第6話 六
そこは大きな広場で普段なら恋人たちがにぎわっているのですが
今日は今か今かと二人の決闘を見に人が押し寄せてきているのでした。
かたや、この世界の英雄なのです。
人が集まらないはずないのでした。
賢者の師匠は賢者のエリスに近づいて、
「大丈夫ですよ、エリス。
相手はたかだか、Dランクの冒険者でしかないのです。
あなたが負けたとしても恥になるような事はありません。
むしろ、あなたの力を見せつけてやりましょう」
賢者のエリスは賢者の師匠に励まされると、 やる気が出てきたのです。
そして、ついにその時がやってきたのです。
まずは、最初に現れたのは魔剣士のアクセスの方だったのですが、 明らかに様子がおかしいのです。
何しろ、顔が青ざめていて今にも倒れてしまいそうなのです。
しかも、足が震えていますので余程、緊張をしているようです。
ただでさえ、自分は英雄なのです。
それが凄いプレーシャーとなっているのでしょう。
賢者の師匠は呆れていました。
一方、賢者のエリスは賢者の師匠に言われた通り、 堂々としています。
それを見た魔剣士のアクセスは悔しそうに歯噛みをしていました。
次に姿を現したのは賢者の師匠でした。
賢者の師匠はいつも通りの態度だった。
魔剣士のアクセスは賢者の師匠を見ると、 ニヤリと笑っていた。
しかし、賢者の師匠はすまし顔なので魔剣士のアクセスはそれを見てますます苛立つと、
賢者の師匠に挑発的な言葉を投げかける。
「おい、お師匠様よぅ、アンタの弟子は魔法を捨てたんだってな、だから英雄の俺が倒しても全然問題ないよな」
「それはどうしら?」
というと魔剣士のアクセスは鼻で笑う。
(ふん、お前の弟子が無様に負ける姿を見て許しを乞わせてやるさ)
と心の中で思うと、 アクセスは嘲笑っていた。
賢者のエリスはその様子を見てイラっとすると、 賢者の師匠は余裕綽々な態度だった。
賢者は賢者でも賢者の中でも最強の部類に入るその弟子のエリスは賢者の中でも最強クラスの実力を持っているのです。
その証拠に賢者エリスは賢者になったばかりなのにレベル99まで上がっています。
賢者エリスは自信満々とまではいかないけど、
自分の力がどこまで通じるのか試してみたいと思っていました。
そして、いよいよ始まるのです。
「では、これより賢者エリス対魔剣士アクセスによる勝負を始める。
ルールはどちらかが降参するか戦闘不能になるまで戦い続ける事とする」
というと、賢者エリスは自分の剣を握り締めて、構えると、
「かかってこいですわ」
と呟くと、アクセスは大声で叫びながら、 賢者のエリスに襲ってくる。
「覚悟は良いだろうな、エリス!! 俺はこの世界で選ばれた存在なのだ。
この世界の英雄なのだ。
それを邪魔する者は誰であろうと許さない」
と叫ぶと、賢者の師匠は苦笑いを浮かべて、
「エリス、頑張って下さいね。
応援してます」
「はい、師匠」
と返事を返すと賢者の師匠は賢者のエリスに近寄ると耳元で囁く。
「くれぐれも相手に怪我だけはさせないように」
賢者エリスはニッコリ笑って賢者の師匠に答えた。
「わかってます」
賢者の師匠は離れると、賢者のエリスは深呼吸してから、
「始め!!」
と合図を出すと、アクセスは一気に賢者のエリスに切りかかる。
「死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええええええ!!!!」
と絶叫しながら、賢者のエリスに斬りかかった。
賢者のエリスは慌てる素振りも見せずに、 相手の攻撃をかわすと、 反撃に出る事にした。
「遅い、遅すぎますわ」
と呟いて、アクセスに攻撃を加えると、
「ぐはぁっ」
という悲鳴を上げて、吹き飛ばされてしまった。
「うそっ」
「えっ」
「嘘っ」
「あれっ」
「えっ」
「えーっ」
「マジっすか」
観客たちは驚いていた。
それもそうかもしれない。
相手は英雄である。
誰もが認めるこの世界の救世主であり、 この国で一番強いと言われている人物なのです。
そんな人物が賢者のエリスの攻撃を受けて、一撃で倒れてしまうとは思わなかったのです。
賢者の師匠は苦笑いを浮かべながら、
「加減なさいと言ったでしょ」
と賢者のエリスに忠告すると、賢者エリスは賢者の師匠に頭を下げると、
「ごめんなさい、師匠。
つい、熱くなりすぎて、力を緩めてしまって
次は本気で行きますから安心してください。
それに私はまだ本気を出してませんから……」
と賢者の師匠に答えると、賢者の師匠は溜息をつくと、
「ほどほどでお願いしますよ……」
と賢者のエリスに言うと、賢者のエリスは笑顔で
「わかりましたわ、師匠。
任せてください!!」
と答えると、賢者の師匠は賢者のエリスから離れていくと、
賢者のエリスはアクセスに視線を向けると、
アクセスは地面に倒れたまま、なのです。
エリスが近寄ると
「あらあら、何時まで寝ているのですの?」
というと魔剣士のアクセスは怒り狂いながら、
「ふざけんな、俺がこんな女に負けるわけがないんだ。
こうなったら奥の手を使うしかねえ」
というなり、アクセスは立ち上がろうとすると、
「あっ……」
と言って再び倒れると、
「くくく、残念だが、もう俺には戦う力は残されていないようだ。
だけど、俺を倒した事を後悔させてやる。
俺の仲間が必ず復讐に来るから楽しみにしていろ!!」
というとアクセスは意識を失ってしまった。
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