第140話/ハートテトリス

田中/奏多みどり.side


黙々と私は仕事をする。集中して仕事をしないとみのりちゃんと高橋君の映画のことばかり考えてしまい仕事にならないからだ。

百香が私を見張っているし…でも!今も悔しくて悔して×××!と叫びたくて仕方ない。


せめて、発行部数が私の漫画より少なかったらもっと怒れたけど、私の漫画より多かったら何も言えないじゃないか!

だからこそ、絶対に抜く。みのりちゃんが「彼女はちょっと変わっている」が代表作だと言ってくれるように売り上げを伸ばす!


でも、欲望にも取り憑かれている。絶対にみのりちゃんは上坂未来みたいな可愛い女の子が似合うし、早く映画が見たくて仕方ない。

早月は可愛さもあるけど、カッコ良さが売りのキャラだ。未来はとにかく可愛い女の子。


そのせいで、上坂未来のみのりちゃんを何度も想像してしまい手が止まってしまう。

さっき、みのりちゃんタイムを過ごしていたのに脳がもう…みのりちゃんを求めている。


「先生、手が止まってます…」


「分かってるよ…」


「もう22時ですよ!このままだと原稿落としますよ!いい加減、仕事に集中して下さい」


「だってー!」


「だってじゃないです!仕事と推し事はちゃんと分けて下さい!それに、このままだとライブに行けなくなりますよ」


「やだー!」


「じゃ、頑張って下さい。ついでに、心配かけたお詫びにお菓子を奢って下さい」


「分かったよ…いつものプリンでいいの?」


「はい。2つお願いします」


アシスタントの百香と仕事をするようになり何年が経っただろう。年下の百香は旦那より一番の私の理解者で私を支えてくれる。

また今日も助けられ、感謝しかない。私が暴走しないのは百香がいるからだ。


百香は私を現実に戻してくれる相棒で、私のことを叱ってくれる唯一のアシスタント。

この前もみのりちゃんへの愛をこれでもかと語ったら、冷めた顔で「へー、そうなんですね」と冷めた声色で言われた。


私のみのりちゃんの関係はアイドルとファン。私はみのりちゃんが鮎川早月役に決まった時、この関係は絶対に変えないと決めた。

みのりちゃんの前では私は藍田みのりのファンでありただの漫画家だ。


《さんかくパシオン…》


になんかに絶対に負けないと決めたのだ。どれだけ面白くても、感動しても私の漫画は絶対に負けてないという自負がある。


そう…この時は私は強い志を持っていた。でも、もう少し先の未来で私は打ちのめされる。ある作品に敗北するのだ…


「先生、待ち時間に漫画を読んでいるので終わったら呼んでください」


「あっ…はい。あれ?その本、何?」


「友達にこれ面白いから絶対に読んでと無理やり渡された本です」


「へぇ、タイトルは何?」


「ラブ・シュガーです」


「恋愛漫画か」


「まぁ、そうですね」


私は彼女はちょっと変わっているが完結したらいつかは恋愛漫画を描きたいと思っている。勿論、今度はみのりちゃんが主人公で!

私はみのりちゃんが恋愛をしたらどんな恋愛をするのかと妄想するのが大好きだ。


普通は推しの恋愛なんてって思う人が多いけど私は漫画家だ。漫画家だからこそ、推しの恋愛を妄想するのが楽しい。

それに妄想の中の相手は常にぼやけているし、私はみのりちゃんがこんな感じでと考えるのが好きなだけで相手はどうでもいい。


みのりの

あゆはる


が人気の今、最近は百合もいいなと思っている自分がいる。女の子と付き合うみのりちゃん…へへっとニヤついてしまう。

妄想は自由で楽しい。本気で次は百合の作品もいいなと頭の中でプロットを考える。


みのりちゃんは彼氏側だよねとか考えると口角が上がり、急いで手で顔を隠す。絶対に気持ち悪い顔をしているはずだ。


女の子と恋をするみのりちゃん…





「先生…顔が気持ち悪いです」


「へぇ?」


「ずっとニヤけてて…怖いです」


「あっ、、(妄想の世界に入り込み、手で顔を隠すのをいつのまにかやめていた…)」


「し・ご・と・して下さい!」


「はい!すみません!」


私には夢がある。1つは叶ったけど、まだ夢は沢山あり叶えるために努力中だ。


①漫画家になる(congratulations!)

②ヒットさせる!(congratulations!)

③目指せ!5000万部!

④死ぬまで漫画家

⑤死ぬまでヒット作を描く!

⑥みのりちゃんの百合作品を描く!(new!)


夢は無限大だ。

推しのお陰で夢が広がり…

さらなる大海に出発する。

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