第213話/Do what you like
森川愛.side
MVの撮影が終わり、車の中で唇にそっと触れる。今まで仕事で何回もキスシーンなんてやってきた。同性とは初めてで、変わらないと思ったけど…みのりだから違うのかな?
みのりのキスが上手いせいで、初めてキスをして体が熱くなった。みのりに触れられた場所が勝手に熱を持ち、体の芯が熱くなり初めての体験は私を困惑させる。
はぁぁと大きなため息を吐き、背もたれに寄りかかりながら自分の中で整理をする。
改めて思ったのは、みのりは不思議な女の子で、同性が惹かれてしまう魅力がある。
梨乃ちゃんはこんな風にみのりに落とされてしまったのかな。みのりは距離感が近いし、自分の中のボーダーを簡単に越えてくる。
ちょっとだけ《ヤバいな》って気持ちが湧き上がる。みのりは…危険な子だ。
この仕事を楽しみにしていたのに気が重い。自分の殻は破れそうだけど、色々と考えてしまうことが多いし、あのキスは危険だ。
キスシーンの映像を確認した時、余りにも映画のワンシーンみたいで驚いた。
私が言うのは変な感じだけど、みのりのキスは完璧なんだ。見惚れてしまうキスの上手さ。これは役者としてはとても大事なスキルだ。
時々、いるんだよね。キスシーンが全く絵にならない人。キスシーンの見せ方が下手で、様にならない人がいる。
みのりは…10段階で表すとしたら10だ。それほど、見る人をドキッとさせ恍惚とさせる。
監督もスタッフの人もスタイリストさんもみのりのキスに頬を赤らめてたし。
本当…みのりって変わってる。恋愛に興味ないくせに周りを虜にさせる能力がある。
「愛、起きてる?」
「起きてます」
運転しているマネージャーに声を掛けられ、背もたれに寄りかかっていた私は体を起こす。
「さっきさ、監督と話したんだけどお風呂シーンはOKなのか聞かれた」
「お風呂のシーン…あぁ、あのシーン」
「今日の撮影でお風呂のシーンをどうしても入れたくなったって」
「そうなんだ。大丈夫だよ」
「分かった。返事しておく」
ドラマは30分の10話だから、お風呂のシーンはギリギリ入るか入らないかと話数だなって思っていた。でも、あのシーンはラブ・シュガーファンからも人気のあるシーンで…
本格的に気合いを入れないといけないみたいだ。濃厚なラブシーンを求められている。
これは私の女優としてステップアップ。ベッドシーンも初めてやるし、相手が同性で友達のみのりってのが変な感じだけど…
私は今までの自分をぶち壊したい。梨乃ちゃんやみのりに出会ったことで仕事は満足はしていたけど現状じゃ満足できなくなった。
携帯で電子書籍のラブ・シュガーを開く。さっき言われたシャワーシーンを読みながら絵里と天を私とみのりに当てはめる。
シャワーを浴びながら私達は熱いキスをする。そして、天が絵里の首筋にキスをする。
漫画なのに、なんでこんなにもゾクゾクするのかな?少しだけエッチなシーンだけど、エロさとは違うものがこのページにはある。
これまで沢山愛を伝え合って、愛し合って少しずつ2人は大人になっていく描写だ。
私と同じ19歳なのに…大人すぎるよ。私は2人に全てにおいて負けている。
私は9月に20歳になる。小さい頃は20歳って大人って感じがしたけど何も変わらなさそう。お酒が飲めるぐらい?
ドラマの撮影が終わる頃には私の中で変化が起きててほしい。つまらない、我慢する日々を乗り越えるために。
私はずっと刺激を求めていた。そして、みのりは私に唯一刺激を与えてくれる人。
ワクワクしてきた。私ね、凄く久保田凛の役が大好きだった。自由人で、小春達を掻き回して、毎日が楽しそうで。
私はみのりとのキス好きだ。女の子の唇がこんなにも柔らかくて、気持ちいいと知った。
こんな風に私が言うのはみのりに対し恋愛感情がないから。みのりのことは大好きだけど、《みのりの》が大好きだし、モブが楽しい。
顔がニヤけてしまう。これから最高の時間を過ごせそうだ。ドラマの間だけ、私とみのりは作り物の恋人同士。
私は苅原絵里として恋愛を楽しむよ。柚木天を沢山愛してラブ・シュガーを楽しむ。
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