第134話/優等生の足枷
谷口美沙.side
髪をだいぶ短く切り、髪色をかなり落ち着いた色にした。こんなにも暗い色にしたのはいつぶりだろう?違和感はあるけど、お母さんに似合ってるよと言われ少しだけ安心した。
昨日はいつのまにか寝てしまい、朝、私は慌ててみのりに返信をした。最近、バイトの時間を増やしたせいで疲れが取れない。
それに更にバイトを増やす予定で…まさか!自動車教習所に通うお金があんなにかかるなんて知らなかった。
とても貯めてたお金じゃ足りなくて、お母さんに足りない金額を借りて返す予定だ。
眠たい目を擦りながら私は朝の日課のため電車の中でエゴサーチをする。勿論、自分のことではなくみのりのことを調べる。
みのりにどれだけファンが増えたか知りたいし、みのりを常に感じたかった。
藍田みのり本人と直接繋がることができる関係性のくせにね。でも、最近会えていないから少しでもみのりを吸収したかった。
携帯でSNSにみのりと打ち、検索すると沢山のみのりに対することが書かれている。でも、エゴサーチはメリットとデメリットが大きい。情報の共有やみのりのファンの良いコメントを見るのは楽しいけど…
また、みのりの高校時代の写真が流出している。みのりの隣には私がいて…私の顔は流石に隠してあったけど良い気持ちはしない。
この写真が広まっており、本当にあの女子校出身なんだ!と驚いている人が沢山いる。
私達が通っていた学校の偏差値や制服が調べられ晒され、いい加減プライベートな部分を晒すのをやめてほしい。
もし、これで…みのりが大学に進学したら大変そうだ。みのりが私と同じ大学だったら少しは守れるけど、みのりの高校時代の学力だったら私が通う大学よりも上を目指せる。
みのりは私と同じ19歳なのに将来の夢を昔から持っており実現させた。
私は夢もなく、やりたいこともなくずっとフラフラしている。今の大学に入ったのもとりあえずだし、在学する4年間の間で夢ややりたいことがみつかったらなって。
どうやったらみのりに追いつけるのかな…きっと、夢を見つけない限り私は変われないのかもしれない。
みのり以外の夢。みのりからの自立をしたらいつか対等の位置に並べるかな。
森川愛.side
家のソファーの上で次の作品のドラマの台本をパラパラと捲る。次の作品は恋愛もので私は主人公を演じる。
また恋愛の話かと思う時があるけど、オーファーがあることはありがたいこと。
それに、事務所の先輩から仕事をガムシャラにやった方がいいと言われた。どんな仕事でも自分の身になるし経験を積めると。
だから、仕事を頑張ってきたけど恋愛系が多いから違う役もやりたい。
そっか。だから、こんなにも久保田凛の役が楽しいのか。恋愛とは程遠い位置にいるキャラでみんなをかき回す役どころ。
台本を置き、ダラけた姿で携帯を触る。一人暮らしだと、誰にも見られないから気を抜きすぎるけどこの時間も大事だ。
森川愛が等身大の自分で入れる時間。
SNSで暇つぶしにみのりことを調べる。みのりと出会う前はこんなこと一度もしたことがなかった。みのりは本当に面白い子で私を悪い子にさせる唯一の子だ。
みのりの学生時代の写真が流出してる…
高校生のみのりはすでに可愛く、他の子達の顔が隠されているから分からないけどきっとクラスで一番可愛いだろう。それほど、すでに出来上がっている顔をしている。
みのりの学校の偏差値、、高っ!有名な進学校だから偏差値が高いとは知っていたけど、数字で見るとみのりの頭の良さが分かる。
運動神経も良いし、顔も良くて頭も良いなんてパーフェクトな女の子すぎる。
やっぱり、みのりは面白い。芸能界でもこんな面白い子はなかなかいない。
顔が良い、演技が上手い子は沢山いる。でも、頭も良くて運動神経も良い子はほぼいない。そこまで求められることがないからだ。
でも、松本梨乃ちゃんみたいな子も珍しい。演技が上手いのに演技の仕事が好きじゃないみたいだし、見た目は大人しめなのにダンスが上手かったりする。
2人はギャップの塊だ。
高橋君とみのりの恋愛映画は松本梨乃ちゃんをどう思っているのかな?もし、私が梨乃ちゃんだったら拗ねそうだ。
私は昔から定番の主人公とヒロインが結ばれる恋愛の話が好きじゃなかった。
だって、終わりが簡単に分かるし盛り上がりがない。ラストがいつも同じだ。
だったらサスペンスの方が楽しい。ラストが分からないし、犯人が最後まで分からないからワクワクする。
結果が分かっている物語なんて馬鹿みたいな話だ。沢山、そんな話を演じてきたからこそつまらないし飽きている。
私は…リアルで非日常を見たいんだ。
傍観者として、視聴者として。
王道、定番なんてなくなればいいのに。何で、一度振られた人のことを追いかけるの?何で、ずっと自分のことを好きでいてくれた優しい人を振るの?
何で俺様が人気なの?ただの暴君じゃん。
マイナスからのラブストーリーなんて、バカみたい。私からしたらあり得ないし。
あっ、、そろそろ仕事に行く準備をしなきゃ。顔を洗って、服を着替えて、化粧して、髪を整え、私は女優 森川愛になる。
私の縛られた芸能生活はいつも鬱々としたものが溜まっている。今の地位と仕事を得たことで私は黒くなっていく。
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