料理人の意地

 バイトの時間で、僭越ながら失敗をしてしまった。

 ハンバーグの焼き方がレアになってしまった。


 俺はすぐに客のところに行き謝罪した。


 作り直すのに時間がかかるからその客は印象を悪くしてしまったようだ。


「気にすんなよ喰太……」


「岡崎……お前はいいよなウェイターで」


「俺は俺で大変だよ」


「そうなんだよな」


 そしてそのあたりで終わらせておいた。

 今日は散々だった。


 ファルナが慰めてくれた。

「喰太は悪くないぞ」

「いや俺のミスだ……悪いのは俺のせいだ」


「でも悪くないぞ!」

「そうだな……」


 今日は晩御飯は炒め物になった。


 豚肉とキャベツと人参とピーマンとジャガイモの炒め物だ。


 たっぷり作っているからなんとかなるな。


 だが、そこにネルコとお供のレメールとかいう虎獣人系魔人の人が来た。


「お邪魔だったかしら~」


「飯が食えると聞いて……ガオオいい匂いだなここは」


「うちは個人の飯屋じゃないんだが……金とるぞ」


「いいですわよ……はいじゃあこのくらいでいいかしら」


 とネルコが福沢さんを2枚よこした。


 俺は無言で受け取る。


 そして今からローストビーフを創り、クリームシチューを作った。

 みんな美味い美味いと言っていた。

 サラダも用意した……ビーフストロガノフも作った。

 レメールはお金が無いから……ネルコのお供で色んな雑用しているとか。


「ガオオ美味かったぞ喰太とやら……また来てもいいか?」


「いいけどほどほどにしろよ」


「わたくしは美味しいスイーツを作ってくれるのなら福沢さん何枚でも払いますわ」


 そんな感じで今日はみんなで訓練することになった。


 レメールは動きが人間のそれとは凌駕している。


 ネルコは魔法を使う。

 鞭を使うし厄介な奴だ。


「なかなかやりますわね……」


「ガオオ喰太ツヨイじゃないか!!」


「そりゃそうだよ! 喰太は毎日私と共に訓練しているからね!」


「ファルナと!? 星神魔王のファルナと共に……?? どんだけ手加減してるんだよ!?」


「なんだお前そんなに強いのか?」


「そうだよ!! 私はかなり強いけど何か?」


「いやどんだけ強いんだろうかなと思ってな……」


「エンシェントドラゴンとか邪竜とか相手にしても引けをとらないかもね」


 ネルコが口を出す。そんなに強いのかこいつ。知らんかった。


「強力なエネミーを出すよ ミノタウロス!!」


 うわっおまっなんか強そうなやつ出た。


 ミノタウロスは棍棒を持っている。


 大男で2メートルは身長がある。


 そいつが突進してくる。

 時間を置き去りにしてくるほどの突撃体制で牛魔人は殲滅の波動を重ねてくる。


 殲滅の波動を感じた喰太は臆することなく手に持つ包丁を構える。


 ミノタウロスの赤目の覇気は恫喝する勢いで喰太を狙いつくしていた。


 喰太は包丁を手にミノタウロスの肩を見据えていた。

 絶対的破壊を目的に掌底を喰らわせるごとき勢いで全開の波動で放たれた銃撃のように放たれた戦慄の刃はミノタウロスの肩を抉った。


「ぐもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」


「牛の魔人など恐れていては倒せないようでは……」


「来るぞ!!」


 ミノタウロスの激昂の左手が覆いかぶさろうとしたところ……喰太は手を祓うごとき動作で包丁を奮った。


 千撃の彼方より星王の紫福を得た喰太は獲物を調理する料理人のごとき勢いでミノタウロスを捌いた。


 ミノタウロスの肉をゲットした。現実世界に持っていけるようだ。


 

 今日は疲れたな……でも前より疲れやすさを感じにくくなったな。


 ファルナの朝飯を作り置きして、寝ることにした。

 ネルコとレメールの分も作っておかないといけないな。

 さてもうひと踏ん張りだ。

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