第7話 七

賢者の師匠はアクセスに回復呪文をかけると、 アクセスは目を覚まして、自分が負けた事が信じられず、

唖然としていた。

賢者のエリスはアクセスに近づくと、

「どうやら、勝負あったみたいね、英雄さん」

と話しかけた。

アクセスは賢者のエリスに文句を言う。

「ふざんけんじゃねえぞ、女が男より強かったなんて聞いたことが無い」

と怒鳴りつけると、賢者の師匠がやって来て、

「何を言っているんですか? あなたが弱いだけでしょう?」

と言うと、アクセスは逆切れする。

「うるさい、黙れ」

と言って賢者の師匠に向かって殴りかかろうとすると、

「うわあああ」

と叫んでいると、エリスが剣の鞘でアクセスの頭を殴った。


「うげ」

と言ってアクセスは再び気絶してしまった。

賢者の師匠は呆れてため息をついた後、

「まったく……これでよく英雄になれたものですね」

と賢者のエリスに話しかけると、 賢者のエリスは微笑んで、

「師匠仕方がないですよ、だってアクセスだもん」

というと賢者の師匠は納得したように大きく何度も首を縦に振る。

賢者の師匠の妹ミレイナは賢者の師匠に駆け寄ってきて、 抱きつくと、

「お姉ちゃん、凄かったよぉ~本当に格好良かったよ」

というと、 賢者の師匠は大きく溜息をついて、

妹ミレイナに言い聞かせるように話し出す。

「ミレイナ、あなたはもっと賢くなるべきです。

あんな男のどこが良いのですか?」

ミレイナも賢者の師匠に言われて、少しだけ考え込むと、

「確かにそうだよね、あの人全然強くないし、偉ぶってばっかりだし、性格も悪いし、何よりも女の人にモテなさそうな感じだよ」

そう言われてクスクスっとエリスと師匠は笑うのです。


「アンナのは婚約破棄しちゃう、やっぱり、強い男性が良い」

「それは当然の事ですよ」

二人は意気投合しているのです。

「でも、私はお姉様の方が好きかな、優しくしてくれるもの」

賢者の師匠は大きな声を出しながら呆れるしかなかったのですが……。

こうして、決闘は終わりを迎えたのです。


「では皆さん帰りましょう」

賢者の師匠の言葉に一同が賛同すると賢者の師匠の家に戻る事になった。

家に戻ると、皆はリビングに集まったのだが賢者の師匠は疲れ切った様子だったので、

お茶を用意する事にした。

賢者の師匠はキッチンに向かう前に賢者のエリスに近づいて小声で話し始める。

「エリス、あなたのおかげで助かりました。

ありがとうございます」

というとお礼を述べる。

賢者エリスは照れた様子で言う。

「いえ、私の方こそ楽しかったです。

また、やりたいですわ」

賢者の師匠も大きく同意するように大きく首肯く。

(エリスが満足したならそれでいいか)

と賢者の師匠は思うのだった。2人はお茶の準備をして戻ってくるとテーブルの上に

ティーカップを置いていくのですが、 何故か人数分以上ある事に気がつきます。

1つは勿論、賢者の師匠用なのですが他の5つの紅茶が誰のものなのかわからないのです。


5つとも高級品なのは間違いないのですが誰が用意したのか謎なのです。

ただ1人だけ心当たりがある人が居たのでその人の方に目線を送るのですが誰もいないようなのです。

不思議そうな顔をして周りを見渡すとそこには先程までいなかったはずの人が

居る事に気づくのですが誰でしょうか?

ただわかる事はその人物は女性だという事なのです。


ただそれだけだと判断がつかないのですが、

よく見るとその女性はメイド服を着ていたのです。

ただ何故ここに女性がという疑問は残るのですが、賢者の師匠はとりあえず、

お客が来た時に座らせる椅子に腰掛けると、

全員に着席を促してから自己紹介を始める事にしたようです。

まずは賢者の師匠は挨拶をする為に口を開く。

「今日はお越しいただき誠に有難う御座います。

私の名前はユレイナと言います。

そしてこちらにいるのが賢者の弟子のエリスです」


2人とも軽く会釈をすると続いて妹のミレイナが立ち上がると

その人物に名前を名乗る事にする。

「初めまして、私がお師匠様の妹のミレイナです。

よろしくお願いします」

というと丁寧に頭を下げた後に、ユレイナの隣に座り直す。

次に立ち上がったのは賢者の弟子のエリスだった。

エリスは立ち上がり、その人物の前に立つと 深々と頭を下げる。

「初めまして、賢者の弟子のエリスといいます。

宜しくお願い致します」

と頭を上げると、その人物の顔を見る。

その顔は綺麗な金髪で整った容姿をしていた。

年齢は20代前半ぐらいだろうか。

服装は黒のドレスに身を包んでいた。

その黒髪の女性はユレイナに尋ねる。

「ユレイナ殿、質問してもよろしいかしら?」

(なんだろう?)

と思いながらもその問いに答える。

「はい」

すると今度はユレイナではなく、私を見て言うのでした。

「この子が、アクセスのたおした相手でまちがいはないでしょうか?」

「はい、そうです」

「そうでしたか……」

「何か問題でもありましたか?」

「いえ、そういう訳ではありませんわ。ただ……」

「ただ?」

「あまりにも弱すぎたものですから、もしや偽物ではないかと思ってしまいましましたわ」

というとその女性はクスクスと笑いだすので、思わずエリスもその女性の態度にイラッとして

、反論してしまうのでした。

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