第5話 無邪気で憎めないあなたに
「世吏ちゃん」
「何?」
ある日のお昼時の時間。
「恋ってドキドキしたり、ドキッとしたりするのが恋?」
「うん。後、泣いたり笑ったり嬉しいって思ったり…恋してると喜怒哀楽のコントロールが忙しくなるかなぁ~」
「そっか……」
「でも、美冬の場合は、まず、ドキッとしたりドキドキしたりしなきゃ。でも、急にどうしたの?」
「ううん、聞いてみただけ」
「そう?」
その直後だ。
「美味しそうな卵焼き」
「えっ?」
私の弁当箱から卵焼きが宙に浮いた。
「はい、アーン」
そう言われ口を素直に開ける私の口に卵焼きが半分位入ると、残り半分は別の口に入ってしまう。
目で追う視線の先には。
「わ、渡辺君っ!?」
そこには、無邪気な笑顔で私の卵焼きを食べたと思われるご満悦の渡辺君姿。
「卵焼き…」
「うん! 半分こ♪」
「半分こって……」
「えーっ! 良いじゃん!」
ちょっとイジケ気味の渡辺君が可愛いと思えてしまう私の心。
こんなやり取りを不思議と嬉しいと思ってしまう
「麻那斗~ちょっと来いよーー」
「何?」
渡辺君はクラスメイトの男子生徒に喚ばれ私達の前から去った。
私は渡辺君を見つめる。
「あー、なるほど~、そういう事かぁ~」
「えっ??何?世吏ちゃん」
「美冬、渡辺君の事気になるんだ」
ドキッと胸が大きく跳ねる。
「えっ? ち、違うよ!」
「良いんじゃない?」
「ち、違うってば!」
「恋の扉、開いちゃったんだね」
「だから違うってば!」
「美冬、素直じゃなくなったり、意地張ったりしちゃうのも恋なんだよ」
「…世吏ちゃん…」
「違うって自分で否定して素直になれなくて…ドキッとしたりドキドキしたりしてるでしょう?」
私はゆっくりと頷く。
「ただ、あー見えて渡辺君、鈍感らしいから。でも、美冬は初恋だから案外気付いてくれるかも?」
「えっ?」
「美冬が素直に反応して顔や態度に出るから分かりやすいんじゃないかな?」
「迷惑じゃないかな?」
「えっ?クスクス …美冬、大丈夫だよ」
世吏ちゃんは、クスクス笑い、笑顔で言った。
「素直になって、恋の勉強しよう!」
「うん…」
「色々と相談にのるから」
「うん」
≪私が渡辺君に…恋…?≫
≪これが…恋≫
その日の学校帰り、私達4人は寄り道をする。
私の隣には常に渡辺君がいて、からかったり、意地悪したりして私の反応を楽しんでいる。
そんな私達の姿を見ながら世吏ちゃんと澳君は
「こうして見ると、案外二人とも、お似合いだな」
「そうだね。美冬の初恋が実れば良いんだけど…分からない事はかりで戸惑っているんだろうなぁ~」
「大丈夫っしょ?麻那人も悠木にマジ恋宣言!とか言ってたし、麻那人がうまく悠木を導いてくれると思うけど」
「澳君…」
「俺もマジ恋宣言して良い?」
「えっ?」
「伊東に」
「澳君?」
「ゆっくりで良いから俺と付き合ってほしい。俺、伊東が好きなんだ!二人の事を見守りながらも俺達の仲育んでいくのもありじゃね?」
「澳君…うん!良いよ」
「えっ!? マジ!?」
「うん」
「やったー!」
二人はゆっくり付き合う事にした。
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