第183話/唇を噛みしめて
どけだけ寝てたのかな?頭も体も怠くて仕方ない。喉が渇いたし、寝過ぎたせいで体が痛いし、特に腰が痛くて…
あまり力が入らないけど、ゆっくり起きあがろうとするとお母さんが手伝ってくれた。
「みのり、具合は大丈夫?頭は痛くない?体で痛いところある?」
「大丈夫。怠いだけだよ」
「先生、呼んでくるわね。待ってて」
お母さんが先生を呼びに席を立つ。ナースコールボタンが枕元にあるのに忘れてしまっているみたいだ。
私は台に置いてあるお茶のペットボトルを手に取り一気に飲む。喉が渇いてて、かなり唇が乾燥をしていた。
喉を潤した後、私は携帯を探しよっちゃんに連絡をする。きっと、よっちゃんやみんなに迷惑をかけてしまった。
よっちゃんにLINEを送った後、先生が来て診察を受ける。私は過労で倒れた。
きっと、疲れが溜まっていたのだろう。ずっと睡眠不足だったし、1日だけゆっくりした日があっても簡単には疲れは取れない。
先生の診断で私は今日まで病院に入院することになり、ため息を吐く。私は日付を見てショックを受けていた。
映画のオーディションに行けなかった。せっなくのチャンスだったのに…
今日はみんなレコーディングをしているのかな?私も早く参加したい。
私は根っからの仕事人間で、仕事をしていないと不安になるタイプみたいだ。
「みのり。私、お父さんに電話してくるわね。ちゃんと、ゆっくりするのよ」
「うん」
お母さんがまた部屋から出ていった後に丁度、よっちゃんから電話がかかってくる。
「よっちゃん」
「みのり…良かった。目を覚さないからめちゃくちゃ心配したんだからね!」
「ごめんね…」
「体調はどう?」
「もう、大丈夫だよ。明日、退院する」
「良かった。明日まではゆっくりするのよ」
「でも、レコーディングが…」
「体調を例える方が優先でしょ。みのりのレコーディングはちゃんと別日にするから」
「分かった」
「ゆっくり寝てなさいね」
「うん。ありがとう」
こんなにも休みが長いのは1年ぶりだ。あの時はバイトばかりやって、時々ライブしての日々で休みたくて休んでいたわけじゃない。
お腹がぐーと鳴る。丸一日食べてないからお腹が空いたみたいだ。
何かないかって探すけど何もなく、仕方なくまた携帯を手に取る。美沙から昨日LINEが来ており当たり前だけど返事をできていない。
私は美沙に返事出来なくてごめんと送るとすぐに美沙から返事が返ってきた。
美沙は仕事が忙しくて返事が出来なかったと思っているみたいで、私は嘘をつく。
美沙に心配をかけたくないし、まだ大学にいる時間だから迷惑をかけたくなかった。
でも、美沙は私の嘘を簡単に見抜く。突然、今日の夜、家に行ってもいい?と来て私は焦る。今日まで病院で過ごさないといけない。
私はどうにかして誤魔化したいけど、上手い嘘が思い付かず馬鹿な返事を送る。
〈今日は地方に泊まりなの〉
美沙からすぐに〈どこに?〉と返ってきて、私は遠くがいいと思い〈関西〉と送ると美沙から〈嘘でしょ〉ときた。
あっ、美沙から電話がかかってきた。声が上擦らないように電話に出ると美沙が「何かあったの?」と聞いてくる。
「入院してる…」
「バカ。なんで言ってくれないの…」
「さっき、起きたの。それに、美沙に心配かけたくなくて」
「そんなの気にしないでよ!みのりは私が入院した時、嘘をついたら嫌でしょ」
「うん。嫌…」
「病院どこ?今から行くから」
「でも…」
「行くから、教えて」
「分かった…」
私は丁度戻ってきたらお母さんに病院名を聞き、美沙に伝える。美沙が電話を切り、私はまたため息を吐いた。
美沙に心配をかけたくなかったのに結局は心配させてしまった。嘘も見抜かれたし。
「みのり。お母さんは一度、帰るわね。夕ご飯の用意の用意をしてくる」
「うん。あっ、お母さん。今日はもういいからね。往復するの大変だし。それに、美沙もくるし大丈夫だよ」
「分かった。また、明日来るわね」
「うん。ありがとう」
美沙が来るまで私はまたベッドに横になる。体を休めていないと美沙に怒られそうで、早く体調も戻したかった。
あっ、美香達からもLINEが来た。きっと、よっちゃんが教えたのだろう。
本当は今日、お見舞いに行きたいけどよっちゃんから止められているから我慢すると書いてあり苦笑いをする。
よっちゃんに沢山気を使わせてばかりで申し訳ない。でも、今日は病み上がりだし少しでも元気な姿でみんなに会いたい。
それに美沙も来るし、美沙が美香達に気を使ってしまう。あっ、美沙に頼まなきゃ!
お腹が空きすぎて倒れそうだ。お茶は沢山あるけど肝心な食べ物が無いのはキツい。
美沙に慌ててパンを頼み、静かに目を瞑る。病院は静かで、色々考えるのに丁度いい。
オーディションのことやレコーディングのことを考え…めちゃくちゃ反省した。
無理をしすぎると大事なものを失う。せっかくのチャンスを私は棒に振った。
私はバカ野郎だ。新人は倒れている暇なんてないのに私は自己管理ができていなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます