしていたのだが、パンダが予想以上に強敵過ぎたからである。
指揮官たる勇気は、自分の足元に清浄を使用した。すると、毒の靄が消失した。しかし、毒の靄はそこら中から発生し漂っているので、直ぐに覆われてしまう。だが勇気には清浄の効果が確認できた事で作戦が決まった。
「みんな、僕の周りに清浄を使って安全地帯を作って。トシは死ぬ気で今すぐそのパンダを止めろ」
全員が勇気の意図を訊くことなく素直に従う。すぐに勇気の周囲1mほどの毒が消失した。
――僕が絶対に止める。鋼の意思、強制引き寄せ、巌の構え。
俊樹は恐怖を跳ね除け、己のスキルとアーツを発動しパンダに挑む。勇気は全員に指示を出して自分も即座に行動に移った。
――トシ1人じゃ無理。僕の見せ場だね、ダメージ共有、瞬間超回復!
回転していたパンダは突如進行方向を変え、轟音を立てて俊樹へと衝突した。俊樹はその場から1歩も引くことなく、巨大なパンダを受け止めていた。しかし、衝突によるダメージと猛毒によるダメージで、俊樹のHPは今にも尽きそうになっている。そこへ藍の回復魔法が届き、俊樹は自分でHPMP回復薬を使用した。
勇気もふらつきながら自分でHPMP回復薬を使用した。
動きを止められたパンダは、再度回転すべく身を丸めようとしたところを、穣と誠の2人から攻撃を受けた。
――強撃、吹き飛ばし、強撃強撃だー。
――うらぁ強撃強撃2連撃3連撃ぃー。
俊樹の前にいたパンダは、穣により頭部を強かに打ち据えられ脳震盪を起こした。そこから吹き飛ばされ攻撃を受ける事になった。吹き飛んだ先には誠が待機しており、無防備になったパンダはさらに攻撃を受ける事になった。
――乱れ突き、大車輪からのぉ、打ち上げっ!
穣と誠の連携攻撃が終わるタイミングで、大輔がスキルとアーツを発動させる。大輔の操る槍は、残像を残すほどの速さでパンダを攻撃する。
――ナイスだ大輔。喰らえ、百昇竜!!
大輔により空高く打ち上げられたパンダへと、智一のアーツが炸裂した。智一の弓から放たれた矢の一つ一つが龍となり、パンダを下から貫きながら更に上空へと運んでいく。
――ホーリークロス。
巨大な十字架が現れ、上空で身動きの取れないパンダを地面へと串刺しにした。藍にできる最大威力の攻撃魔法である。
しかし、それでもパンダのHPはまだ残っている。パンダは己を地面に縫い止めている十字架を破壊しようと、物凄い咆哮を上げて殴りつけている。
――これで
しおりの手にする剣は赤い光を纏い、元の5倍ほどの長さになり大きく見える。剣に込められた膨大な力が巻き起こす風により、髪も身に着けた衣装もなびいている。
パンダが魔法の十字架を破壊し終えた直後、しおりの無慈悲な攻撃がパンダを両断した。
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