第139話/華のアイドル
吉田夏樹.side
事務所で雑務を終わらせ、コーヒーを飲みながら今日買った雑誌を読む。
雑誌をパラパラと捲り、手が止まったページにアンニュイな表情や爽やかな笑顔の高橋君が映っており見惚れる。
きっと、高橋君はこれからもっと伸びる。だけど、グループとしての伸び悩みを感じる。
高橋君のグループのメンバーの恋愛問題が著しく悪い。今回もスクープを撮られ…
それも相手が人気女性アイドルグループの子だから激しく燃えており、悪い相乗効果のごとく罵詈雑言の嵐だ。
きっと、事務所も悩みどころだろう。年頃の男の子の我慢の抑制は難しい。
これはガールズグループにも言えることだけど、10・20代は恋をしたいお年頃だ。
でも、今は売れっ子でも歳をとると人気も衰えてくる。これはどのアイドルも同じ。
だからこそ、若いうちに未来への道を作らないといけない。今は事務所の力と若さで仕事が来るかもしれないけど今だけだ。
きっと、このままいくと他のメンバーと高橋君との差だけ広がっていくだろう。
今のところ、俳優として生き残れるのは高橋君だけだと思うし。だからこそ、みのりの初めての映画出演が高橋君で良かった。
私は芸能会社に就職しマネージャーになり、人を見定める癖がついてしまった。
自分の事務所のタレントにとって有益なのか有害なのか見極めるのは大事な仕事だ。
それに、CLOVERの専任のマネージャーになってアイドルについて考えることが増えた。
正直な所…CLOVERは梨乃とみのりの二強が数年は続く。別に美香と由香里が悪いとか欠点があるとかではない。
これは運と順番なのだ。梨乃とみのりが注目されている今、美香と由香里は影になる。
高橋君のグループもそうだ。グループの人気は高いけど個人の人気は高橋君の一強だ。
きっと、事務所的にはメンバーみんなを同じぐらいに押していきたいけど難しいだろう。
スキャンダルはある程度、熱が冷めるまで冷却しないと人気が付いてこない。
アイドルは常に華やかでいないといけない。ひらひらと舞う花びらを目で追うようにアイドルはファンに追いかけられてなんぼだ。
汚れたって言葉はキツい言葉だけど、落ちて汚れた花びらには誰も見向きはしない。
アイドルは一生やれるものではない。だからいつかシフトチェンジが必要で、みのりと梨乃は運良く良い流れが出来ている。
普通はグループ人気を得て、個人の演技の仕事などをするけどみのりと梨乃はグループとして人気が出る前に女優の仕事をしている。
この流れは将来が安定する。既に女優としての知名度を高めているからだ。
ただ、このパターンの弊害はグループとしての人気を得る前に個人の人気が高まりすぎて他のメンバーとの人気の差が出やすい。
だからこそ、私は美香と由香里を必死に売り込んでいる。これ以上、影にならないよう。
みのりは順調に女優としての道が作られている。でも、問題は梨乃だ。
一番、演技の才能がある梨乃をどうにかしてドラマや映画に出演させたい。
でも、梨乃は恋愛系のドラマや映画には絶対に出ないだろう。みのりに恋してる限り。
アイドルの華は永遠ではない。
華はいつかは枯れる。
若さは無限大ではない。
だからこそ、華が美しい時期に。
【美しく舞ってこそ、華】
若さの使い道を間違えてしまったら、美しく舞う時期を逃してしまう。
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