第2話 男の子の存在

「美冬、今日付き合って欲しいんだ」

「うん、良いよ」

「サンキュー」



そして、その日の学校帰り、世吏ちゃんに付き合う。



「世吏ちゃん、御手洗いに行って来るね」

「うん、分かった。この辺で洋服見ているから」

「うん」



私は、御手洗いに行き済ませ、世吏ちゃんを探していると……



ドン ドサッ

誰かとぶつかると私は弾き飛ばされた。



「あっ! 悪いな」

「おっ! 可愛い女の子発見!」

「えっ?」

「怪我しなかった?」

「大丈夫?」



私にぶつかった人達は心配してくれたのか手を差し出して立ち上がらせてくれた。



「あ、ありがとうございます!」

「いいえ~」

「ねえ、君一人?」

「いいえ。友達と」

「じゃあ、そのお友達と付き合ってよ」



そこへ世吏ちゃんが現れた。



「美冬!」

「あっ! 世吏ちゃん! 今ね、この人達が付き合ってって……」

「馬鹿っ!」

「えっ?」



グイッと私を引き寄せると私の前に立ち塞がった。



「世吏ちゃん?」

「あの! 他当たって下さいっ!私達、そんな暇ないので! 行くよ! 美冬!」



世吏ちゃんは私の手を掴み去り始める。




「世吏ちゃん? どうし……」



グイッと私のお下げ髪を引っ張られた。



「痛っ!」



そして男の子に引き寄せられた。




「美冬っ!」

「彼女も付き合いなよ!」

「じょ、冗談じゃないわよ!」

「世吏ちゃん」

「彼女を離して! 彼女に変な真似したら許さ……」

「彼女も捕まえた~っ!」



連れの男の子が世吏ちゃんを捕まえた。




「きゃあっ!」

「世吏ちゃん!」

「さあ、行こう、行こう!」

「辞めてったら! 離してっ!」




その時だった。



「彼女達に何か用?」と、一人の男の子。


「その手離してくれないかな?」


と、もう一人の男の子。



「何だよ! お前らは失せな!」

「こっちが先に声掛けたんだからなっ!横取りすんなよ!」




≪横取り? どういう意味?≫

≪えっ??まあ確かに付き合ってって言われて……?≫




「彼女達、俺らの連れなんだけど?横取りしてんの、むしろそっちっしょ?」

「痛い目に遭いたくないなら彼女達を離した方が身の為だと思うけど?」




≪連れ? どういう事?≫

≪だって、私世吏ちゃんとしか来てないし……≫




私は全く話が見えない。




≪あれ? そういえば一人の男の子は何処かで……≫



「………………」



私は記憶を辿る。




≪あっ!図書室の人……後……水撒きの時に水かけちゃた人だ≫



「何、ふざけた事言ってんじゃねぇぞ!」

「だったらやる?」




結局渡され私達は解放された。




「二人共大丈夫?」


と、私の知ってる人が尋ねた。



「はい! すみません! 助かりました! ありがとうございます!」


と、世吏ちゃんが頭を下げる。


私も一先ず頭を下げた。




「君とは…3回目だね」


と、私の知ってる人が話しかけてきた。




スッと私のお下げ髪を掴み顔をのぞき込む。



トクンと、私の胸の奥が小さくノックした。



「この、お下げ髪が君の目印だね」



そう言うと微笑む男の子に私の胸がまた小さくノックした。


そして、掴んだお下げ髪をおろす。




「えっと……すみません助けて下さってありがとうございます」



頭を下げる私。



「本当、この子ったら男の子っていうの良く分かっていなくて……」


と、世吏ちゃん。



「だって付き合ってって言ったから……」

「付き合ってって言っても色々あるんだからね! さっきは安全とは言えないの! 分かった? あの! お礼させて下さいっ! 私達が奢ります!」


「じゃあ、お言葉に甘えて」

「おいっ! 隆弘(たかひろ)っ!」

「良いじゃん! なあ~」

「はい!」



友達と世吏ちゃん。




そして、私達4人はある店により私達から二人に奢ってあげた。



二人の名前は


渡辺 麻那人(わたべ まなと)君。


澳 隆弘(おき たかひろ)君。



私達と同級生で、私が知っている男の子は

渡辺 麻那人君。


私達4人は、お互いの自己紹介をする中、話が盛り上がり仲良くなる。


そんな帰りは、2 ― 2 で分かれ帰る事になった。



私と同じ方向である、渡辺君。




「悠木って、マジ恋した事ないの?」

「あ、うん。全然ないよ。今迄、16年間生きてきて、ときめく人がいなかったんだ。恥ずかしい話だよね」


「気付かなかっただけとか?」

「えっ?」

「実は好きだったんだってパターン」

「…でも…そんな気持ちとか……」


「そう? じゃあ俺と恋の勉強する?」

「えっ!?」

「なーんて!」

「…渡辺君…」


「でも、もし本当にドキドキしたり、ドキッとしたりしないっていうなら訓練の相手してあげても良いよ」


「訓練…そんな訓練なんて…多分意味ないよ。私は私なりに頑張って恋見付けてみる」


「悠木…」


「ドキドキしたりしてみたい。恋って自分しか分からないだろうし本当の恋愛してみたいから自分で自分の力で」


「………………」


「胸のトキメキがないなら、それはそれで良い。私に恋は向いてないって思えば良いから。だって……恋って、いつ、何処で始まるか分からないから」


「そっか……」




私の頭を軽く押さえる。



トクン

私の胸が小さくなった。



「じゃあ、俺ん家、ここだから。あっ! タオル返さなきゃとか思っていたんだけど連絡先も家も良く知らなかったから。ちょっと待ってて」


「うん」





少しして ――――



「はい」

「あっ! これっ!」

「何?」

「私のお気に入り……渡辺君の所にあったんだね」


「お気に入りなんだ」

「うん! 自分のお気に入りとかない?」

「なくはないけど……」

「あっ! それじゃ」



私達は別れた。













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