第22話
確認することがなくなってしまった5人。
そんな時、赤ん坊の泣き声が聞こえた。
美玖に「こっちは気にしなくてもいいから、いってらっしゃい。ほら、急いで急いで」と、急かされた春香は早足で部屋へと向かった。
残された如月一家4人の中で、最初に沈黙を破ったのは薫だった。
「父さんと母さんに聞きたい事があるんだけど、良いかな?」
「どんどん聞け。答えられる事なら答えるから」
「なにかしら?」
「今をゲームだと仮定した場合、どんなスキルを持ってる方がいいのかな? それか、ゲームをプレイしてる時、どんなスキルに気を付けてたの?」
薫の質問に、両親は考える素振りも見せず語りだした。
「父さんのキャラクターが所持していたスキルは、色々な状態異常を引き起こすスキルや魔法だな」
「そうね。母さんが回復魔法と、状態異常を防ぐ薬なんかのアイテムを作成していたわ。それと、効果を持った装備や装飾品集めね」
「アイテムは今のところ購入できるし、自作は保留にしとこうかな。状態異常だと、毒とか眠りとか?」
「その辺りは、まあ基本だな。麻痺・盲目・沈黙・石化・即死とか。あと、そうだな。全能力減少の呪とかもあったな」
「対抗策で、耐性持ちが増えたのよね。だから、スキルの効果が反転する罠なんかをいっぱい作ったわね」
「耐性か。……よし、それを先に全部取ろう」
薫は、両親の話を聞いて閃いた様だ。
否、自身が睡眠導入剤にとても弱い事を思い出したのである。
命が大事な薫は、安全性向上に繋がるものを習得する事にした。
春人は、「親父たちって、対人戦がメインだったのか?」と、呆れている。
「地図スキル・用心スキル・探索スキル・罠解除スキル・各種耐性系スキルは、習得していれば格段に安全度は向上する。母さんと俺で地図スキル・用心スキル・探索スキル・罠解除スキルを半々で覚えないか?」
「あら、あなた。そこは、春人もはるかさんも一緒なんだから、4人で1つずつで良いんじゃない?」
「えー、俺も入るの?」
「当然じゃない。中学生なんだから、単独行動はだめよ」
「それなら兄貴だって」
「僕の従魔は滅茶苦茶強いから心配無用だ。ほら、Lv10で、これだけのステータスがある」
薫は、家族に見えるようにスマホを見せる。スマホには、薫の従魔たちのステータスが表示されていた。
「何だよこれ。兄貴の従魔って、鬼強なんですけど~?」
「これは……」
「あらあら、本当に能力値が高いわねー」
「そりゃ、本来は1体900,000SP近い値段だからね。高性能じゃなきゃ困るよ。割り引きじゃなかったら、1体も購入できない価格だし」
「決めた。俺も購入する。強そうなのを選ばなきゃ」
春人は、ようやく従魔を購入する気になったようだ。
「僕は耐性系のスキルを取るために、ダンジョンコア狩りをするから。あっ、5人揃ってからね。そういえばさ、一番最初に倒したモンスターが【アーツ】ってのを持ってたんだけど」
「アーツ? 武技のことか?」
「響き的に、武器系統の必殺技っぽいわね」
「多分そうかも。槍術スキルを持ってたし、突く感じの名前だった気がする」
「なるほどな」
父親は、にやりと口角をあげた。
「おそらく、実際に武器を使用しなければ、習得出来ないものだろう。俺たちは、一度も実戦を経験していないからな」
「庭で得物を振り回すわけにもいかないしね~。やっぱり、ダンジョンに行くしかないわよね」
「まあ、そこは好きにしなよ。危険を犯さなくても暮らしていけそうなのに」
「薫は間違っちゃいないぞ。ただな、父さん達はこの能力を使いたいんだ」
「ええ、そうなのよ。血が滾るのよ」
「春人とはるかさんの安全を優先してくれれば良いよ。僕が赤ん坊を育てる事態になったら、まず無理だから」
「「当然、善処する(わ)」」
両親の答えに、溜息しか出ない薫であった。
両親は実は戦闘マニアだと分ってしまった。バトルジャンキーではないだけマシだろう。
しかし、薫の従魔が【アーツ】を覚えていないことのヒントは手に入れる事が出来たので、薫にとっての収穫は大きかった。
薫も、自らがダンジョンに入る事を一考した。
薫は、空間拡張スキルと空間収縮スキルの改造をする事にした。
なお、スキル改造スキルはやっぱり改造できなかった。
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