Fast Love
ハル
第1話 純情
恋って楽しいですか?
どんな恋がしたいですか?
『初恋』って?
どんな気分ですか?
私
恋をした事がないんです
この16年間
今年こそはと思って
早 16 年
今年の春4月から
高校生になった私だけど…………
私の名前は、悠木 美冬(ゆうき みふゆ)。16歳。
4月から高校生になった女の子。
―――― ねえ
みんな恋した事ある?
実は私
正直ないんだ
16にもなってないのも
どうかと思うよね?
でも本当なんだ
色々な男の子と
出逢ってきたけど
ときめく人なんていなかった
ドキドキしたりして
そんな経験しなかった
最近
このまま
恋愛しないままなのかな?って…………
将来がものすごく不安なんだ
女の子なんだから
恋愛して
結婚して
旦那さんや子供がいて
家庭築いて
私にそんな相手
現れるのかな?
「みぃ~ふぅ~ゆぅ~♪」
ぎゅうっと私を抱きしめる人影。
「きゃあっ!」
「あっ! お顔真っ赤!可愛い~♪」
「せ、世吏(せり)ちゃん!」
私の親友・伊東 世吏(いとう せり)ちゃん。
「もう本当、美冬純情なんだからぁ~。早く良い人見付けて良い男ゲットして自分磨きなって~」
「そう言われても……ときめく人いないし」
「いるいる」
「そうかなぁ~」
「そうだよ! もっと周囲(まわり)見てみなよ。恋ってゆっくり育んでいくのも1つのなんだよ」
「でも…私…人を好きになった事ないし…」
「美冬には、まだ難しいかな?」
その日の放課後。
「世吏ちゃん、私、ちょっと図書室に行って来るね」
「うん、分かった。一人で大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ」
世吏ちゃんは、私の事が心配なのか、いつも気にかけてくれる、しっかりもののお姉さん。
同級生なんだけど、私のお姉さんみたいな感じ。
私は図書室に行き、本を探す。
「あっ!あった! んー…もう少しなのにー。あっ! 届い…た…」
何とか私の身長ギリギリで背伸びして手を伸ばせば届く陳列してある本棚。
何とか届いた矢先。
ポトッ コツン
陳列してある本棚から本が1冊落ち、私の頭に当たった。
「痛っ」
ポトッ…
ポトッ…
本が何冊か落ちた。
「あっ… 落ちちゃった…」
私は拾いしまおうとした。
「んー…届かない…もう少しなのに…」
体力の限界に一旦腕をおろす。
その時だ。
「貸して」
そう言うと同時にスッと私の持ってる本を男の子はもらうと、本を棚に戻してくれた。
「あ、ありがとうございます」
私は頭を下げた。
「いいえ。余り無理して戻そうとすると沢山、本が落ちてきちゃうよ」
そう言うと男の子は微笑む。
「ごめんなさい」
私は再び頭を下げた。
「えっ?いや別にいいけど……そこまで謝る迄もないと思うけど…」
「いいえ、怒られたのも当然なので…いや注意されたの方が正しいのかな…?」
クスッと笑う男の子。
「…君、面白い子だね」
「えっ?」
「別に良いんじゃない?」
「えっ? あっ!それでは、友達待たせているので失礼します。ありがとうございました」
私は、そこから去り始める。
「今どき珍しい女の子。あんな素直な子。純情というか純粋というか…」
「あ、いたいた。悪い。麻那人」
「ううん、良いよ」
「どうかした?」
「いや、今どき素直な良い子もいるんだなぁ~と思って。珍しい子だなぁ~って…」
「えっ?」
「お下げ髪の女の子。何ていうか純情というか純粋というか……」
「あー。だけど、あーいう子に限って実は裏の顔があるんだって!マジ裏で何してるか分かんねーぞ!」
「いや……彼女に関しては本当の純情というか純粋だと……それとも礼儀正しいだけなのかな?」
「お前は過去にあったじゃん! 深入りしない方が良いって!」
「それはまあ……」
それが彼との出逢いだった。
ある日の休日。
「美冬ーー、ちょっと水撒いてくれない?」
母親が私に頼んだ。
「はーい」
しばらくして ――――
「うわあっ!」
ビクッ
水撒きしている最中に通り掛かった人に水が掛けてしまったようだ。
「ご、ごめんなさいっ! あ、あのタオル持って来ますので待ってて下さいっ!」
「あっ! 良い……」
私は急いでタオルを取りに行く。
向かった先は洗濯物の干してある竿の中だ。
目についたのはバスタオルだ。
バスタオルを取った瞬間 ――――
ガシャン
洗濯物が勢い余って落ちてしまった。
「あっ!」
と、気付いたものの、そのまま放置。
一先ず急がなきゃ風邪引かせたら大変だし、お出掛けする予定だったら尚更だ。
「本当すみません!」
私は頭を下げる。
「いや……大丈夫だったんだけど……それより洗濯物が落ちたような気がしたのは……」
「えっ!? あっ! 大丈夫です! ……多分……」
「多分!?」
「はい! いいえ、本当に全然大丈夫ですよ。それよりデートとかだったんじゃ……」
「えっ? 大丈夫だよ。そんな相手いないから」
「えっ? カッコイイのに?」
「えっ?」
その時だ。
「みぃぃぃ~ふぅぅぅ~ゆぅぅぅ~っ!」
「あっ! 早く逃げて下さい!私の母親、角生えて鬼になっちゃうと関係ない人も怒るので!」
私は男の子を追い返すようにすると、そこから去り母親の元へと行くのだった。
「ごめーーんっ! すぐ片付けるーーっ!」
「あっ……タオル持って来てしまった……」
男の子は、渡されたタオルを持って帰るしかなかった。
これが2回目の再会となった。
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