第3話

 がっくりと肩を落とし、最初のステータス画面に戻った薫は、内容が変化している事に気が付いた。



   キサラギ・カオル(15)


 【種族】 新人族

 【LV】 1 new

 【職業】 現創師ランク1 new

 【状態】 健康

 ・HP  100/100 new

 ・MP  100/100 new

 ・腕力  50 new

 ・頑丈  50 new

 ・器用  50 new

 ・俊敏  50 new

 ・賢力  50 new

 ・精神力 50 new

 ・運   50 new


 【スキル】

 ・空間拡張レベル1 new

 ・空間収縮レベル1 new


 【固有スキル】

 ・スキル改造レベル1 new


 【EXスキル】

 ・究極空間収納(∞) new


 【称号】

 ・生還者


 【所有スキルポイント】 100P new



「なんだこりゃ? ああ、職業に就いた事によるボーナスってことか」


 職業が未知なる卵から、現創師ランク1へと変化しているのだ。それだけではなく、HPやMPなどの数値が5倍に上昇しているのだ。

 さらに、【スキル】【固有スキル】【EXスキル】といった項目が増えているのだから、驚くのも無理はない。


「まじかーーーっ!? 究極って響きがやっべー。当たり職だったのかよ。ん? でも何で、所有スキルポイントが100Pとかに増えてるんだろう?」


 スキルの効果云々よりも、別のところに興味を持った薫。気が多い、このままでは将来、女性関係で失敗しそうだ。


 薫がステータス画面をよくよく見れば、画面下部に”祝! 世界初の職業取得者に、究極空間収納(∞)とスキルポイント90Pをプレゼント”と、表示されているのを見つけた。


「プレゼントって、ゲームのノリだよな。究極空間収納(∞)とか、盛り過ぎだろう。……職業ボーナスであってたのは、まあね。でもな、90とか微妙な数値かよ。そこは、100Pくれてもよくね? まあ、貰っとくけど。100Pあるから、レベルアップで10P入手って事だろうな」


 文句を言いつつも、使えるものは使う主義の薫である。


「しかし、何て読むんだよ、僕の職業。こういうのは、ちゃんとルビを振っておくもんだろうが」


 薫には、システムに対する不満が、まだまだ有るようだ。

 薫は、ステータス画面を見て、他にも変化があるのを見つけた。


「売買システム? 職業を得たら、画面が微妙に変化してるんだな」


 画面操作に慣れたらしい薫は、【売買システム】をクリックする。


 【買う】と【売る】と【競売買】と【交換】と【預り】の、5項目が表示された。


 まずは、【買う】をクリックしてみる薫である。


 またもや画面が切り替わり、【武器】【防具】【魔道具】【薬類】【素材】【雑貨】【食品】【従魔】【傭兵】【建物】【乗り物】と、検索ウィンドウがある。

 そして、中央に赤文字で”祝! 世界初の売買システムを開いたあなたに、100,000SPをプレゼント!”と、表示された。


 クリックすると表示が消え、画面右上に残高という表示が2つあった。1つは、ショッピングポイント。もう1つは、現金ポイントと表示されている。

 現金の方は、現在0CPとなっており、ショッピングポイントの方は、100,000SPとなっている。


 そのすぐ下には、【入金】【出金】【両替】がある。


「入金とか出金って、どうやるんだ?」


 言葉にしながらも、薫は【入金】をクリックした。


 ”空間収納内には、金銭が確認できません”と表示された。


 しかし、現在の薫には、生憎と現金の持ち合わせがない。当然である。伝染性のため隔離入院し、峠を越え快復はしたものの、現在も経過観察のため個室に入れられ、なるべく人との接触を減らされている状況では、現金を持っていても仕方がないのである。


 その時、薫はひらめいた。

 スマホを中に入れたら、電子マネーを入金出来たりできないかと。

 思い立った薫であったが、「空間収納ってどうやって(使えば良いんだ)」と、言葉にする途中で、左手で触れていた毛布が消えた。


「!? なっ……毛布が消えたぞ」


 少々混乱した薫であるが、空間収納に入ったのではと考えが至る。


「声に出さないと発動しないのは面倒だな。思考だけで、出し入れ出来たりしないかな」


 薫は、声に出さず空間収納と念じてみた。

 すると、頭の中に空間収納の内容物が確認できた。

 そのまま、取り出すイメージをすると、折り畳まれた毛布が左手の下にあった。


「なるほど。コツは掴んだ。……僕って物凄い能力を手に入れてしまったようだ。夢じゃないよな?」


 ここまででも、十分に現実離れしているのだが、リアルに物が出し入れ出来た事で、さすがににぶい薫も、これは夢ではないだろうかと思ったようだ。


 おもむろに、自分の頬を両手でギュッと摘んだ薫は、痛みに声を上げた。


「いたっ! おーいてぇ。夢じゃねえ」


 現実だと再確認した薫は、己の手に入れた能力に怯え。


 そのような事は一切なかった。


「うはっ、勝ち組確定だ。マジシャンにでもなるか? 海外旅行するだけで個人売買でぼろ儲けできそうだわ。あ~~、でも今だと海外に行けないしな。これ、銀行とか襲えたりしないのか?」


 妄想で強盗でも始めそうな薫。急に強大な力を手にした子供と大人の挟間にいる少年は、悪に走りたがるようだ。


「この能力は、離れたものも収納出来るのか?」


 気になった薫は、ベッドの横にある台の上で充電しているスマホを収納しようとイメージした。結果は、触らなくても収納する事ができた。


 気になるのは、収納可能な距離である。50メートルとか100メートルとか離れた位置で出し入れ出来るのならば、正に銀行強盗での完全犯罪も可能である。


「そこは、後で考えるか。今は、収納内にあるスマホの電子マネーが、入金出来るかどうかだな」


 どうやら薫、空間収納の性能次第では、銀行強盗をやる可能性もありそうだ。

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