第62話/私の可愛いG.F
夢は残る夢とすぐに消える夢がある。今回の夢はすぐに消えない夢で…
夢から覚めた私の心は暗く澱んでいた。でも、美沙が私の心を浄化してくれる。
美沙に出会えたから私の心は保てた。美沙はアイドルになる夢を一番応援してくれた人であり、私のボディーガード。
美沙が私にずっと引っ付くから、他の子は私に引っ付けず守られていた。
ベッドの上で横になったまま、互いに向き合い美沙と会話をする。嫌な夢は見たけど美沙のお陰で体の疲れが取れ、体力ゲージが満タンになった。
「美沙、外に出なくて良いの?」
「別に家でいいよ」
「でも、暇でしょ」
「うーん。じゃ、甘い物食べたい」
「じゃ、高校の時によく行っていた焼き芋のお店に行こうよ。久しぶりに食べたいし」
「行きたい!うわぁ、久しぶりだね」
私達はやっとベッドから抜け出し、私はクローゼットから大きめのアウターを取り出し着る。軽く髪を整え、キャップを被り、履き慣れたスニーカーを履いた。
美沙と電車に乗り、私は美沙とこれから行く店について話す。高校を卒業してから一度も行っておらず楽しみにしていた。
私達はいつも通りで、何も変わったことをしていない。でも、周りから視線を感じ…
「2人とも可愛いよね」
「付き合っているのかな?」
電車が動く音で聞き取りづらいけど、近くにいる女の子達の話し声が聞こえてきた。
最初は誰のことを言っているのだろうと思っていた。でも、何度も視線が合い…私と美沙のことを言っていることに気づく。
「お揃いのネックレス付けてるね」
「ねぇ!絶対、付き合ってるよ」
「可愛いカップルでいいな〜」
「お似合いだよね」
「それに…首元」
「ふふ」
またかと思った。私と美沙は仲が良すぎて、クラスメイトから何度も「付き合っているの?」と聞かれたことがある。
私も美沙も彼氏がいたの知ってくるせに。
でも、同性の友達と仲が良いだけで、色恋に繋げたがるのはアイドルのファンも一緒だ。
傍観者として楽しみ、真実なんてどうでもいいのだ。自分さえ楽しめれば。
谷口美沙.side
みのりと話していると近くにいる女の子達から話し声が聞こえてきた。
みのりも女の子達に気づいているみたいで、眉間に皺を寄せている。みのりはこの手の話が苦手な傾向がある。
別に偏見などを持っているとかではなく、他人の噂話の対照になるのが嫌なのだ。
でも、私とみのりの距離は誰が見ても近く、恋人同士みたいな関係に見えるはずだ。
矛盾してるよね。みのりの方が元々人との距離が近い。どれだけ私が引っ付いても平気な顔をしているのはみのりなのだ。
それなのに、話のネタにされるのは嫌がる。
きっと、みのりが意図してやっていないからだろう。だから、不快になる。
私は別に嫌な気持ちにはならない。分かっているし、みのりの服装も悪いから。
みのりは特に冬は寒がりのせいで、ボーイッシュな格好をする事が多い。それに寝癖が隠せるからと帽子が好きだし。
女の子達から「お似合いだよね」って聞こえてきて密かに微笑む。
大好きなみのりとお似合いだと言われることは何よりも嬉しい。だから、私はみのりの隣にいれるように身なりに気を使っている。
《みのりは私の可愛いガールフレンド》
みのりはクラスの中でいつも、憧れの対象でいつもみのり周りには人がいた。
でも、私が常に一番で、みのりは必ず私を一番にしてくれる。私の最高の優越感だ。
みのりは今まで出会った人の中で、一番変わっている女の子で、私のことを全て受け入れ、私の普通でさえも変えてしまった。
みのりの普通は私の普通。みのりが何も意識しないなら私もしない。
だって、これが普通だから意識しても意味がない。どれだけ顔が近くても、体が引っ付いていてもみのりが何も思わなければ進展しないのと一緒だ。だから、綾香の恋は敗れた。
私はこのネックレスという鎖さえあれば幸せだ。みのりとずっと一緒にいれる証で、みのりは私の物だという証だから。
みのりを独占できないなら鎖で私達を繋ぐ。私から離れて行かないように。
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