第21話

 自宅に戻ってからの話し合いで、致命的なミスに気がついた薫たち。


 薫を除いて、誰も索敵系のスキルを所持していなかった。

 両親も実践をせずにレベルアップしていたために、肝心の索敵スキルを失念していた。

 おそらく、家族で行動すると思っていたので、敢えて取らなかった可能性もある。

 春人は、従魔の能力を期待しているのかも知れない。

 春香は、そもそもゲーム自体をしていないので、そっちの知識がかなり乏しい。

 ならばなぜ、鑑定スキルをみんなが習得しているのかは、謎である。

 春香は、みんなのマネをしているだけである。



「やっぱり、みんなで行動した方が良いと思うわ。ね?」

「そうだな。単独行動より、安全だろう。春人もそう思うだろ?」

「さんせー」


 薫を除いた3人が春香をちらりと見る。


「わ、わたしも賛成です」

「そうよね。はるかさんもこう言ってるし」

「みんな大量にSPがあるんだから、傭兵でも使えば良いと思うよ。そもそも、安全が良いなら家から出なくても、僕なら近くのダンジョンコアを討伐できるし」


 薫の発言に、ダンジョンを実際に体験したい両親と、ダンジョンでモンスターをテイムしたい春人は、薫のチート級の能力を思い出しショックを受ける。

 確かに、薫には遠距離から対象を攻撃できるチート級のスキルがあるのだ。薫のスキルを実際に目にしたことはないが、そのスキルのおかげでダンジョンコアも討伐できているし、レベルアップと大量のSPを入手できているのだから。


「はるかさんも、それなりにレベルもSPもスキルもあるから、元の生活よりも楽に暮らせるはずだ。僕の情報は秘密にしてね。SNSだと、自称能力者がパーティーの募集とかも始めたようだし」

「自称能力者って?」


 春人がショックから復帰して、薫の情報に興味を持ったようだ。


「なんか自称勇者パーティーってのがあるらしく、それを真似して色々な能力者が募集し始めているんだ」

「兄貴、勇者の職業もあったのか?」

「確かにあった。本人が勇者の職業かなんて分からないけど。大抵感染した人間って、個人よりも家族とか近しい者が多いから、募集してるのはソロとか2人組とかみたいだ。春人の場合は、従魔さえそろえばソロ向きの職業だしな」

「やっぱ、そう? うーん、2・3体購入しちゃうか~」

「今だけ9割引きなんだから、1体くらいは購入すれば? 僕は27万SP以上使ったけど、僕のは強い従魔だと思ってる。割引期間がなくなれば、日本円に換算すると2億7千万円くらいだからさ」

「おー、すげー金額。兄貴はあれだな、億り人ってやつだよな。でもなぁ、うーん、悩むー」

「億り人違うし。そういえば、パーティーの上限人数を確認してなかったか。あと、報酬の減額があるかどうかも」


 薫と春人が話していると、ようやく両親が復活したようだ。


「それは確かめたいな。従魔もパーティーに入るのか、そこから検証してみるか。薫の従魔とやらをパーティーに入れてみろ」

「大事なことよね。経験値は表示されないから、確かめられないけど、報酬は確かめられるから」

「そうだね。従魔がパーティー人数に換算されるかどうか。【預り】から出してと」


 薫は、3体を自分の側に出現させた。【預り】から出す時は、場所を指定できるようだ。範囲は、自身から半径2m以内のようだ。


「それが兄貴の趣味なのか」

「「「……」」」

「衣装はそれぞれが選んだんだよ。購入時は下着姿だったから。ちなみに、1体あたり1万SPの予算内で選ばせたんだけど」


 春人以外は、コメントを控えたようだ。

 生暖かい目を向けられながらも、皆にタマたちを軽く紹介した薫であった。

 薫も第三者の視点で今のタマたちの姿を見れば、契約者が従魔たちへ己の嗜好に合った格好をさせていると思い至る。それでも、薫には1nもダメージはないのであった。


 薫は従魔をパーティーに入れた。薫のステータスの横に従魔のHPMPバーが表示がされた。どうやら、従魔と人は別で表示されるようだ。


「パーティーに入れる事は出来たけど、表示が変なんだよね。みんなはどんな感じ?」

「父さんの方は、何も変化がないぞ」

「母さんもよ。今まで通り5人しか表示されてないわ」

「俺も一緒」

「同じく私も変化なしです」

「そうなんだ。従魔は別枠って考えた方が良さそうだね。僕の従魔の鑑定は出来る?」


 薫の問い掛けに、全員が首を横に振った。どうやら、鑑定出来なかったようだ。


 薫の持つ、情報偽装レベル2が従魔に影響している可能性は消えた。鑑定スキルはみんなレベルMAXなので、他人の従魔は鑑定不能と思って良いようだ。

 これは貴重な情報である。他者に自分の従魔の情報を知られる事がないのはメリットであるが、他者の従魔の情報を得られないのはデメリットとなる事もあるだろうし、一長一短と言える。


 薫から他者を如何どうこうする気は特にないが、世の中変な奴は何処にでもいるもので、こちらに非がなくてもトラブルに遭うことは珍しくないのだ。

 例を上げれば、今日の春香のように人目も憚らず襲われるようなことだ。

 直接ダンジョンへ行く気もなく、他人に従魔を見せたいとも思っていない薫にとっては、心配するだけ無駄と言える。


 従魔がパーティーメンバーとは別枠だと知ることは出来たが、これでパーティー人数の上限数を確認できなくなった。何せ他に能力者の知り合いなど、この場の誰も居ないのだから。


 つぎは、この状態で報酬に変化があるかどうかを確かめることにした。

 ダンジョンコアを1個討伐することで、スキルポイント50Pと100,000SPをパーティーメンバーそれぞれが貰える。

 春香が加入しても、報酬が減額される様な事はなかった。従魔が加わった今、変化するかどうかを知ることは、全員にとって大切なことである。


「報酬に変化があるかどうかを確かめるから、今からダンジョンコアを1個討伐するよ」

「わかった」

「いいわよ」

「おーけー」

「いつでもどうぞ」


 全員の了承を得て、薫はダンジョンコアを破壊した。きちんと事前に説明し、承諾を得た薫は、学習する子なのである。2度もらかしている薫、3度目は不味いことを理解しているようである。


 薫を除いた4人のレベルが1上がった。

 従魔3体のレベルが10まで上がった。

 薫の画面では報酬の減額は見られない。

 みんなにも確認して、報酬の減額がない事を確認できた。このことは、今後の活動において貴重な成果と言えるだろう。



   タマ(0)


 【種族】 猫人族

 【Lv】 10 new

 【職業】 仙狸ランク2 new

 【状態】 健康

 ・HP  570/570 new

 ・MP  629/629 new

 ・腕力  198 new

 ・頑丈  153 new

 ・器用  146 new

 ・俊敏  308 new

 ・賢力  308 new

 ・精神力 198 new

 ・運   249 new


 【スキル】

 ・爪術レベル2 new

 ・猫パンチレベル2 new

 ・仙術レベル2 new

 ・変化レベル2 new

 ・招き猫レベル2 new

 ・猫足レベル2 new


 【固有スキル】

 ・仙力解放レベル2 new




   サクラ(0)


 【種族】 鬼神族

 【Lv】 10 new

 【職業】 羅刹天ランク2 new

 【状態】 健康

 ・HP  683/683 new

 ・MP  520/520 new

 ・腕力  334 new

 ・頑丈  308 new

 ・器用  146 new

 ・俊敏  198 new

 ・賢力  175 new

 ・精神力 198 new

 ・運   198 new


 【スキル】

 ・剣術レベル2 new

 ・槍術レベル2 new

 ・全身強化レベル2 new

 ・霊弾レベル2 new

 ・聖気レベル2 new

 ・霊感レベル2 new


 【固有スキル】

 ・神力解放レベル2 new




   リリス(0)


 【種族】 淫魔族

 【Lv】 10 new

 【職業】 上級淫魔ランク2 new

 【状態】 健康

 ・HP  520/520 new

 ・MP  666/666 new

 ・腕力  198 new

 ・頑丈  198 new

 ・器用  198 new

 ・俊敏  198 new

 ・賢力  308 new

 ・精神力 257 new

 ・運   198 new


 【スキル】

 ・格闘術レベル2 new

 ・火魔法レベル2 new

 ・水魔法レベル2 new

 ・風魔法レベル2 new

 ・闇魔法レベル2 new

 ・吸生レベル2 new

 ・吸魔レベル2 new

 ・飛行レベル2 new



 【固有スキル】

 ・幻影術レベル2 new




 従魔たちは、いずれも強力に育っているようだ。

 人間というか、新人族と比べると、ステータスの上昇値が別次元である。

 大量のSPを消費した甲斐があったというものだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る