第25話
4人は、薫に注目している。薫の声の大きさに驚いたからだ。どうやら、レベルアップするのは、声の大きさも対象のようである。
当然、声を出した張本人である薫自身も驚いていたりする。
「えーっと、ごめん。ここまで大きな声が出せたなんて、僕もびっくりしてる」
薫は素直にみんなに謝った。幸い、赤ん坊の泣き声は聞こえないので、みんながホッとしている。
「さっき現れて光って消えた箱は、迷宮核の宝箱(小)と言って、ダンジョンコアを討伐するとドロップするものなんだ。今のところ、マナコイン(小)ってのとセットでドロップしてる感じだね。こっちがそのマナコインね」
薫は話しながら、マナコイン(小)を取り出しテーブルの上に置く。空間収納スキルを知らなければ、薫が手品を使ったと思うだろう。生憎と、この場にそんな考えを持つ者は存在しなかったが。
4人の視線は、テーブル上のマナコイン(小)に注がれている。神秘的な七色に煌くコインは、自然とみんなを魅了しているようだ。
「鑑定出来たかな? それは41枚所持してるから1人に8枚ずつ配るよ。使い方は任せる。余り1枚は僕が貰うけどね」
「おぉー。兄貴気前がいいな。遠慮なく頂くぜ」
「済まん薫。だが、こりゃ良い物だ」
「ありがとう、薫。母さんも遠慮なく使わせて貰うわよ」
「ありがとう、薫君。私にも出来る事があったら言ってね」
「全然、気にしなくていいよ。僕には強い従魔がいるからね。みんなも従魔を持ってた方が良いと思うよ」
ちなみに、僕の従魔はこんなだよ。
タマ(0)
【種族】 猫人族
【Lv】 20
【職業】 仙狸ランク3
【状態】 健康
・HP 7839/7839
・MP 8655/8655
・腕力 2717
・頑丈 2090
・器用 1985
・俊敏 4232
・賢力 4232
・精神力 2717
・運 3408
【スキル】
・爪術レベル3 ・猫パンチレベル3
・仙術レベル3 ・変化レベル3
・招き猫レベル3 ・猫足レベル3
・猫キックレベル1 ・くじ引きレベル1
【固有スキル】
・仙力解放レベル3
・九美陽炎レベル1
「もうさ、僕よりも圧倒的に強いんだよ」
そういって、薫はタマのステータスを公開した。レベル10の時よりも圧倒的に強化されていた。全てが4ケタと桁違いの強さである。
これを見て春人が騒ぎ出した。
「俺まだ従魔購入してないのにぃ。ずりぃぞ兄貴」
「知らんがな。購入してない春人が悪い」
「ほお~、これはステータスが高いな。ふむ、父さんも保険で購入するかな?」
「あら、あなたも? やっぱりスペアを考えて2・3体は要るわよね」
「よし、父さんは壁役と魔攻と探索サポにする」
「じゃあ、母さんは回避盾と物攻と魔サポにするわね」
「お二人とも3体ですか? それじゃあ、私も薫君と同じ従魔を購入します」
「好きな従魔で良いと思うよ。事前に魔物調教スキルを習得するか、魔道具の[従魔の鈴]か[隷属の戒め]を購入してないと、従魔を購入しても意味がないからね」
薫は、親切に従魔購入のアドバイスをする。
「【預り】を使うと、従魔を預けておくこともできるし、取り出す事もできるよ。1体、180日で3000SP掛かるけど。SPが大事なら、従魔召喚スキルを習得すればいいよ」
薫の言葉を参考にしながら、スキル習得や従魔の購入をする4人。
薫は、テーブル上に迷宮核の宝箱(小)4個を手で触れずに置いた。
薫は、迷宮核の宝箱(小)の説明も始めた。優しさは皆無である。
「こっちが迷宮核の宝箱(小)だね。触ると勝手に開いちゃうから、手に入れるときは事前に話し合って順番を決めておく方がいいよ。こっちは、開けてみるまで何が入っているか分らないから、楽しみもあるね。物欲センサーが発動すると、大変になるんだろうけど」
「兄貴、そっちは分けてくれねえのかよ?」
「全部開ける。欲しい物があれば話し合い。不用品は、売却か保管ってところかな」
「よっしゃ」
「このおやつは、僕の従魔に使うからやらないぞ」
「俺はそんなの要らないっての。出たら兄貴にあげるよ」
「そっか、魔物使いの春人には不要……なのか?」
みんなが従魔を購入し終わり、迷宮核の宝箱(小)を開封していく。
5つ目6つ目になると、光の演出が鬱陶しく感じてきた薫である。
しかし、16個目の開封で変化が起きた。迷宮核の宝箱(小)から立ち昇る光が銀色だったのだ。
出現した物は、[迷宮移動の宝珠]という、テニスボール大の白く半透明な玉。
見た目と違ってとても軽く、見た目通り滑らかな触り心地の宝玉だった。
効果は、1度訪れた迷宮の階層を記憶でき、記憶した階層から探索をする事が可能な魔道具であった。
最大10か所記憶することが可能で、新しく追加する場合は、選択して消去できる仕様となっている。なお、攻略されたダンジョンの記憶は、自動的に消去されるらしい。ダンジョンコアがなくなれば、そのダンジョンも消えるのだから当然である。
その後も迷宮核の宝箱(小)を開けていると、今度は
新たに出現した物は、[安らぎのコテージ]という、8cm角のミニチュア模型だった。
効果は、ミニチュアと同じ広さがあれば、どこにでも設置可能で、最大10人が中で暮らせる魔道具であった。
使用者と許可を受けた者以外には、視認も知覚も出来ず、使用者の許可なき者は入れない仕様だ。
ダンジョン化しないのか? と、気になる所ではあるが、確認のしようがない。
話し合った結果、念のため迷宮化防止結界(小)を設置することで決着した。
[安らぎのコテージ]は、10畳ほどの部屋が10個と、大ホール・リビング・ダイニング・キッチンにトイレが2ヶ所と、大浴場が1つ付いていた。如月一家の家よりも広くて豪華だった。中に物を置いておくことも出来る。これはもう、コテージとは呼べないのではなかろうか。
「これで家も不要になったな」と、春人が余計な一言をいって、両親に締められていた。薫は、春人の意見にほぼ賛成であったが、言葉にするような事はしなかった。春人が先に口に出したことで、説教を回避できた薫であった。
[安らぎのコテージ]は、パーティーで行動する両親へ所持して貰うことにした。
他に出たもので実用的なものは、各種ステータスアップの装飾品や薬類や便利アイテムで、売買システムで購入できる物がほとんどであった。
従魔のおやつも、100SP~500SPで売っていた。
薫が喜んだのは、言うまでもない。
しかし、やはり期待を裏切らない薫であった。
従魔のタマが所持している招き猫スキルを完全に失念していた薫は、従魔のおやつを与えている時に、ようやく自身の失敗に気付いたのだ。
もちろん、薫が悔し涙で枕を濡らすなんてことはなった。失敗した事、次回に生かす事を、しっかりメモに残したのである。
なお、家族と春香に、この件を報告する事はなかった。みんなも気付かなかったので同罪だと思う薫であった。
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