第45話/キケンナアソビ
応援してくれる人と今年最後のライブ。私達もファンもいつもより盛り上がり最高のライブをすることが出来た。
まだまだ新規のファンはすぐに出来ないけど、きっとメジャーデビューしたら増えるはず。
いつも来てくれるファンに手を振り、この後の物販とチェキ会に備えて一度裏へはける。
汗を拭き、飲み物を飲んでいるとよっちゃんが梨乃に何かを話している。
何だろうと思ったけど、ライブ後の休憩は時間がなくすぐに行かないといけない。
飲み物を机の上に置き、最後に梨乃の方へ視線を向けると梨乃が嫌そうな顔をしているのが目に映った。
よっちゃんは梨乃に向かって「頑張ろう」と苦笑いしながら言っている。
梨乃はよっちゃんに何か言われたのだろうか?携帯に何かを打ち込み、ため息を吐きながら携帯を机の上に置いた。
個人の仕事でも入ったのかと思ったけど、CLOVERにまだ個人仕事などはあり得ない。
梨乃と視線が合う。梨乃は私と視線が合うと、私に駆け寄り笑顔で私の名前を呼ぶ。
さっき、よっちゃんに向けた仏頂面とは反対で余程嫌なことを言われたのかもしれない。
「よっちゃんに何か言われたの?」
「あー、、振り付け間違えちゃって」
「そうなの?でも、よっちゃんが振り付け間違えただけで叱るなんて珍しいね」
梨乃が何かを誤魔化すように「ほら、行こうよ」と話を変える。私の腕を引きながら歩く梨乃に私は疑問を抱きながら歩いた。
「みのりちゃーん!今日のライブも最高だったよー!来年もずっと応援するからね!」
私の列に一番乗りで並び、私に嬉しい言葉を言ってくれる田中さん。今日は今年で最後だからと沢山チェキを撮ってくれた。
「あっ、今日は梨乃ちゃんの列にも並んでいいかな…?梨乃ちゃんにも今年最後の応援の言葉を言いたくて。あのね!浮気じゃないからね!みのりのが大好きなの!」
「田中さんを信じてるから大丈夫だよ」
「ありがとうー!私はずっとみのりちゃん推しだから。みのりちゃん、大好き!」
手を振りながら田中さんを見送る。私は自分のファンが私以外の人の列に並んでも、ダメだよとか酷い!とかは言わない。
確かに自分のファンが他のメンバーの列に並ぶのは嫌だけど重い女が性に合わない。
それに推しに「ダメだよー」とか言われたいファンは私にとっては面倒くさい。
私としては僕だけを、私だけを見てほしいと言うファンの方が有難い。ずっと追いかけてくれるし、お金を使ってくれる。
暫くして、梨乃と田中さんが一緒にチェキを撮っている。2人の会話が聞こえてきて、私は顔の表情は変えず心の中で苦笑いする。
田中さんのみのりの愛が強く、梨乃にみのりのについて熱く語っている。
藍田みのり×松本梨乃(みのりの)
芸能界では同性同士のカップリングが好きなファンが多い。自分は異性が好きなのに、なぜ同性カップルを求めるのだろう?
もしかしたら人は背徳感を求めているのかもしれない。禁断の恋の映画が多いのは禁断の恋に背徳感があり、妄想を掻き立てる。
現実世界の自分では作れない・味わえないストーリーを求め、同性同士という背徳感に興奮し外から眺める。
どの恋愛にもストーリーはあるのに異性との恋は凡庸性でありきたりと思っている。
それか、単純に好きな芸能人と異性とのカップリングはリアルすぎるから嫌だという思いからかもしれない。
前者はファンが喜ぶストーリーを作り出すのは大変だ。元々無いストーリーを作り出さないといけないし演じないといけない。
◆女の子×女の子
◆男の子×男の子
きっと、アイドルにこの組み合わせを求める人が多いのは推しを誰かに取られるぐらいなら同性の仲の良いメンバーがいいと思う感情で、ある意味素直でアイドルを窮屈にさせる感情でファンの自己満足である。
だけど、アイドルとファンをwin-winな関係にさせるのは同グループのカップリングで、需要と供給が成り立っている。
アイドルは夢を見させる職業で、ファンは夢を見る人間で、これも需要と供給だ。
それに、アイドルはリアルを見せてはいけない。だけど、光り輝く裏には必ず反対のドス黒い闇(リアル)は存在する。
私と梨乃に求められているストーリーはきっと純愛で…純愛をしたことのない私には一番似合わない言葉である。
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